iPhone駆け込み寺

アップル3月9日発表まとめ、普及価格帯にも「最高峰を解禁」iPhone SEとiPad Airに新モデル登場

ティム・クックCEO

 アップル(Apple)は、日本時間の3月9日午前3時にスペシャルイベントをオンラインで開催し、iPhone/iPad/Macの新製品を発表した。

 事前に公開されていたスペシャルイベントのキャッチコピーは、日本語で「最高峰を解禁。」、英語では「Peak performance」。ハイスペックな製品を想像させるキャッチコピーだが、日本語の方は、「普及価格帯のモデルに最高峰のスペックを解禁」とも読めるもので、その通りに、iPhoneでは普及価格帯のiPhone SEに最新のA15 Bionicチップ、iPadでは中間モデルのiPad Proと同じM1チップを搭載したモデルを発表している。

 Macでは従来の最上位ラインだったMac Proをも上回る性能をながら、より安価でかつコンパクト筐体のMac Studioを発表している。

 Mac StudioとStudio Displayなど、Mac関連の新製品は発表同時に予約が始まっている。そのほかのiPhoneとiPadの新製品は3月11日に予約開始、3月18日に発売となる。

iPhone SEはデザインを引き継ぎつつ最新プロセッサと5Gを搭載

iPhone SE(第3世代)は2020年4月発売のiPhone SE(第2世代)のプロセッサや通信機能を最新世代に更新した新モデル。3月11日の22時より予約注文を開始し、3月18日に発売する。

 ストレージ容量は64/128/256GBの種類で、価格は64GBモデルが5万7800円、128GBモデルが6万3800円、256GBモデルは7万6800円となっている。第2世代初出時の価格に比べると、7000円〜1万円程度、高くなっている、

 アップルではiPhone SE(第3世代)について、最先端の機能とテクノロジーをお手頃価格で実現するモデルとして、既存のユーザーにも、初めてiPhoneを手にするユーザーにも向いているとしている。

外観

 iPhone SE(第3世代)のデザインは第2世代とほぼ同じで、Touch ID内蔵のホームボタンを搭載し、Face IDには対応しない。下部のLightningコネクタ、側面の各種ボタンなどは従来モデルと変わらない。

 カラーバリエーションはミッドナイトとスターライト、(PRODUCT)REDの3色。黒白赤の構成は第2世代と同じだが、色の呼称が変わっているほか、アップル公式Webサイトを見る限り、微妙な色味もそれぞれ異なっている。第2世代同様、いずれのカラーバリエーションでもディスプレイ側(前面)のベゼルは黒くなっている。

大きさ、重さ

 iPhone SE(第3世代)の本体のサイズは138.4×67.3×7.3mmで、第2世代やiPhone 8と全く同等。

 カメラの数やボタン配置も変わっていないので、ケースなどのアクセサリ製品は第2世代やiPhone 8のものの多くが流用できる。全金属筐体だったiPhone 7に比べると0.1〜0.2mmほど大きくなっているが、アップル純正の「iPhone SEシリコーンケース」はiPhone 7からiPhone SE(第3世代)まで対応している。

 その一方でiPhone SE(第3世代)の重量は144gと、第2世代やiPhone 8の148gよりやや軽量化している。また、サイズは同一ながら、公称のバッテリ利用時間については、2割程度長くなっている。

 なお、スペシャルイベントでは「高性能でコンパクトなiPhoneを求めるユーザーに」としているが、重さはiPhone 13 mini(140g)の方が若干軽い。

A15チップ

 プロセッサにはiPhone 13シリーズが採用するのと同じ、A15 Bionicを搭載。iPhone 13 ProモデルはGPUが5コアとされているところがiPhone SE(第3世代)は4コアとなるが、これはiPhone 13/13 miniと同等となる。

カメラ

 カメラはシングル構成で、公表されているハードウェアスペックは12メガピクセルでf/1.8など第2世代と同等。プロセッサが更新されたことで、スマートHDR 4やフォトグラフスタイルといったiPhone 13シリーズで搭載される最新機能がSEでも使えるようになっている。

ディスプレイ

 ディスプレイも公表されているスペックは第2世代と同等で、4.7インチで1334×750ピクセルの液晶。このほか、IP67の防水性能やFeliCa対応のApple Pay、Qi規格の非接触充電(13シリーズと異なりMagSafeには非対応)などに対応している。

