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「iPhone×MVNO」はどれだけおトク? 料金を比べてみた
「iPhone×MVNO」はどれだけおトク? 料金を比べてみた
大手キャリアとの違い、端末代+料金でのメリットとは
(2015/10/22 12:00)
最近、「格安スマホ」などと呼ばれるMVNOのサービスに注目が集まっている。MVNOとはNTTドコモやauなどの大手携帯電話事業者(MNO)から回線を借りて提供される、携帯電話サービスだ。料金がシンプルかつ割安なため、最近、急速に伸びつつあり、MVNOでの利用を想定した安価なAndroidスマートフォンも多数登場している。
こうしたMVNOのサービスは、iPhoneでも利用可能だが、日本で人気のiPhoneのほとんどは大手3キャリアが取り扱う。毎月の料金はそれなりの金額になるものの、筆者はこれまで「iPhoneユーザーで手間を掛けてMVNOに乗り換える人はいるのか?」と疑問に思っていた。しかしこの秋、筆者の数少ない友人のうち、iPhoneユーザーの多数がMVNOのサービスに乗り換えている。もちろん筆者が布教したわけではなく、自ら調べ、その割安な料金にたどりついたようだ。
今回は、「iPhoneをMVNOのサービスで利用する」ことに焦点を絞り、料金をはじめとしたメリットと注意するポイントを解説しよう。
MVNOで使えるiPhone
そもそもMVNOのサービスで、iPhoneを使うためには、どこからか、iPhoneを調達することになる。ほとんどのMVNOはiPhoneを販売していないので、アップルストアで取り扱われるSIMフリー版を購入したり、それまで使っていたiPhoneを利用したりすることになるだろう。そしてiPhone 6以前であれば、「(大手携帯会社から購入し)それまで使っていたiPhone」をMVNOで使う場合、NTTドコモ版かau版のiPhoneでなければならない。これは、MVNOが提供するSIMカードが、ドコモ、あるいはauのネットワークを利用するものしか存在しないためだ。
簡単に言えば、au網を使うMVNOサービスではau版のiPhone、それ以外のドコモ網を使うMVNOサービスではドコモ版のiPhoneが使えるというわけ。もちろんSIMフリー版ならばどちらでも利用可能だ。
ただしau版iPhoneをMVNOで使う場合、推奨されない場合がある。iOSでは、「APN設定プロファイル」というファイルで接続先を設定する形になるが、iOS 9の登場にあわせて、その仕組みが変わった。たとえばmineoのauプランの場合、iPhone 5s/5c以前の機種では通信が安定しないため推奨されていない。一方、iPhone 6/6 Plus以降なら大丈夫だ。ただしテザリングはできない。mineoはドコモ網を使うドコモプランとau網を使うauプランの両方でサービスを提供しており、Webサイトでも積極的に情報を開示しており(※関連サイト)、このあたりの情報はいろいろ参考になるだろう。こうした情報提供といった面では、IIJの「てくろぐ」も見逃せない。こうした取り組みもMVNO選びの一助になる。
端末代+料金で比べてみる
一番気になるところである料金面で、MVNOと大手携帯電話事業者(MNO)を比較してみよう。MVNOはさまざまな企業がサービスを提供しており、どれを選べば迷うところだが、同じ容量で比較すると、どのMVNOも値段はあまり変わらない。
今回は、ドコモ網とau網の両方を利用しているmineoを代表例として比較する。mineoは契約後、手数料2000円でドコモプランとauプランを乗り換えたり、ドコモプランとauプランでパケットシェアをしたりできるなど、柔軟な対応ができるのもポイント。たとえばいったんau網を使うプランで契約しつつ、引越や職場の変更など環境の変化があったとしてもドコモ網のプランへ気軽に切り替えられる。
ここではmineoと比較しやすいドコモ/auの安価なプラン(機種変更時)と、mineoの090音声通話+基本データ容量3GBのプランについて、iPhone 6s(64GB)の購入価格と24カ月の月額料金、24カ月の割引(ドコモ/auのみ)の総額を計算する。通話料や各種サービス料は含まず、税込みで表記している。
組み合わせ | 端末代+料金-割引 |
ドコモ/機種変更/カケホーダイ+2GB | 9万9792円(端末代) +7020円(基本料、ISP、通信パック)×24カ月 -2538円(月々サポート)×24カ月 =20万7360円 |
au/機種変更/スーパーカケホ+3GB | 9万7080円 +6696円×24カ月 -2435円(毎月割)×24カ月 =19万9344円 |
mineo/ドコモプラン/音声+3GB | 10万6704円(SIMフリー版、割引なし) +1728円×24カ月 =14万8176円 |
mineo/auプラン/音声+3GB | 10万6704円 +1630円×24カ月 =14万5824円 |
ドコモとauは端末購入時の割引(月々サポートと毎月割)がある代わり月額料金が高く、24カ月だとmineoより5万円以上、高い。12カ月など短期で見ても、基本的にmineoの方が割安だ。
キャンペーン、下取り
