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ぞくぞく登場、定額制のスマホ向け音楽配信まとめ

ぞくぞく登場、定額制のスマホ向け音楽配信まとめ

Apple Music登場前夜、国内サービスをあらためてチェック!

 今、スマートフォン向けに次々と、定額制の音楽配信サービスが登場している。まずはエイベックスとサイバーエージェントによる「AWA(アワ)」、LINE、ソニーミュージック、エイベックスの「LINE MUSIC」が話題を集める一方で、まもなくアップルの「Apple Music」が日本国内でも展開するかどうか期待がかかる。

 スマホで利用できる定額制の音楽配信サービスは今回が初めてではなく、かねてより日本国内でも展開されている。NTTドコモの「dヒッツ」は300万会員に達し、auもラジオ風の「うたパス」、アーティストとのコミュニケーションも楽しめる「KKBOX」を展開し、ほかにもいくつかサービスが存在する。Apple Musicは日本での提供が期待されるものの、中身はまだ不透明。まずは既に利用可能となっている各社のサービスの特徴を見てみよう。本稿における価格表記は税込みとなっている。

【更新 2015/7/1 21:36】
 Apple Musicのサービス開始に伴い、表を更新しました。

スマホ向け定額制音楽配信サービス(その1)
名称LINE MUSICAWAApple Music
提供元LINE
SME
エイベックス
エイベックス
CA
アップル
料金ベーシック:500円
プレミアム:1000円
(Apple IDでは1080円)
※学割あり
ライト:360円
プレミアム:1080円
通常:980円
ファミリー:1480円
形態オンデマンドライト:ラジオ
プレミアム:オンデマンド
オンデマンド
ラジオ
音質(ビットレート)64/192/320kbps64/96/128/320kbps256Kbps
オフライン機能(キャッシュ)の有無キャッシュ可/オフライン不可実装予定
プレイリスト〇(プレミアムのみ)
楽曲数150万曲以上150万曲以上約3000万曲(公称値)
※日本から利用できる曲数は不明
新譜の配信開始時期アーティスト/レーベルによって異なる洋楽はCD発売と同時
邦楽はアーティスト/レーベルによって異なる
iTunesと同等
備考LINEとの連携もあり。同機能でも利用時間が異なる2つのプラン洗練されたUI。ラジオ型とオンデマンド型を用意音楽に通じたプロによるリコメンドでコア層含めて満足できる音楽体験を提案
スマホ向け定額制音楽配信サービス(その2)
名称dヒッツうたパスKKBOXレコチョク Best
提供元NTTドコモKDDIKKBOXレコチョク
料金540円324円(Apple IDでは600円)980円980円
形態両方ラジオオンデマンドオンデマンド
音質(ビットレート)128kbps128/320kbps128/320kbps128/320kbps
オフライン機能(キャッシュ)の有無マイヒッツはキャッシュオフラインなし/先読みした数曲分4000曲2000曲
プレイリスト△(チャンネル機能)
楽曲数200万曲以上200万曲以上1200万曲
(邦楽300万、洋楽900万)
250万曲以上
新譜の配信開始時期アーティスト/レーベルによって異なるCD発売と同時洋楽は国内版発売と同時
邦楽はアーティスト/レーベルによって異なる
アーティスト/レーベルによって異なる
備考「マイヒッツ」には毎月10曲登録可能。ラジオ型とオンデマンド型の両方を備えるユーザー同士のチャンネル公開機能「Now On Air」、好みのアーティストをきっかけに新しい音楽に出会える「アーティストミックス」などListen Withでアーティストと近い距離で音楽を楽しめるリコメンド機能を強化。PCでも利用可。J-POPに強み

レーベル別/アーティスト別に見る各サービス

新譜の配信状況
サービス名LINE MUSICAWAApple MusicdヒッツうたパスKKBOXレコチョク Best
ソニーミュージック
エイベックス
ワーナー
ユニバーサル
ビクター

 音楽配信サービスでは、楽曲数や協力するレーベルの数といった形で、ラインアップの豊富さが伝えられることが多い。国内で代表的なレーベルについて、新譜の配信について訪ねてみたところ、ラジオ型のサービスについてはスピーディに配信されることがわかった。オンデマンド型の場合は、楽曲によって違いがあるようで一概には言えない(そのため表では△とした)ようだ。

サービス名LINE MUSICAWAApple MusicdヒッツうたパスKKBOXレコチョク Best
AKB48×
×××××××
EXILE×(7/1以降)×
サザンオールスターズ×××××
GLAY×
安室奈美恵×××××
斉藤和義××

 新譜の配信状況とあわせて、日本でもトップクラスの人気アーティストの収録状況を調べてみたのがこの表だ。トップクラスの人気というところでは納得していただけるであろう顔ぶれだと思うが、筆者の大好きな斉藤和義も含めて調べてみた。こちらは新譜に限らず、配信の有無だけでチェックしたところ。