通信関連の仕様

 通信関連は最新スペックに更新されていて、新たに5Gに対応する。一方でCDMA EV-DOには対応しなくなった。ちなみに日本国内でCDMA EV-DOはKDDIが「CDMA 1X WIN」として提供しているが、2022年3月末をもって終了する。

 従来同様、国や地域、オペレーターによって販売されるモデルが異なるが、iPhone SE(第3世代)は日本だけの「A2782」というモデルで展開する。対応バンドとしては600MHz帯のバンド71など一部が省略されている。また、iPhone 13シリーズは4x4 MIMOの5G対応だが、iPhone SE(第3世代)は2x2 MIMOの5Gとなる。

 SIMはnano-SIMとeSIMのデュアルSIMに対応。そのほかの通信機能も第2世代を踏襲するが、Wi-Fiは新たにWi-Fi 6に対応する。

iPhone 13/13 Proは新色追加

 すでに販売中のiPhone 13シリーズについては、新色が追加された。こちらも3月11日22時に予約を開始し、3月18日に発売される。

 iPhone 13/13 miniには新色のグリーンが追加される。これは少しくすんだ、オリーブグリーンのような色味。これでカラーバリエーションは全6色となる。

 iPhone 13 Pro/13 Pro Maxには新色のアルパイングリーンが追加される。こちらもオリーブグリーンのような色味となっている。これでカラーバリエーションは全5色となる。

iPad Airも最新プロセッサと5Gを搭載

 iPad Air(第5世代)は2020年10月発売のiPad Air(第4世代)のプロセッサなどを更新したモデル。3月11日22時に予約受付を開始し、3月18日に発売される。

 ストレージは64/256GBの2種類で、価格は64GBのWi-Fiモデルが7万4800円、Wi-Fi+Cellularモデルが9万2800円、256GBのWi-Fiモデルが9万2800円、Wi-Fi+Cellularモデルが11万800円となる。第4世代の初出時の価格に比べると、5000円程度、価格が上がっている。

 モデルの位置付けはiPad Air(第4世代)と同じで、iPad Proに近い性能・デザインを持ちながら、一部の機能が省かれることで、2割以上安価になっている。昨年発売されたiPad ProやMacと同じM1チップを搭載することで、一般的なノートパソコン以上の処理能力を持つ。

 搭載されるM1チップは、昨年のiPad Proと同じ8コアCPU、8コアGPU。ただしシステムメモリ容量としては、iPad Proは1TB以上のストレージモデルでは16GB、512GB以下のストレージモデルでは8GBと、上位では大容量メモリを選択できたが、iPad Air(第5世代)は8GBのみとなる。

 iPad Air(第5世代)外観デザインはiPad Air(第4世代)とほぼ同じで、サイズは247.6×178.5×6.1mm。重さはWi-Fiモデルが461g、Wi-Fi+Cellularモデルが462gで、第4世代よりも2gほど重たくなっている。

 デザインは11インチのiPad Proとカメラ周りが異なるだけでほぼ同じで、第4世代同様、Smart Keyboard FolioやMagic Keyboardは共通のものを利用できる。Apple Pencilも側面に貼り付けるタイプの第2世代に対応する。

 カラーバリエーションはスペースグレイ、スターライト、ピンク、パープル、ブルーの5色。スペースグレイ以外は新色で、第4世代と似た色はあるものの、微妙に色味が異なっている

 Face IDには対応せず、上面(短辺側)のトップボタン(電源キーに相当)にTouch IDセンサーが内蔵されている。外部接続端子はiPad Air(第4世代)やiPad Pro同様にUSB Type-Cだが、同じM1搭載のiPad Proとは異なりThunderboltには対応しない。

 ディスプレイのスペックは第4世代と同等で、やはりiPad Proと異なり可変フレームレートのProMotionには対応しない。ディスプレイサイズは第4世代と同じ10.9インチで、解像度は2360×1640ピクセル。

 背面のメインカメラの性能も第4世代と同じで、こちらもiPad Proのようなデュアルカメラ構成やLiDAR搭載にはなっておらず、差別化要素となっている。一方でインカメラは昨年のiPadシリーズ同様に超広角の12メガピクセルカメラが採用されていて、FaceTimeのビデオ通話時に話者が中央に来るようにリアルタイムでトリミングする「センターフレーム」の機能に対応している。

