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気になるスマホのあの機能
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isai vividのマニュアルモードを駆使、プロカメラマンが夜景を撮る
(2015/6/30 11:49)
キャリア各社の2015年夏モデルでは、カメラ機能に改めて注力されたモデルがいくつも登場している。auから発売されたLG製「isai vivid LGV32」もそのひとつで、一眼レフカメラのようなこだわりの撮影が楽しめる「マニュアルモード」を搭載している。
本稿では、カメラ雑誌「デジタルカメラマガジン」や僚誌「デジカメ Watch」への執筆をはじめ、プロカメラマンとして活躍する佐々木啓太氏による、「isai vivid」での夜景撮影のテクニックをお届けする。
auから発売されたLG Electronics製の「isai vivid LGV32(以下 isai vivid)」は、5.5インチの画面を搭載するハイエンドスマートフォンで、今回注目したのは充実したカメラ機能です。リアカメラのレンズはスマートフォン最高クラスのF値1.8というの明るさを備え、夜景や暗い場所での撮影に適しています。さらに、スマートフォンでは珍しく「マニュアルモード」を搭載しています。ISO感度は50~2700の17段階、ホワイトバランスは2300K~7500Kの51段階、シャッタースピードも30秒~1/6000秒の間で細かく設定できるようになっています。今回はその特徴でもあるマニュアルモードを使いながら、夜景撮影にポイントを絞って、使いこなしのテクニックをレポートします。
色み(WB/ホワイトバランス)
マニュアルモードでWB(ホワイトバランス)を変更すると、色みを変えることができます。色は写真のイメージを大きく左右する要素なので、自分が狙いたいイメージに合わせて変更できると撮影の楽しみも増えます。
WBの設定はK(ケルビン)という色温度の単位で変更できます。ただ、「◯◯◯Kにする」とどうなるという細かい数値で覚えるより、設定の数値を小さくするとブルーが強くなり、数値を大きくするとアンバー(オレンジ)が強くなると覚えたほうが、撮影時で使いやすいはずです。
「isai vivid」のディスプレイは色再現域も広く、忠実で鮮やかに、自然な色に再現してくれるようになっているので、画面上の変化を見ながら設定を決めてください。
上段の写真は、「WB AUTO」で撮影したものです。色みは見た目に近い状態ですが、アンバーにした上の作例と比較すると、少し寂しく感じます。マニュアルモードではない、スマホまかせの「シンプルモード」でも同じような結果になるので、マニュアルモードで色をコントロールして雰囲気を作りました。その他の比較写真で、色によるイメージの違いが大まかに分かると思います。
ブルーを強くするとクリアーな印象が強くなって、アンバーにすると暖かな印象が強くなります。色によって写真から伝わってくるイメージは大きく変わります。夜景を撮影するときは思い切って色を変更してみましょう。
露出補正
露出補正は写真全体の明るさを変更する機能です。「isai vivid」のカメラ(リア)は、F値がF1.8で非常に明るいレンズなので多くの光を取り込むことができます。このために、夜景を撮影するような少し暗い条件でも明るく撮影しやすい特徴があります。
上の比較作例の左側は露出オートで撮影しているので、見た目より明るい感じの雰囲気になっています。夜景など暗いシーンを撮影すると見た目より明るくなりやすいのは、反射した光でカメラが露出を計るためで、一眼レフやミラーレス一眼カメラでも同じような傾向があります。
露出補正の方法は、マニュアルモードで「+/-」のアイコンにタッチして、モニター右側のパラメーターで調整します。この使い方は先に紹介したWBの変更や、後から紹介するISO感度とシャッタースピードの変更も同じような操作です。それぞれのアイコンにタッチしてパラメーターで調整するので直感的に扱えます。
マニュアル露出
夜の街などの暗い条件の場合、カメラが自動で判断する露出が明るくなりやすいので、露出補正(±2.0EV)だけでは大胆な露出にできない場面もあります。上の写真ではISO感度とシャッタースピードをマニュアルで固定して見た目よりかなり暗い雰囲気にしています。夜景をしっとりと深みのある仕上げにしたいときにはオススメの方法です。
この撮影では、小さなテーブルトップ三脚を使っています。「isai vivid」には「3軸の光学式手ぶれ補正機能」がついているので、低速シャッターでも手ぶれを防ぎやすくなっています。1/8秒以下のシャッタースピードを使う場合は小さな三脚があったほうがより安定した撮影ができます。
