ケータイ用語の基礎知識
第660回:iBeaconとは
(2014/5/13 12:34)
iBeaconとは、「ビーコン」と呼ばれるデバイスに近づいたり離れたりすると、その様子をスマートフォンが確認して位置を確認したり、店舗のクーポンを受信したりできる、という機能です。
iPhoneやiPadに搭載されるOSの最新版、「iOS 7」から利用可能になったもので、アップルのiPhone 4s/5/5s/5c、iPad(第3世代以降)、iPad mini、iPod touch(第5世代以降)でサポートされています。
ビーコン(Beacon)とは、低消費電力の近距離無線技術「Bluetooth Low Energy」(BLE)を利用した新しい位置特定技術、また、その技術を利用したデバイスのことです。その名の通り、定期的に電波を発信するデバイスです。iBeaconは、仕組みとしてBLEを使っていることから、アプリケーションやサービスの作り込みによっては、Androidでも利用できる、とされています。
iOS 7.1以降では、アプリ側でiBeaconの信号を検知する機能をONにしておくと、バックグラウンドで起動していないなど、アプリを終了していても、iBeaconからの信号を受信できるようになりました。ユーザーは、ビーコンの近くを通りすぎるだけで、iPhoneやiPadでアプリが自動的に起動し、クーポンを受け取ったり、現在位置を確認したりできる、といった使い方を実現できるということになります。
iBeaconを使うiPhone用アプリは、すでにいくつかリリースされています。たとえば「Apple Store」アプリをiPhoneやiPadにインストールしておくと、米国内のApple Store店内でのiBeaconによる情報提供サービスを利用できます。
Bluetooth、位置情報サービスともにONにしておくと、Apple Store内のiPhone展示場所に近づくだけで、手元のデバイスにiPhoneの最新情報などがプッシュ配信されて自動表示されます。また、iPhoneやiPadから、ディスプレイやレジカウンターまで距離はどれだけあるか、というような情報をわかるようになっています。
BLEを使った位置測定
iBeaconは、これまでの位置検出技術と比べて、精度に違いがあります。iBeaconであれば、数cm~数m程度までの距離を正確に把握できるのです。
一般的に現在地を確認するための技術として、「GPS」が知られています。GPSは、人工衛星でユーザーの現在地を割り出す技術で、携帯電話では基地局の位置情報も活用されています。一方、iBeacon では、位置情報を特定するために衛星からの電波ではなく、Bluetoothの電波を使っています。ビーコンが設置されていれば、商業施設など衛星からの電波が届かない屋内でも、ユーザーの持つ携帯電話の位置を測定することが可能です。
Bluetooth Low Energyとは、本連載の「第511回:Bluetooth Low Energy とは」で解説しているように「低消費電力版Bluetooth」のことです。一般的なBluetoothと同じく、2.4GHz帯で免許不要の小電力な電波を使った無線通信ですが、非常に少ない電力で駆動することが特徴です。たとえばコイン電池やボタン電池で1年~数年利用したり、エナジーハーベスト(環境発電)で利用したりできます。
ビーコンを数mおきに設置し、電波を発信しておくと、スマートフォンでは現在地がわかります。ビーコンは、米国のスタートアップ企業であるEstimoteをはじめ、いくつかのメーカーが製造・販売しています。日本国内では、アプリックスなどが、iBeaconに対応したビーコンを販売しています。
国内のスマートフォンにはNFCという近距離無線技術のチップが搭載されるものが増えてきています。アップルでは、ユーザーにとってはNFCよりiBeaconのほうが便利だと主張しています。たとえばNFCはデータをやり取りする際に、スマートフォンとリーダーライターの距離が数cmにならなければ通信できませんので、利用時には、かざして近づけることが必要です。
一方、iBeaconでは、数十cm~数mの範囲で通信できるため、ユーザーはその場所を訪れるだけで情報を得られます。またiBeaconでは決済も可能です。ただ、支払いの際にはNFCやおサイフケータイ(FeliCa)のように、かざすという行為のほうがわかりやすい、と指摘する声もあります。