スタパ齋藤のコレに凝りました「コレ凝り!」
マジで怖いぞ山岳遭難!
遭難本を読み漁ってゾッとしつつ学ぶ
2016年7月6日 06:00
北アルプスに行きたいな……まずは遭難本!?
20代の頃に、北アルプスへ登山に行きました。素晴らしい自然と絶景、降るような星空、美味過ぎる湧水など、感動が多かったんですが、思い返してみたら「いろいろと危険」でした。
4人パーティーで行きましたが、若気の至り的な無謀な山行で、山なんかほぼ初めてのワタクシなどは運動靴&荷物重すぎな状態で山登り。そういうテキトーな装備で雪渓を歩いたり、岩場で転びそうになったり、補給不足で軽いハンガーノックになったり。今考えると「よくもまあ、あんなので行ったなあ……無事下山できてラッキーだった」と反省しきりです。
よく覚えている危険は、横尾キャンプ場から涸沢ヒュッテへの登山道の途中にあった岩場。上りで、左側に岩石だらけの見上げるような斜面、右は落ちたら怪我必至で場合によっては死ぬかも~的な岩石だらけの崖、という場所(斜面と崖は逆だったかも!?)。「落石注意」みたいな看板があったと思うんですが、「うわ~ココを通るのぉ~?」とかビビっていたらホントに岩が転がり落ちてきました。
メンバーは一瞬で緊張マキシマム。これはもう最大限の注意を払って、なるべく急いで通過するしかナイ! と。通過中に落石に当たったりしたら、そういう運命だったのだと思うしか、的な蛮勇混じりの割り切りで先に進みました。
結局、無事に通過できたんですけどネ。また、記憶の中のことなので「初心者登山者が岩場急斜面で小さな岩が転がり落ちたのを見た」→「山岳岩場の大きな恐怖体験」と脳内で書き換わっちゃっただけ、かもしれません。
ともあれ、そういう体験を思い出しました。同時に「また北アルプス行きたいなあ」とか思いつつ、「いやでも北アルプスってけっこー危険なんだろうなあ」とオトナ的思考が働いたりも。結果、「そもそも遭難ってどんなことなんだろう?」と思って手に取ったのが、山岳遭難のドキュメント書籍です。
東京の奥多摩で遭難
遭難本、Amazonにて「遭難」をキーワードに検索すると多数見つかると思いますが、ワタクシが最初に買ったのが「すぐそこにある遭難事故 奥多摩山岳救助隊員からの警鐘」(金邦夫著/東京新聞出版局刊)です。筆者は、長年にわたり警視庁青梅警察署山岳救助隊副隊長として従事した方。この本には「救助隊から見た遭難者のリアルな姿」が描かれて……というより「克明に報告」されているというイメージです。
印象としては、かなり、かな~り、衝撃的でした。怖い夢を見ちゃうレベル。
奥多摩は、ウチからクルマで1時間程度なので、けっこーよく行くエリアです。脇道に入るとすぐに林道になり急坂を上がって行けたりしつつ、登山道入口などを示す看板があったりします。そんなのを見ると「あ~ココからあの山に登れるのか~」と思いつつ、「しかしまあ都内なのにフツーに山岳地帯ですな」とも思います。
でもまあ、たとえば奥多摩駅周辺にはバス乗り場に並ぶ登山者がいたり、最近では山ガールな人もフツーに多かったりで、「奥多摩登山」ってなんとなく楽しげ。「そのうち奥多摩の山に登ってみようかな?」とか思っていました。
しかしこの本を読んで、「ええっ奥多摩でもそんなふうに遭難するの!?」「死んじゃってる人も多い!!」と、ショックを受けました。まあそういう話をまとめた本なので、当然ではありますが、著者が元奥多摩山岳救助隊員という点に凄みがあります。
奥多摩山岳救助隊員なので、救助要請が出るなどしてから、遭難者が発見されたり、あるいは行方不明になるまでを知っているわけです。その視点で書かれています。幸いにも救助された遭難者から事の顛末が判明したり、発見された遺体や遺留品から遭難の過程を推測したり、救助活動をするも遭難者発見の手掛かりが得られないままだったり、いろいろな現実が書かれています。「あ~。助かってよかったねえ」という話もありますが、痛々しかったり悔やまれたりする話のほうが強く印象に残っています。
また、救助隊から見た遭難者のリアルな姿が「克明に報告されている」とは書きましたが、それに加えて「山とはこういうもの」だと教えてくれてもいます。山へ行く人への警鐘としてのメッセージが少なくないんですが、「まったくそうだ」と気が引き締まります。
他の遭難本もそうですが、この本はとくに「ならば、こうすれば遭難の危険を減らせる」という気づかせてくれる情報が豊富だと思います。ワタクシの場合、「登山って命がけの行動なのかも……」と改めて気づいた気がします。
ヤマケイの遭難本も
