ケータイ用語の基礎知識
第593回:バーチャルサラウンド とは
(2012/12/18 12:16)
バーチャルサラウンドは、音声の再生方法に関するオーディオ用語です。仮想的にサラウンドを実現する技術のことを言います。
そもそもサラウンドとは、“包み込む”“囲む”といった意味の英単語「surround」から来ており、ユーザーを包み込むような音響効果を指す言葉として用いられています。単一のスピーカーから音を出すモノラル、2本のスピーカーから音を出すステレオよりも音が出る場所を多くして、ユーザーの四方八方から音が聞こえるようにすることで、より臨場感を重視した音を再生します。
左右のスピーカーを利用する、いわゆるステレオでは、モノラルに比べて左右に音が広がる感じがします。それと同様に、代表的なサラウンド音響である5.1ch(チャンネル)では、スピーカーをユーザーの「前方」「左」「右」「後方の左」「後方の右」に配置し、合計で5ch、それに加えて重低音の効果を受け持つチャンネルを追加することで、前後左右からの音の広がりと重低音の響きを加えます。
基本的に、CDは2ch(ステレオ)での収録ですが、映画などDVDの音声では5.1chで収録されているものが多くあります。また、映画館でも5.1chサラウンドの上映は多く、映画館ならではの独特の臨場感あふれる音響を体感できます。ちなみにBlu-rayでは、DVDに比べてさらに2ch多い、7.1chでの音声記録が可能となっていて、さらに音響に臨場感を持たせることが可能になっています。追加の2chはユーザーの後方2chを受け持っているので、たとえば、飛行機が頭上を飛び去っていくような効果を出すときには、5.1chに比べて音の移動感覚がさらにスムーズに聞こえ、立体感ある再生が可能になります。
5.1chの音響空間を仮想的に再現
サラウンドがどういったものか紹介してきましたが、それでは「バーチャルサラウンド」とは、具体的にどういった形になっているのかと言うと、ステレオ同様、2本のスピーカーのみを使って、仮想的に「多くのスピーカーで再生した時に聞こえるような」立体感のある音響をユーザーの聴覚に感じさせようとする技術です。
先述したように、DVDなど、ソフト側で5.1chの音源を収録しているケースは多いのですが、これを効果的に再生させようとすると、設置する場所のことをよく考えて、多くのスピーカーを設置しなければいけません。
しかし、場所がそのようなことが難しかったり、ヘッドホンのような基本的に2つしかスピーカーがない機器でも、豊かな音響を楽しみたいというニーズに応えるのがバーチャルサラウンドです。人が音を聞くために使う耳は、左右に2つしかないのですから、上手に音響を効果をつければ、スピーカーが2つでもサラウンドにできるはずだ、というのがバーチャルサラウンドの発想です。
その音響効果のつけ方ですが、簡単に言うと、同じ音でも前方から聞こえてくる音、後方から聞こえてくる音では、
- 音の大きさ
- 時間
- 周波数特性
が微妙に異なってきます。人はこれらの違いを聞き分けて、音の方向や距離を判断しているのです。
そこで、ヘッドホンなどのスピーカーから鳴らす音の大きさ、時間、ひずみなどに対して、人工的に違い(差)を加えて、ユーザーに音が聞こえる方向を錯覚させることで、あたかも5.1chで聞いているかのように思わせるのがバーチャル5.1chサラウンドです。スマートフォンでもいくつかこうした技術を搭載しているものがありますし、アプリとしても、たとえば最近ではiPhone用に、バーチャル5.1chサラウンドを実現するアプリの配信が開始されました。
ちなみにスマートフォンなどで再生できる音楽フォーマットとしてはMP3、AAC、HE-AACなどがありますが、基本的にMP3は2chのみ収録可能です。ただし、5.1chを収録しMP3と下方互換性を持つMP3 Surroundという規格も存在します。AAC、HE-AACは、5.1chでの収録が可能です。