ケータイ用語の基礎知識
第617回:IEEE802.11n とは
(2013/6/11 11:54)
今回紹介する「IEEE802.11n」は、IEEE802.11b/g/aに続く、4世代目のWi-Fi(無線LAN)規格です。2009年9月にIEEEによって正式に規格として標準化されました。最大の特徴は、規格上、最大600Mbpsの高速データ伝送が可能なことです。
宅内など据置型の多くの無線LANルーターでは一般的な仕様になってきていますが、公衆無線LANサービスでも利用できる場合があります。
たとえば、NTTドコモでは、公衆無線LANサービス「docomo Wi-Fi」の一部のアクセスポイントで5月13日より導入し、順次拡大していく予定です。これまで「docomo Wi-Fi」はIEEE802.11a/b/gと呼ばれる方式に対応し、下り最大54Mbpsで通信できるようになっていましたが、今回の取り組みではIEEE802.11n(2.4GHz帯と5GHz帯)に対応し、下り最大72.2Mbpsで通信できるようになります。
高速化のカギは「MIMO」と「チャネルボンディング」
IEEE802.11nが、a/b/gと比較して高速なのは、大きく2つの技術が貢献しています。ひとつが「チャネルボンディング」、もうひとつが「MIMO」です。
「チャネルボンディング」とは、複数のチャンネルを結合することで、通信速度を高める技術のことです。従来のWi-Fiではひとつのチャネルに20MHzという帯域幅を使っていました。20MHz幅×2を一度に使い、チャネル帯域幅を2倍にすることで、1回のデータ送受信で同じ時間内に2倍の量のデータを送受信することができるのです。
もうひとつの「MIMO」は、複数のアンテナを使用してデータを同時伝送することにより無線通信を高速化させる技術です。名前の「MIMO」は、多重入力多重出力を意味する英語「Multiple Input, Multiple Output」から来ています。詳しくは、「第264回:MIMOとは」にあるとおりですが、MIMOとは、技術的にはスマートアンテナ技術のひとつです。送信と受信のどちらも複数のアンテナを用意し、同じタイミング、同じ周波数で一度に送信します。
単純に考えれば、仮に1チャネルで10Mbpsの通信が可能な通信方式があり、MIMOによって3チャネルの同時通信が可能になれば、論理上は30Mbps分の通信ができることになります。この方式は、「空間多重方式」とも呼ばれ、必要な周波数帯域を増やすことなく速度を向上できます。
送信・受信とも2本のアンテナを使う場合は「2×2 MIMO」、3本の場合は「3×3 MIMO」などと表現します。IEEE802.11nは「4×4 MIMO」まで使用できる規格になっています。
製品により最高速度が異なる
なお、IEEE802.11n規格に準じた製品でも、製品によって、チャネルボンディングへの対応・非対応や、MIMOの仕様が異なるため、最大通信速度が異なります。
規格上の最大の通信速度は、MIMOのアンテナの数(ストリーム数)や帯域で以下のようになります。
20MHz帯域使用 | 40MHz帯域使用 | |
---|---|---|
1×1MIMO | 72.2Mbps | 150Mbps |
2×2MIMO | 144.4Mbps | 300Mbps |
3×3MIMO | 216.7Mbps | 450Mbps |
4×4MIMO | 288.9Mbps | 600Mbps |
ちなみに、アクセスポイントと端末でアンテナ数などが異なる場合は、より遅いほうの速度に制限されることになります。つまり、アクセスポイントがアンテナ4本、40MHz幅を使用できる場合でも、端末側がアンテナ1本20MHz幅に対応、という場合は、1×1 MIMO、20MHz幅で通信するため、72.2Mbpsが最高速度になります。
無線LANはまだまだ新たな通信方式の開発が進められています。今回紹介したIEEE802.11nは2009年に策定、普及してきた技術ですが、最近では「IEEE802.11ac」と、さらに発展した技術に対応したスマートフォンも登場してきています。