さらに山と渓谷社の遭難本も読みました。文庫本と電子書籍を合わせて6冊ほど。どれもこの分野では有名な羽根田治氏の著書(一部共著)で、「ドキュメント 滑落遭難」「ドキュメント 気象遭難」「ドキュメント 単独行遭難」「ドキュメント 生還 山岳遭難からの救出」「ドキュメント 道迷い遭難」「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」(飯田肇, 金田正樹, 山本正嘉らとの共著)です。どの本も非常に興味深く読めました。
この6冊と前の1冊の遭難本からは、共通する「警告」が読み取れます。というか共通してハッキリと書かれています。すなわち「山で道に迷って沢に降りたら死ぬ可能性が高い」ということです。
山岳遭難で最も多いパターンが「道迷い遭難」だそうです。登山道から外れたまま先に進み、元の登山道に戻れなくなり、不安や思い込みから強引に下山しようとし、低いほうへと進んで谷に入り込み、崖や滝に阻まれて進めなくなり、上り返す力も残っておらず、遭難となるようです。崖や滝を下ろうとして滑落したり、疲労から転滑落したりすることも少なくないようです。
逆に「道が違うかも?」と思ったら地図などで確認し、登山道など正しいルートでない場合は、来た道を即座に引き返すべきだとか、高い方へ向かって尾根などを目指すべきと書いてあります。確かに、そうした方が遭難のリスクがずいぶん少ないと思います。
しかし、遭難して救助されたり死んでしまったりした登山者は、なぜか決まって下って行ってしまいます。7冊の遭難本で多数の遭難事例を読みましたが、「こ……この人も、下って行ってしまうのか……」と、半ば愕然とするほど、誰もが道に迷った状態で下ろうとします。まあ、遭難事例を集めた本なので「道迷い」→「下ろうとして遭難」というパターンが多いのは当然なんでしょうし、「そういう状況だと下りたくなるかも」と遭難者の気持ちもわからないではないんですが、一種衝撃的な事実だと思いました。
ちなみに、ヤマケイの遭難本6冊のうち、わりと救われた気分になれるのが「ドキュメント 生還 山岳遭難からの救出」でしょうか。九死に一生を得た遭難者が自らの遭難体験を語り、それを元にして書かれています。「いろいろあったけれど助かった」という話なので、わりと「ホッ」とする読了感です。
ただ、この一冊、他の遭難本のように「遭難者は○○○を○○したため滑落したのだろうか?」のような推測部分が少なく、遭難者が体験したことを明かしていますので、恐怖体験としてのインパクトも強いです。幻覚や幻聴、遭難中に日に日に悪化する体調、悲壮で残酷な現状等々が、淡々とですが生々しく書かれていたりします。
ネットで遭難体験談
ネットにも多数の遭難事例が報告されています。「遭難」をキーワードに検索すればすぐ見つかりますが、遭難しそうになった話から、遭難して救助されて生還した話など、多数あります。後学のためにイロイロと読みましたが、山の危険さ厳しさがよくわかる事例が多く、考えさせられるところが多々あります。
ただ、連続して遭難事例ばかり読んでいると、やはり気分がネガティブになりがちです。気を付けよう、用心しよう、準備はしっかり、という前向きな姿勢にはなるんですが、「山は危ないし死ぬかもだし、ほかの事しようかな」みたいにプレッシャーを感じたりするわけですな。
そこで今度は、山岳での安全や救助について調べ始めて、すぐに見つけたのがマンガの「岳」(石塚真一著)。本格的っぽくて胸アツな山岳救助マンガです。Kindle版があったので読んでみたらオモシロかったので、次の巻、次の巻と読みまくりです。ですが、最終巻近くでは……なんか、こー、出版社の都合がナニカが絡んだんでしょうか? 個人的には未消化感が残ってしまいました。
じゃあ久しぶりにアレだ「ヤマノススメ」(しろ著)だ! ということで本格的山ガールマンガ(!?)を読んだりしました。死を感じさせない愉快なマンガですな~♪
……あ。そう言えば「ヤマノススメ」の登場人物、スマートフォンを使っていたと思いますが、登山中にスマートフォンのGPSでマップを使っているシーンってありましたっけ? 彼女たち世代なら使っていそうな気がします。
話が戻っちゃうんですが……前述の遭難本にある遭難事例の原因の多くは道迷いなんですが、GPSマップを使えばそうそう道迷いを起こさないような気がします。GPSマップを使っても、読図ができない(地形図を読めない)と迷っちゃうとは思いますが、紙地図とコンパスを使うよりもGPSマップを使った方が「明らかにラク」なので「後回しにせずこまめに現在位置やルートを確認するようになる」と思います。
登山でスマートフォンとGPSマップ……的な話をすると猛反対する方がいたりしますが、紙地図とコンパスとスマートフォン(オフラインで地図を使えるGPSマップアプリ)を全部持参するのが良いと思います。山岳ではスマートフォンを機内モードなどにしておけば電池も長持ちしますし。気温がマイナス域とかでなければ、スマートフォンのGPSマップは「山での道迷いのリスク」をけっこー大幅に低減させてくれるアイテムだと思います。