ケータイ用語の基礎知識
第817回:Bluetooth Meshネットワーク とは
2017年8月1日 11:55
Bluetooth Mesh(ブルートゥース メッシュ)ネットワークは、「Bluetooth Low Energy(BLE)」を拡張させた新しいBluetoothの機能です。
機器同士が1対1だけではなく、複数同士(多対多)で接続することで、ネットワークを格子状に構築できます。こうした格子の状態はメッシュと呼ばれますが、Bluetooth機器で構成されたメッシュのネットワークで、これまでのBLEよりも遙かに遠い距離までデータを送ったり、ネットワークの利用可能なエリアを広げたりすることが可能になります。
Bluetoothはもともと「無線を使った各種ケーブルの代用」として広められました。たとえば、スマートフォンとヘッドセットを繋ぐケーブルの代わり、あるいはパソコンとキーボードやマウスを繋ぐケーブルの代わりとしてです。
その使われ方が変わってきたのは、BLEを使ったBluetoothビーコンの登場が挙げられます。ビーコンは、さまざまな形で近づいてくる機器にその信号を発射します。ここで1対1から1対多もできるという用途の転換が起きたわけです。
2017年7月13日、Bluetoothの規格を定めるBluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)から、BLEによるメッシュネットワークのためのモデル仕様や、デバイスプロパティ資料、プロファイル仕様が公開されました。Bluetooth Meshネットワークの仕様が公開されたわけです。年内にも対応製品の登場が期待されます。
これまでBluetooth、あるいはBLE機器は数メートル先のデバイスしか送信先を指定してできませんでした。しかし、Bluetooth Meshネットワークの一部となれば、バケツリレー式にデータを中継し、より遠くの機器までデータを送ることができるようになります。あまりに遠くですと、何ホップ、何十ホップという中継点が必要になり、その分、データの遅延は起きますが、これまでになかった広い範囲をカバーできるようになります。
Meshネットワークとは
機械と機械をつなぐネットワークにはいろいろ形態があります。この形態のことを「ネットワークトポロジー」と言います。トポロジーという用語自体は、本来、数学の一分野、位置に関する学問「位相幾何学」のことですが、コンピュータを初めとするITの分野では、「接続形態」という狭い意味で使われるのが一般的です。
ネットワークトポロジーには、中心にハブとなる機器があり放射状に機器に接続される「Star(スター)型」、機器がつながって輪になる「Ring(リング)型」などがあります。そのひとつで、機器が「Mesh(メッシュ)型」です。無線の場合、1つの機器から他の複数機器へ接続するのにそれほどコストがかからないことから比較的よく使われる形態です。
Bluetooth Meshネットワークは、まさにメッシュ型のトポロジーをもつネットワークのことです。LANなどのスター型ネットワークと違って、メッシュ型はハブとなる中央の装置が不要です。その分、管理コストも抑えられることも魅力でしょう。また、Meshネットワークの特徴は、障害耐性が高いことが挙げられます。つまり、途中経路に障害があっても、目的に送信先までデータが届く可能性が高いということです。
特に無線の場合、、新規ルートの生成などネットワークの再構築を行うのが手軽に行えますので、途中の障害を回避して最終的に目的送信先にデータを送ることができるわけです。
BLEでMeshネットワークを構築するメリット
Bluetooth Meshネットワークのメリットは、既に技術として広く知られており普及が期待されること、低電力でシンプルにネットワークを構築できると考えられていることです。
BLEで一度の伝えられるデータは本当に小さいのですが、Meshネットワークの仕様では、その短いデータ内でMesh内を最適経路で伝えたいことが伝わるような工夫がされています。
Bluetooth Meshネットワークでは、たとえば、ビルのオートメーション、センサーネットワークなど、複数のデバイスが他のデバイスと安全に接続できる態勢を整えることが不可欠なソリューションに利用することができます。BLEの「低消費電力」というメリットが変わることはありませんから、これまで通り数年単位で機器が稼働する、といったことも可能になります。スマート照明やホームIoTといった分野では、ZigBeeやZ-Waveといった規格が注目されていますが、Bluetooth Meshネットワークもこれから注目される規格のひとつになることでしょう。