 第4世代からの進化ポイントとしては、Wi-Fi+Cellularモデルは5G通信にも対応する。5Gの対応バンドはiPhone 13シリーズなどと同等。GSM/EDGEの対応は打ち切られている。nano-SIMとeSIMの両方に対応する。

Macには完全新規ラインのMac Studioが登場

Macの新製品としては、従来のラインナップには存在しない、全く新しい位置付けのMac Studioが発表された。こちらはすでに予約受付を開始していて、3月18日に発売される。価格は24万9800円~。

 Mac Studioはハイエンドワークステーション並みのスペックを持つコンパクトなデスクトップパソコン。「デスクトップ」と言いながら卓上ではなく机の下に置かれがちなタワー型のデスクトップパソコンと異なり、液晶ディスプレイの下など、さまざまな場所におけるコンパクトさとなっている。

 外観としては、Mac miniを縦に2個重ねたような形で、Mac mini同様のアルミニウムを削り出したボディとなっている。サイズは197×197×95mmで、197×197×36mmのMac miniと底面積は同じ。

 Mac Studioの位置付けとしては、職場や自宅などのスタジオ環境で動画編集や音楽編集、プログラミングなどの高負荷な作業をする人に向けたモデルとなる。各ユーザーの用途に応じて複数の大型ディスプレイを接続することを前提としていて、ディスプレイは別になっている。Mac mini(7万9800円~)よりもはるかに高性能ながら、さらに上にはMac Proがある、といった中間的な位置付けとなるが、インテルプロセッサ搭載の現行のMac ProよりもMac Studioは高性能。なお、さらに高性能になると予想されるAppleシリコン搭載のMac Proについては、今回のイベントでは「別の日にしましょう」と後日発表されることが示されている。

 Mac史上最高クラスの処理能力が最大の特徴で、プロセッサとして標準モデルには昨年秋のMacBook Proの上位モデルに搭載されたM1 Max、上位モデルにはそのM1 Maxを2個を「UltraFusion」で接続したM1 Ultraが搭載される。これにより、CPU/GPUのコア数や処理能力が2倍になるだけでなく、最大メモリ容量やメモリ帯域も2倍となっている。16コアCPU搭載のWindowsパソコンに比べ、ピークパフォーマンスが上回るだけでなく、消費電力が半分以下になるという。

 こうしたハイパフォーマンスを支えるために、筐体内部のほとんどが冷却機構と電源回路となっている。冷却ファンは一般的に大きいほど回転数が低く済むため静かで済むが、冷却機構の大型化により、高い負荷をかけても騒音が小さくなっている。

 なお、搭載プロセッサにより重量が異なり、M1 Max搭載モデルは2.7kg、M1 Ultra搭載モデルは3.6kgとなっている。詳細は明らかにされていないが、冷却機構に差があると推測される。Mac miniなどと同様に電源回路内蔵でACアダプタではなくACケーブルを直結する。

 インターフェイス関連の使い勝手も強化されていて、背面に4つのThunderbolt 4があるほか、前面にも2つのUSB Type-CとSDXCカードスロットが搭載される。M1 Ultra搭載モデルは前面もUSBではなくThunderbolt 4ポートになる。1つのHDMIポートを搭載し、4Kディスプレイを接続できるが、Thunderbolt 4ポートには最大4台、最大6Kのディスプレイを接続できる。

 周辺機器としては、27インチディスプレイのStudio Displayも発表された。こちらもすでに予約受付を開始していて、発売は3月18日となっている。

 Studio Displayは5K解像度の27インチディスプレイ。普通のピクセル密度だと27インチは2560×1440ピクセルだが、ちょうどその倍のピクセル密度のRetina仕様となっている。価格は199,800円からで、表面仕上げやスタンド/マウントを選択できる。

 価格は27インチディスプレイとしてはやや高価だが、同じくアップルが販売している32インチ6KのPro Display XDR(582,780円から)に比べると安価な位置付けとなり、性能は劣るものの、12メガピクセルの超広角カメラやアレイマイク、スピーカーなどの機能が追加されている。MacとはThunderbolt 3以降で接続するが、MacBookであればディスプレイ接続と同時にMacBookの充電も可能で、Studio Display側のUSB Type-Cポートも利用できる。

 このほかにもキートップが黒い新デザインのMagic Keyboard、上面が黒い新デザインのMagic MouseとMagic Trackpadも発表された。こちらは即日発売開始している。