シャッタースピード
シャッタースピードは、被写体の動きをコントロールできる機能です。特に夜景を撮影するときは、スローシャッターを使うとその雰囲気を作りやすいはずです。上の作例のように1/15秒にすると、歩いている人が少しブレるので夜らしい雰囲気になります。あまり低速にしすぎるとブレが大きくなり過ぎて、歩いている人の足が片方だけになることが多くなります。
1/15秒でも手ぶれ補正のおかげで、手持ちで撮影していても背景をぶらさずに人物だけぶらすことができます。今回の撮影ではより安定した条件にするために、ベンチの上で小型のテーブルトップ三脚を使っています。人物の動きを捉えるときはタイミングや構図のバランスでもイメージが変わりやすいので、初めのうちは小さな三脚を使ってカメラを固定して撮影するのがオススメです。
シャッタースピードを1/2秒にすると車のライトを光跡で表現できます。「isai vivid」のカメラは絞りがF1.8の固定なので、この条件ではこれ以上低速シャッターにすると画面全体が明るくなって、光跡の印象が弱くなります。
さらに低速シャッターを使うためには、NDフィルターというレンズに入ってくる光を弱める効果があるフィルターを利用します。今回使ったNDフィルターはビデオカメラ用の37mm径のND8です。NDフィルターはその数値で光を弱くする効果が違います。ND8はシャッタースピードを3段分遅くする効果があります。シャッタースピードが長くなると光跡がより長く伸びるので、見た目と違う雰囲気の写真になります。
歩道の上から作例ではアンバーが強くなるようにしていますが、高層ビルの展望室からの作例はブルーが強くなるようにしています。太陽が完全に隠れた夜の撮影はブルーを強くするとクールな印象が強くなります。ブルーが強くなる設定にしても、車のテールランプは赤いままなので、高層ビルの上など少し離れた場所から撮影してもその存在感が強くなります。
低速シャッターを使うときは三脚を使います。歩道橋から撮影するときはテーブルトップ三脚と歩道橋の手すりの間に滑り止めシートを挟むと安定した撮影ができます。展望室では三脚の使用が禁止になっているところが多いはずです。テーブルトップ三脚など小型のモノは今のところこの規制の対象外になっていることがあります。ただ、撮影中は周りの人たちへの配慮を忘れないでください。撮影している自分だけでなく周りの人も気持ちよくなる撮影を心がけていれば、こうした規制がこれ以上強くなることも少ないはずです。
展望室からの撮影でもうひとつ気になるは、窓ガラスへの写り込みです。写り込みは、展望室の中が外の風景より明るい場合におこります。一眼レフカメラでカメラに黒い布をかけている人がいるのはこの写り込みを防ぐためです。「isai vivid」で撮影する場合は、ガラスにレンズを近づけると写り込みを防ぎやすいはずです。
ピント(MF/マニュアルフォーカス)
ピントを合わせる場所を変えるとイメージががらりと変わることがあります。上の作例では展望室の窓についた水滴にピントを合わせています。オートフォーカス(AF)で、背景の風景にピントが合って水滴にピントが合わせづらいときは、MFで水滴にピントを合わせます。
カメラアプリ内での調整
撮影後の画像調整の項目が多いのも「isai vivid」の特徴です。画像再生画面で画面右上の鉛筆のようなアイコンにタッチすると調整画面になります。「自動」「切り撮り」「回転」「スタイル」「画像調整」「部分調整」「ディテール」の他に、デジタル的な強い変化が得られる「ビンテージ」「ドラマ」「モノクロ」「HDR風」「レトロ」などがあります。デジタル的な強い変化にはさらに個別のイメージがあるので、撮影後の写真の雰囲気を思いきって変えたいときに便利です。
まとめ
スマートフォンとしては少し大型の5.5インチの液晶は非常にきれいで見ているだけで楽しくなります。背面は全体に緩やかにカーブがついているので手になじみやすく、扱いやすい印象でした。撮影するときにシャッターを押すだけで見た目と同じように奇麗に撮れるのもうれしいですが、遊び心をいかしながら変化をつけると撮影がさらに楽しくなるはずです。
そんな変化をつけやすいのもマニュアルモードが充実しているからです。さらに、一眼レフカメラのように「RAW(DNG)」データの記録やマイクロSDカードにも対応しています。レンズの明るさも撮影条件が広がるポイントなので、これまでのスマホではちょっと無理な条件でも簡単に奇麗に撮影できると感じました。あとはご自身の手でこの美しさ、楽しさを体験してください。