ただし、ここから各種キャンペーンや下取りによる割引やキャッシュバックもある。下取りの場合、それまで使っていた機種をキャリアに引き渡すことになるが、2〜3万円相当のポイントやキャッシュバックが受けられる。また前回の機種変更から2年経過していれば、機種変更1万円引きクーポンが提供されることもある。ドコモ/auなら家電量販店で一括購入することで、家電量販店のポイント還元もある(アップルストアにはそういったものはない)。
一方のMVNOも、事業者ごとにいろいろなキャンペーンを展開している。例に挙げたmineoはドコモプラン、auプランともに10月31日までに新規契約/MNP契約すると、864円×6カ月=5184円の割引が得られる。元の料金が安いので、090音声通話+基本データ容量3GBのプランだと約半額になってしまう割引だ(mineoのキャンペーン概要)。
料金だけで比べてみる
またiPhoneを購入しない場合はどうなるだろうか。通信料金だけで見比べてみよう。
プラン | 12カ月 | 24カ月 | 36カ月 |
mineo/ドコモプラン音声+3GB | 20736円 | 41472円 | 62208円 |
mineo/auプラン音声+3GB | 19560円 | 39120円 | 58680円 |
ドコモ/カケホーダイ+2GB | 84240円 | 168480円 | 252720円 |
au/スーパーカケホ+3GB | 80352円 | 160704円 | 241056円 |
iPhoneの価格(約10万円)がそのまま節約できるので、買い換えに比べると文字通りケタ違いに安くなるが、ドコモ/auとmineoの差もさらにハッキリとしてくる。1年で、約4倍、6万円もの差は大きい。大手事業者の場合、月々サポートや毎月割がないと、かなり割高だ。
なお、繰り返しになるがau網のMVNOサービスではiPhone 6/6 Plus以降しか使えないため、これから毎月割がなくなっていくiPhone 5s/5cのユーザーは、au網対応のMVNOサービスは使いづらい。ただしドコモのiPhone 5s/5cは、そのままMVNOで流用できる。先述したmineoのキャンペーンなどを活用すると、さらに節約できることになる。
iPhoneはMVNOに向いている
ドコモやauなど大手携帯電話事業者には、「端末購入時に24カ月限定の割引が付く」というシステムがあり、24カ月で買い換えないと割引を100%享受できない。しかしMVNOにはそういったシステムがない。
たとえばSIMロックフリー版のiPhoneは端末代の実質負担を減らすような仕組みはなく、もし購入したのなら、長く使った方が安く済む。簡単に言えば、10万円のiPhoneを2年使えば1年あたり5万円だが、3年使えば1年あたり3.3万円、4年使えば1年あたり2.5万円で済むということだ。この面では、長期にわたってOSアップデートが提供され、長く使いやすいiPhoneは、MVNOでの利用に向いているとも言える。
もちろん手段として、中古のiPhoneを購入する、というのも一手だろう。
またiPhone 6s/6s Plusであれば、キャリア版でもSIMロックを解除できる。1台買っておけばどのキャリアでも利用できるわけだが、MVNOのなかにはmineoのように期間拘束がないものもある。SIMロックを解除していれば、さまざまなサービスを試しやすくなるわけで、そういった点を魅力に感じる人もいるだろう。
料金が高いと感じるなら、MVNO検討の価値あり
ドコモやau、ソフトバンクなどの大手キャリアの料金設定では、端末を購入すると24カ月間の割引が付与され、それを全部受けたときの「実質価格」が安いというのが売りだ。
iPhoneの価格は本来10万円のところが、割引が総額7万円くらい得られて、実質価格が3万円くらいになるイメージだ。一方の月額料金は、ドコモやauで一般的として設定されている通話定額+5GBプランだと、だいたい月額8000円になる。
一方のMVNOだと端末に割引はないので、iPhoneの端末代(約10万円)がかかってくる。しかし月額料金はかなり安く、手頃な音声+3GBプランなら月額1600円前後。MVNOに通話定額はないため、通話が多い人は大手キャリアの通話定額のほうがいいかもしれないが、通話料が毎月2000円を超えるレベルでないと、iPhone購入時の割引を考慮してもMVNOの方が安いはずだ。
料金面以外では、MVNOでは最初にプロファイルのダウンロードが必要で、Wi-Fi環境がないと使い始めることができず、ある程度のITリテラシーが必要だろう。そこをクリアできれば、大手キャリア版のiPhoneと同じように使える。
このほか、キャリアメール(@docomo.ne.jpなど)のアドレスは引き継げない。もしMVNOに乗り換えれば、新しいメールアドレスに乗り換えて家族友人に告知する手間がかかるが、これは大手キャリア間のMNPでも同じ話だ。
MVNO移行時に面倒な点として挙げるなら、主に上記の2点だ。とくにメールアドレスは周囲の友人などへの知らせるのが手間になるところではあるが、2年以上利用することを考えると、MVNOの割安な料金は、そうした手間を乗り越えるだけの違いがあるとは思う。料金面で頭を悩ませているiPhoneユーザーは、一度、MVNOへの乗換を検討してはどうだろうか。