 ざっと見て嵐(つまりジャニーズ系)の楽曲はこうしたサービスでは利用できない状況だ。他のアーティストではサザンオールスターズが、いわゆるラジオ系だけ、という印象。本人の歌が配信されていなくても、オルゴール曲なら提供されている場合があるがそれは対象外とした。前日に行った調査ではGLAYの楽曲を扱うサービスも限られていたのだが、執筆時にあらためてチェックしてみると増えていた。今回、こうして表にはしてみたが、1週間、2週間、1カ月……と日が経つにつれて、各サービスで配信される楽曲はどんどん増える見込みだ。

LINE MUSIC

 コミュニケーションアプリであるLINEと連携し、聴取時間を区切って割安なプランを用意した「LINE MUSIC」。150万曲以上を揃えているとのことで、参加レーベル/プロダクションは28社となっており、AWAより少し多い。トップには“ピックアップ”として紹介されている楽曲、新譜などが並び、その下にプレイリストがある。新譜が配信される時期はアーティスト、レーベルによって異なるとのことで、はっきりしたことはわからない。

 聴いている曲をLINEのタイムラインやトーク、FacebookなどのSNSへ投稿できるのも特徴の1つ。また、楽曲のキャッシュも可能で、現在は利用時に契約状況をチェックするため圏外では使えないが、LINEによれば、オフライン(圏外)での再生機能もサポートすべく、現在準備中だという。

 月額500円(学生は300円)のベーシックプランと、月額1000円(同600円、iPhone版のアプリ内決済は1080円)のプレミアムプランという2つのプランがある。どちらも機能面では同じだが、ベーシックは30日間で20時間分の聴き放題と、音楽を楽しめる時間が制限される形。プレミアムプランはその聴き放題の時間が無制限となる。音楽を楽しめる時間の違いでプランを分けているのは、他社にない仕組みだ。

AWA

 エイベックスとサイバーエージェントが提供する「AWA」は、プレイリストとリコメンド、洗練されたデザインとわかりやすいインターフェイスが特徴。アプリを起動すると、まず「(Top 100 Track on AWA)」「Top 20 Pop Track on AWA」など人気曲にすぐアクセスでき、画面を下にスクロールさせていくと、アーティストやユーザーが作ったプレイリストを楽しめる。

 まずは人気曲を聴きつつ、プレイリストを眺めていると、「〇〇のオススメ曲」といったアーティストのリコメンドによるプレイリストや、ドライブ、お風呂などシチュエーションにあわせたプレイリストが並ぶ。参加するレーベル/プロダクションは計23社で、トップ100の曲を見るとAKB48、EXILE、Superfly、テイラー・スウィフト、One Directionなどのアーティストが並ぶ。洋楽と邦楽の内訳は、現時点で4:1程度の比率とのこと。ざっくりとした数値だが、この内訳を開示しているのは各社のなかでAWAが唯一だ。新譜については、洋楽はCD発売とほぼ同時。邦楽はアーティストやレーベルによって異なる。

 プレイリストと、曲は選べないもののラジオのように聴ける「Lite」プラン(月額360円)と、オンデマンド視聴対応でプレイリストの作成と公開ができる「Premium」(月額1080円)のどちらかを契約する。利用開始から3カ月間は無料でPremiumの機能が利用できる。オフラインモード、ローカルキャッシュ機能は8月上旬に導入する予定という。

dヒッツ

 AWAやLINE MUSICが、好みの楽曲をいつでも好きなだけ聴ける“オンデマンド型”に分類されるなか、曲は選択できずあらかじめ掲げられているテーマに沿ったプログラムで音楽を楽しめる“ラジオ型”がある。NTTドコモの「dヒッツ」はラジオ型と“制限のあるオンデマンド型”を組み合わせたサービスだ。ドコモのサービスだが他キャリアのユーザーでも利用できる。

 “制限のあるオンデマンド型”とは、dヒッツの「マイヒッツ」機能のこと。これは、1カ月間に10曲まで好みの曲を登録でき、好きなタイミングで好きなだけ聴けるもの。オンデマンド型ではあるものの、曲数に限りがある、というのが独特の仕様だ。実際にアーティスト名で検索してみると、まず試聴ファイルが提示され、1曲まるごと聴くためにはマイヒッツに登録する、あるいはその曲が含まれるプレイリストにアクセスする、といった形でやや面倒に感じた。AWAやLINE MUSIC、後述するオンデマンド型サービスが1000円前後となる中で「ラジオ&制限ありのオンデマンド」で500円という価格に設定されたことが特徴とも言える。音質は他社サービスは最高で320kbpsのものを用意するなかで、128kbpsだけとなっている。

 なお、ラジオ型はストリーミングのため圏外では聴けない。「マイヒッツ」機能の楽曲は初回再生時に曲がキャッシュされるものの、2回目以降の再生の際には、最初に認証のための通信が行われるため、そのときは通信できる環境下にいる必要がある。

