933SH 村元 正剛編

 ボクが「2009年の個人的ベストワン」を選ぶにあたり迷ったのが、高画素カメラケータイにすべきか? スマートフォンにすべきか? ということだ。

 モバイルカメラの高画素化が進むとともに、シャッタースピードの向上や高感度、コンティニュアスAFなど、機能面での進化も顕著だった今年のケータイ。ボク自身もケータイで写真を撮る機会が増え、以前なら「デジカメを持って行かなきゃ」と思ったイベントや旅行でも、「荷物が増えるのは嫌だし、ケータイで十分かもなぁ~」と思うようになってきた。ブログにアップする写真も、ほとんどはケータイで撮っていたし、ブロガー仲間から「これってケータイで撮ったの? こんなにキレイに撮れるんですか?」と言われることも増えた。

 スマートフォンは、パフォーマンスを大幅に向上させたiPhone 3GSが「Twitter」やゲームを楽しむのに欠かせないツールとなった。「世界カメラ」や「USTREAM」など、新しい体験をさせてくれるアプリにもワクワクさせられっぱなしだった。Android搭載のHT-03AやWindows Mobile搭載のT-01Aもまずまず満足のいく仕様だったし、今年は本当の意味でのスマートフォン元年だったなぁ~という思いもある。

 あれこれ悩んだ末にベストワンに選んだのはソフトバンクの「933SH」。10メガピクセルカメラを搭載したモデルであることは言うまでもないが、画素数の優位性よりも多機能なカメラをタッチ操作で快適に使いこなせることに惹かれた。

 カメラの撮影設定を行う場合、多くの機種ではサブメニューを呼び出して設定する必要がある。思い通りの色調で撮れないなぁ~と感じたとしても、設定を変えるのが手間で、そのままカシャッと撮ってしまうことが多かった。933SHは、カメラを起動してフレーミングをしながら、アイコンをタッチしてさまざまな設定を行える。「シーン設定を変えてみようかな」「ホワイトバランスを変えてみようかな」「連写を使ってみようかな」といった設定変更がすぐに楽しくできるのだ。

 もちろん、これらの設定メニューは従来機にもあったが、使いこなせないままにメニュー階層に埋もれてしまうことが多かったように思う。933SHはフルオートのままでもキレイに撮れるのだが、さらに「少し凝ってみよう」という気分にさせてくれるのだ。カメラ周りのGUI(グラフィック・ユーザーインターフェイス)では群を抜いていたと思う。

 レンズの存在を主張するデザインも気に入った。実際にはレンズの口径は直径5mm程度なのだが、直径約40mmの大きさで、焦点距離やF値も記したデジカメライクなデザインが施されている。好き嫌いはあるかもしれないが、レンズが大きく見えることは、人物撮影をする際にメリットがあるように感じている。例えば、居酒屋やカラオケボックスなどで友人とワイワイ騒いでいるときに933SHのカメラを向けると、すぐにピ~ス!と笑顔を返してくれるのだ。被写体の側にも「撮られる」という意識が芽生えるので、いい表情をしてくれるのだ。これは、auのEXLIMケータイにも同じことが言えるだろう。

 コンパクトデジカメに近い性能を実現した933SHだが、ケータイ本来の機能や使い勝手も充実していたように思う。2軸回転ヒンジなので、普段は一般的な折りたたみ式ケータイとして使え、十字キーとダイヤルキーだけで快適に操作できる。電話をかけたり、メールをしたりする際は、やはりまだ物理キーのほうが操作しやすいと思う。ボクはカメラやワンセグを使うときにだけタッチパネルを使っていたが、タッチ操作に慣れていない人は、すべての操作をキーで行うこともできるし、逆に普段からビューアスタイルにしておき、ほとんどの操作をタッチで行うこともできる。そのフレキシブルさがいい。

 昨年来、タッチパネルを搭載する端末が増えているが、インターフェイスが未完成というか整理されていない端末が多いように感じていた。何でもタッチでできると思いきやそうではなかったり、キー操作とタッチ操作のどっちが便利なのかを迷う場面があったり……という具合だ。933SHはユーザーが迷うことなく、自分が使いやすいと思う操作で使いこなせるようにまとまっていたと思う。

 AQUOS SHOTという名を冠した933SH。今冬12メガピクセルカメラを搭載した最新機種が3キャリアから発売されている。スペック的には933SHよりも新機種にアドバンテージがあるだろうが、ケータイで写真を撮る楽しさを再認識させてくれた端末として、敢えて初号機の933SHを筆頭の1台に推したいと思う。

 


2009/12/25/ 11:54