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ミサワホームとKDDI、家の地震被災度判定計「GAINET」を共同開発

「家のIoT」で災害時も安心して暮らせる家に

 ミサワホーム、ミサワホーム総合研究所、KDDIの3社は、LTEネットワークを利用した戸建住宅用の地震被災度判定計「GAINET」(ガイネット)を共同開発した。4月以降に建築契約を締結したミサワホームの木質系戸建住宅に対して、オプションの1つとして提供する。5年間の通信料とサービス料を含んだ基本価格は、13万3000円(税抜、設置工事費別)。

「GAINET」表示部

 「GAINET」は、住宅に設置する震度表示・被災度判定計。地震を検知した際に、リアルタイムに震度を表示して警報を鳴らす。揺れが収まった後、建物の構造計算データと地震情報をもとに建物と地盤の被災状況をランク形式で表示して、避難の参考情報とすることができる。

「GAINET」計測部

 端末は建物の基礎部分に設置した三軸加速度センサー(計測部)と、室内に設置し震度などを表示するモジュール(表示部)からなる。計測部で計測した情報と、保存されている建物の構造計算データを用いて計算して、表示部で情報を表示する。

 表示部にはKDDIの京セラ製LTE通信モジュールを搭載。地震直後に被災度状況をクラウドサーバーに転送することにより、ミサワホームの側で状況を把握して、建物の被害に応じた適切なオーナーサポートを提供するために役立つとしている。また、端末のソフトウェアや構造計算情報を、LTE回線を通じてアップデートすることができる。

 ミサワホームが機能設計やサービス構築を行い、端末の製造・開発、クラウドサービスのシステム構築および運営はKDDIが担当している。データ通信はKDDIのLTEネットワークを利用し、ミサワホームグループのメディアエムジー社がMVNOとして提供している。

 ミサワホームは、端末の耐用年数は約5年としており、5年間分の通信料とサービス利用料を、本体価格に含んで提供する。5年経過後の通信料、サービス料については検討中としている。

災害時でも安心して暮らせる家を提供する「MISAWA-LCP」

ミサワホーム 商品開発部長 田井宏樹氏

 ミサワホームでは同日、住宅の防災・減災のためのソリューションとして「MISAWA-LCP」(ミサワ・エルシーピー)を策定したことを発表した。これは、地震や津波、台風などの自然災害に直面しても、安心して暮らせる家と目指すための住宅設備群だ。

 東日本大震災の際、広範囲の地域において、多数の住宅、インフラが被害を受けた。ミサワホームの建築した住宅においても例外ではなく、現場の担当者が被害状況を把握するために奔走したという。

 地震の際に各住宅の被害状況をすばやく把握し、適切なサポートを提供したいという現場の声から開発された「GAINET」は、制振装置や食糧・防災用品の備蓄設備などと並んで「MISAWA-LCP」の一つとして提供される。

被災度判定計「GAINET」の仕組み

ミサワホーム 商品開発部長 向山孝美氏

 「GAINET」は計測部を建物に基礎に設置し、家の内部に配置された表示部と有線で接続したシステム。表示部にLTE通信モジュールを備え、クラウドサーバーと情報をやりとりする。

 主な機能は「地震の震度表示・警報」「住宅と地盤の被災度判定」「クラウドサーバーへのデータ送信」の3つ。

 「震度情報の表示・警報」は、精度は気象庁の震度情報と同程度で、その場所での実際の震度が表示されるとしている。地震の初期微動(P波)の感知と震度計算をローカルで行うため、気象庁が配信する緊急地震速報システムでは警告が困難な直下型地震の場合でも、本震が発生する2~3秒前に警報を鳴らすことができるという。

 「被災度判定」では、計測した地震派のデータと、あらかじめ入力された、建物の構造情報データから演算することで、被災度を判定する。建物の被災情報を5段階、基礎の被害状況は3段階のランクで示し、被害度に応じて避難を促すメッセージを表示する。これにより、避難の目安とすることができる。

 感知した地震の情報と被災度情報は、LTEネットワークを通じてKDDIの管理するクラウドサーバーに送信される。送信は地震終了後20~30秒程度で完了し、震災直後にネットワークが輻輳を起こす前に送信が完了するという。ミサワホームでは、送信されたデータをもとに顧客の被災度に応じたサポートを提供する。

「GAINET」におけるKDDIの役割

KDDI ソリューション事業部 モバイルビジネス営業部 高比良忠司部長

 KDDIでは、今後普及していくIoT(Internet of Things)社会を見据えて、日本の通信事業者で唯一組み込み向けのLTE通信モジュールを提供している。今回の「GAINET」では、そのモジュールを採用した端末の製造、ソフトウェアのデザインやクラウドサービスの機能を含めたシステム全般の開発をKDDIの指揮のもと、KDDIのパートナー企業が行っている。

 端末製造においては、KDDIの携帯電話開発のノウハウを活用しているという。計測部にIPX7相当の防水機能をもたせ、センサーを効率よく収納して小さく作られている。表示部では、使いやすく見やすいユーザーインターフェイスの実現のために、携帯電話やモバイルゲームを開発しているパートナー企業のノウハウが生かされているという。

今後のサービス展開

 当面の目標として、気象庁の持つ地震観測計の設置台数約4000台を目指して、導入を提案していくという。発売時はミサワホームが新築する戸建住宅に限定されているが、これはサービスの提供に構造計算データが必要なため。今後は、構造診断を行った既存の住宅や他社の住宅に対しても販売を拡大していく予定だという。

 取集したデータをもとにした、新たなサービスも開発していく。スマートフォン向けに自宅の被災度を表示したり、大地震の際に自動でドアを開くシステムなどの提供を検討しているという。収集したビッグデータを活用したサービスとしては、巨大地震が発生した場合の被害予測情報を提供するサービスを開発中だという。そのほか、LTEの低レイテンシーを生かしたサービスとして、一つの住宅で地震を感知すると、周辺の住宅でも警報を鳴らすネットワーク機能を検討しているという。

石井 徹