うたパス

 auの「うたパス」は、ラジオ型の聴き放題サービス。オンデマンドではないため、好みの楽曲を探して聴くといった用途には向いていないが、何と言っても月額324円と、聴き放題サービスのなかでは最も安いプランが大きな特徴となる。ちなみにこの価格はauかんたん決済で支払う場合となり、Apple IDで決済する場合は30日コースが600円となる。この価格は当初、450円だったが、今春、為替の影響で600円になった。KDDIでは近く価格を改定すべく検討中とのこと。

 楽曲のラインアップは200万曲と、dヒッツと同等で、LINE MUSICやAWAより多い。サザンオールスターズなどAWAやLINE MUSICでは聴けないアーティストの曲を聴けることも魅力の1つとしており、新譜はCD発売と同時に登場する。楽曲のキャッシュは、先読みした数曲分という形。アーティストによるプログラムもあり、そのアーティストと一緒に楽曲を楽しむこともできる。

 後述するKKBOXがグループ会社のサービスであり、「お手軽なうたパス」「音楽ファンならKKBOX」といったすみ分けになるようだ。

KKBOX

 2013年からサービスが提供されている「KKBOX」は、台湾発のサービスで、1000万曲ものラインアップを揃える。ユニークなのは、「Listen With」と呼ばれる機能で、アーティストが出演するラジオ番組のようなつくり。ユーザーは聴くだけではなくチャットで発言することもできアーティストと一緒に音楽を楽しめる。台湾発のサービスとあって、日本のアーティスト以上に台湾など中華圏のアーティストも多く登場する。

 4000曲までキャッシュでき、圏外でも楽しめる。再生プレーヤー機能にはイコライザーなども用意されている。

レコチョク Best

 KKBOXと同じく2013年からサービスを提供するのが「レコチョク Best」。国内主要レコード会社によって運営されているだけあって1960年代以降の邦楽を含めて、150万曲以上揃える。スマートフォンには最大2000曲までキャッシュでき、圏外でも楽しめる。

 特定のアーティストだけの曲が月額324円で聴き放題になる「アーティストプラン」(最大3契約まで可能)が用意されているのは他にないところ。新譜の配信状況はアーティストやレーベルによって違うようだ。

 このところ注力しているのはレコメンド機能。ユーザーの好みにあわせて新たな提案をしていく形で、7月には、音楽に詳しい人が作ったプレイリストも配信していく予定。

定額制でもそれぞれ違い

 「定額制の音楽配信」といっても、LINE MUSICやAWAは、好みの楽曲をユーザーがチョイスして聴くストリーミングタイプの「オンデマンド型」で、LINE MUSICにはキャッシュ機能があり、同じオンデマンド型でもKKBOXはオフライン(圏外)でも楽しめる。一方、auの「うたパス」はあらかじめ用意されたテーマに沿った楽曲を聴く“ラジオ型”で、手頃な価格で利用できる。またドコモの「dヒッツ」はラジオ型とハイブリッド型の両方を備えたサービス。

 利用に値するサービスかどうか検討する際に気になるポイントとしては「楽曲数」を挙げたい。各社ともに洋楽・邦楽の内訳は非開示だが、KKBOXは洋楽に強いとされる。うたパスやdヒッツは国内メジャーレーベルの楽曲をカバーし、サザンオールスターズ、GLAYなどの曲もある。楽曲数が多ければ、それだけ、自分の好みのアーティストが配信されている可能性が高いと言える。ただ、本当に大好きなアーティストであれば楽曲を別途、入手していることもあり、定額制サービスを新しい音楽との出会いのツールとして楽しむ、というのも1つの選択肢だ。

 料金面ではうたパス、学生向けのLINE MUSICが最も安い。1000円前後のオンデマンドサービスはいずれも同じような形に見えるかもしれないが、楽曲数だけ見るとKKBOXが抜き出ている。ただこれも中華圏のアーティストの曲が多めという傾向はある。新譜の配信状況も、たとえばLINE MUSICは「アーティストやレーベルによって異なる」としているが、うたパスのようなラジオ型サービスは、すぐ配信されることになるようだ。

 筆者自身、かつてはドライブやお出かけする前にどのCDを持っていこうか、なんて考えて、CDをレンタルしにいったこともある。だが、今や音楽はクラウドにあって、自由に楽しめる時代になった。それぞれのサービスには無料のお試し期間もある。たとえばAWAは90日、LINE MUSICは8月9日まで、dヒッツは31日、うたパスは14日間、KKBOXは1日(Facebookアカウントなら7日、レコチョク Bestは3日間(特設サイトからの登録で1カ月)といった具合だ。

 手軽に使いたいならラジオ型、はたまた特定のアーティストにこだわるならオンデマンド型といった形になるかもしれないが、新しい音楽に出会える手段として、これらのサービスを一度使ってみてはいかがだろうか。

関口 聖