ケータイ用語の基礎知識
第816回:UDCとは
2017年7月25日 11:53
UDCは、端末から基地局へ送るデータを可逆圧縮(圧縮・展開後にデータの内容が損なわれない形で圧縮すること)をすることを意味する言葉です。「上り通信データ圧縮」を意味する“Uplink Data Compression”を略したもので、モバイルネットワークで流れるデータを、本来のデータより減らすことができ、上り回線の通信速度を向上できます。たとえば、本来、1秒間に100個のデータしか送れない回線で150個のデータを送るといったことが可能になります。
規格上は、最大上り最大30Mbpsの端末でも、スピードテストアプリなどでは、規格を上回る数値が表示される、といった現象が起きることがあるのです。
日本国内では、ソフトバンクとauからUDC対応機種が発売されており、対応エリアでは、上り速度を向上できます。
ソフトバンクの場合、「Xperia XZs」「Xperia X Performance」「AQUOS Xx3」「AQUOS Xx3 mini」「STAR WARS mobile」「Xperia XZ」「Pocket WiFi 601HW」「シンプルスマホ3」が、ワイモバイル(Y!mobile)ブランドの「Android One S1」「Android One S2」「507SH」「Pocket Wi-Fi 603HW」が対応しています(6月22日時点)。これらの機種では、SoftBank 4GのエリアでTD-LTEを使った通信で、UDCが利用され、上り通信が高速化します。
auが発売しているWi-Fiルーター「Speed Wi-Fi NEXT W04」は、2017年5月16日のアップデートでUDCに対応しました。東名阪を中心としたUDC対応エリアで、上りの通信速度が体感(見かけ)上、高速化されます。
海外では、2015年から、米クアルコム子会社のクアルコムテクノロジーとファーウェイが、中国チャイナモバイル回線で実証実験、後に商業利用も開始しています。特にファーウェイは3Dビームフォーミングや、256QAM変調、UDCを合わせて「TDD+」という名前を付けて“4.5G世代の高速なTD-LTE”として、世界各国の事業者に対して売り込んでいます。
3GPPで標準化へ
上り通信を圧縮によって高速化しようという動きは3Gのころからあり、規格としても存在していましたが、日本国内では、実際には利用されませんでした。
4GのLTE、4.5GのLTE-Advancedで使われている技術は、3Gのそれとは直接関わりはありません。実際にソフトバンクやチャイナモバイルで使われているのは、クアルコムによる技術です。
その方法を簡単に言うと、スマートフォンでは上りで送信したデータ、そして基地局側では受信したデータをバッファに格納しておきます。その後、送ったデータがバッファにあるデータに似ていれば、「バッファ上のこのデータに似ているよ(あるいは同じだよ)」というようにデータそのものを送らずに、その場所を指す情報を送るようにするのです。
一般的な現在のスマートフォンのネットの利用、たとえば、Webの閲覧や動画の視聴などであれば、上り通信では、たとえば「先頭から1ブロック分読んで」「2ブロックめから1ブロック読んで」と似たような要求をサーバーに対して何度も繰り返しますから、これを単純化するだけでも上り通信速度は、見かけ上、相当高速化されるわけです。
このUDCは、2017年現在TD-LTEでのみ採用されています。
LTEや5Gの標準化団体である3GPPでは、Release15において「検討すべきアイテム」のひとつとしてUDCが議論されています。議論の中では、現在採用されている方式に加え、たとえば符号化によるデータ圧縮(簡単に言うとパソコンでのZIP形式のようにデータの特徴に注目して圧縮をかける)なども検討されており、方式の詳細はこれから決まる予定です。