技術立国ニッポン的美しさが凝縮されたペン「溜息3秒」


「溜息3秒」。箱も記念品仕様

 技術力で世界に知られている日本らしい素敵な文具が、航空機部品メーカー「ゼロ精工」による「溜息3秒」なるペン立て+ボールペンのセットだ。筆者はデザイン音痴で外国ブランドのデザインの良さがイマイチ理解できないのだが、この類の技術的アプローチで迫る製品は大好きで、かなりグッときてしまった。日本のモノ作り職人が、技術を駆使して作り上げた航空機品質の製品だけに、値段はそれなりで悩んだものの、モノ作りの現場で働く人への敬意も込めて購入してみた。文具ではあるが、記念品であるため、ペンスタンドに名入れが可能だ。

 で、この製品。なぜに「溜息3秒」なのかというと、ペンをペン立てに挿し込むと、収まるまで3秒かかり、その「すぅーーーっ」とペンが沈んでいく様子が溜息が出るほど滑らかなため、こういうネーミングになったということだ。カラクリは何もなく、ボールペンとスタンドのシリンダー(穴)の間には20ミクロンの微小な隙間が確保されており、この隙間から空気を逃すことで、重力と空気抵抗だけで「すぅーーーっ」っと滑らかに落ちていく様を実現している。この説明だけで、この製品にほれぼれしないだろうか。

 溜息3秒は、実際は約4秒かけて「すぅーーーっ」と沈むのだが、この沈む様子がすごい。ペンを入れると中からシリンダーが飛び出し、ペンが沈み、そしてシリンダーもまたうっとりするほど滑らかに本体内部に沈んでいくのだ。

 最近は来日する中国人観光客が増えており、主に電気製品や化粧品が人気のようだ。日本といえば、まずはそれらの製品というイメージが強いわけだ。しかし、中国在住の筆者としては、日本のお土産をあげるような状況になったならば、この溜息3秒で違った日本のイメージを持ってもらいたいと思っている。

 もっとも、中国のモノ作りの現場に伝われば、「もどき製品」が出るのでは?という懸念があるかもしれない。しかしゼロ精工のWebサイトでは、コピー製品が存在したものの精度が足りず、「とても溜息がつけるシロモノではありませんでした。ミクロン単位の業がものをいう仕事なのです」と紹介されており、まだしばらくは心配しなくてよさそうだ。

 ちなみにこの製品は中国ではなく、ヨーロッパ、特にドイツの高級自動車の販促グッズとして人気なのだとか。ドイツ人もまた技術美に魅せられているようである。

ペン立てとボールペンペンは一般的なボールペンより短い

 

製品名製造元購入価格
溜息3秒 ZE205ゼロ精工7980円

 

(山谷 剛史)

2010/3/31 06:00