ケータイ用語の基礎知識

第616回:DRM とは

 「DRM」とは、音楽や静止画、動画といったデジタルデータとして表現されるコンテンツの著作権を保護し、利用に制限をかける技術のことです。英語で、“デジタルの著作権管理”を意味する「Digital Rights Management」の頭文字から来ています。

 たとえば、コンテンツのコピーを防止するコピープロテクト、コピーガードなどがその代表といえるでしょう。

 アナログのデータがコピーするたびに劣化していくのと異なり、デジタルデータは、何度コピーしても品質が変わることはありません。またコピーにかかる費用もたいていは非常に安価です。そのため、管理をしなければ、コンテンツを制作・提供した側にとって、意図していないコピーが大量に出回るような事態になることも危惧されます。そこでコンテンツを管理するのが、このDRMというわけです。

 身の回りにあるDRM付きのコンテンツとしては、たとえば、地上デジタルのテレビ放送番組が挙げられます。地上デジタル放送では、規格上、無制限にコピーが可能なコピーフリー、コピーが1回だけ可能なコピーワンス、10回まで可能なダビング10、コピーを許さないコピーネバーを設定できますが、多くのデジタル放送では10回まで可能なダビング10が設定されています。

 逆にDRMがかけられていない状態で売られているデジタルコンテンツとしては、iTunes Storeやmoraなど最近の音楽配信サービスの多くで提供されている楽曲が挙げられます。最近では、音楽コンテンツは、私的利用の利便性を高めるため、DRMフリー、あるいはノンDRMなどと呼ばれる、DRM技術をかけないコンテンツ配信が中心となっています。

著作者がコピーや視聴をコントロール

 デジタルコンテンツの保護にはさまざまな手法がありますが、最も基本となるのが、オリジナルのデータを秘密の鍵を使って暗号化などをして記録するという技術です。これによって、コピーはできても、秘密の鍵をもったハードウェアがなければ再生できない、ということになります。また、秘密の鍵を期間によって変えたりすることで、一定期間しか再生できないようにするというようなことも可能です。

 他にも、秘密の鍵をある回数以上コピーしたら使えなくすることで、コピーの世代回数管理なども可能です。つまりコンテンツの提供者が意図したようにコンテンツの利用に制限をかけることが可能になるわけです。

 ただ、DRM技術が、コンテンツ提供者側の都合で使われてしまい、消費者が不便さを感じることもあります。たとえばフィーチャーフォンでの「着うたフル」は、機種変更しても聴ける形でしたが、それは楽曲を購入した端末と、機種変更後の端末が同じ電話番号でなければなりませんでした。

 楽曲関連ではDRMフリーのコンテンツが一般的になってきていますが、テレビ番組などの映像コンテンツはDRMで管理されているケースが少なくありません。こうした映像コンテンツも、AV機器と連携するアプリをスマートフォンへインストールすることで、DRMに対応することもあります。たとえばパケットビデオの「Twonky Beam」はそうしたアプリの1つです。DTCP-IPで保護された映像コンテンツに対応しており、「Twonky Beam」をインストールしたAndroidスマートフォン/タブレットでは、レコーダーに録画したコンテンツを家庭内で視聴したり、レコーダーから転送(ムーブ)して外出先で楽しんだりできるのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)