「N-07A」レビュー

「デザイン」と「スポーツ」を売りにするFOMA端末


 「N-07A」は、NTTドコモの夏モデルとした登場したNEC製のFOMA端末だ。アートディレクターの佐藤可士和氏が外観・内蔵コンテンツのデザイン監修を担当し、個性的なカラーも用意されたスライド型端末となる。そうなると当然、デザインが目を引くところだが、「スポーツ」をテーマとしていて、スポーツ支援機能も特徴となっている。今回はこの「N-07A」について、デザイン面、機能面、使い勝手面などをレビューしよう。

目を引くデザイン

N-07A(CHECKER)

 やはりなんといっても「デザイン」の要素は、「N-07A」にとっていちばんの特徴とも言えるポイントだ。

 「N-07A」のデザイン監修をつとめる佐藤可士和氏は、「N702iD」や「F801i」などのデザインを担当したことでも知られる。「N-07A」のデザインも「N702iD」や「F801i」のように、スマートに角張ったスクウェアデザインを採用している。

 ケータイの場合、あまりにも角張っていると、手になじみにくく実際のサイズよりも大きく感じられることがある。「N-07A」の場合、手で握るバッテリー側だけ縁が面取り(角を斜めにカットすること)されていて、手にしたときのボリューム感が減っている。手の大きさや好みの問題もあるので、購入を検討している人は店頭などでチェックしたいポイントだ。

 「N-07A」はスライド型デザインを採用する。カーソルキーを含め、すべてのキーが隠れるフルスライド型となる。スライドを閉じていると、ケータイと言うより「四角いなにか」と感じてしまうほどスタイリッシュなデザインだ。

 カラーバリエーションは、「VERMILION」(朱色)、「CYAN」(青)、「CHECKER」、「WHITE」の4色が用意されている。VERMILIONとCYANも目立つ色だが、CHECKERは白と黒の市松模様という、普通のケータイとは一線を画すテクスチャとなっている。

N-07A(CHECKER)の背面。ものすごく目を引くチェック柄だ

 バッテリー面と側面部のデザインが特徴的な一方で、ディスプレイ面とキー面は全カラーバリエーションともに黒で統一されている。スライドを開いたときに見えるディスプレイの背面も黒となっている。欲を言えば、デザインを特徴としているケータイとなるため、ここにもカラーやテクスチャを用意して欲しかった。ケータイでメールや通話をしているとき、ほかの人からはこの面が見えるからだ。

 逆に、バッテリー面は、この端末では顔とも言えるほどの美しさがある。メーカーの製品情報などを見ると、このバッテリー面の写真が多用されているくらいだ。卓上に置くときは、こちらの面が目立つようにしたいものだ。カメラ周辺は、シンプルな黒い帯になっている。デザイン上のアクセントとして活用されているが、個人的にはどうせなら縦方向の長い帯を採用した「N702iD」くらいインパクトのあるアクセントにしても良かったのでは、と感じる。

 スライド自体もデザイン上の工夫が施されていて、開くとディスプレイ面とキー面が緩やかな弧を描く「アークスライド」となっている。電話をするときに顔のラインにフィットしやすいというメリットもあり、なかなか美しいラインだ(よく見ないと気がつかないのが残念)。

スライドを開くと、わずかに弧を描く形になるディスプレイの背面。黒い

フルスライドでテンキー・カーソルキーは小さめ

キー部分。カーソルキーの上下部分が薄いのが気になった。ほかのキーは立体形状で指がかりが良い

 フルスライド形状となっていて、カーソルキーとテンキーなど全てがキー面に集中している。スライドのストロークは短くはないのだが、それでもカーソルキーとテンキーすべてを収めるには面積不足のようで、各キーは縦方向にかなり圧縮されている。とくに方向キーの上下がかなり圧縮気味で、ちょっと打ちにくい印象を受けた。ほかのキーも上下に圧縮されているが、立体形状となっているため、指の引っかかりは良い印象だ。

 スライドを閉じているときには、ディスプレイ下の3つのタッチキーで簡易操作ができる。専用の簡易メインメニューが用意されていて、2つのキーが左右選択、1つのキーが決定キーとなり操作できる。タッチキー自体には押した感触はないが、タッチキーにでメニュー操作すると、本体が微妙に震えて手に感触がフィードバックされるので、操作が受け付けられたかどうかを実感しやすい。

 閉じた状態では、複雑な操作のない機能が利用でき、カメラやワンセグなどよく使うと思われるところが閉じたまま操作できるのは便利だ。ただ、閉じた状態でメニューを呼び出すボタンは、本体右下にあり、このキーが左右どちらの手で本体を握っていても押しにくい印象を受けた。

 なお、スライドを閉じたままの通話はできない。欲を言えば閉じたまま通話できるようにして欲しかったところだ。

撮影照明を当てているので少々見えにくいが、ディスプレイの脇に光る3つのポイントがタッチキーとなっている閉じたとき専用のメニュー

 内蔵する加速度センサーで本体の傾きを検出し、画面の縦横を自動で切り替えられる。自動切り替えできるのは、ワンセグやフルブラウザ、カメラ、動画再生だけだが、スライドを閉じているときに複雑な操作はしたくないので、この自動切り替えは非常にありがたい。

 変わった機能としては、音声入力でメール作成やクイック検索のキーワード入力ができる。どのくらい実用できるかは、正直ユーザー次第、というところだが、なかなかユニークな機能だ。ちなみに音声識別はサーバー側で行われるので、パケット通信料金が発生するほか、メール入力の方は有料サービスとなっている。

T9の予測。筆者的に、通常のテンキーでは最高速の片手入力メソッドだ

 日本語入力エンジンは、バージョンアップした「MogicEngine V」を搭載している。NEC独自開発のエンジンだが、時間連動予測変換やマイプロフィール連携などの多彩な機能が搭載されている。さらにMogicEngineに加え、NECのFOMA端末ではおなじみの「T9」も搭載している。「T9」は1文字を1タッチから予測するという方式だ。個人的に「T9」が好きなので、ここはありがたいポイントである。

 ディスプレイのサイズは3インチで解像度は480×854ドットのフルワイド仕様。いまどきのケータイとしては平均的なサイズと言えるかもしれないが、それでもやはり広い。NECのFOMA端末は、タスクバーが常に1行分表示され、ディスプレイが大きいため、無駄なスペースを消費されている印象がほとんどない。

 カメラは記録320万画素(記録サイズは1536×2048ドット)のCMOSを搭載している。最近ではそれほど高画素とは言えないが、大きくプリントアウトするのでなければ十分な画質だろう。自動補正エンジンの「PictMagicIV」や手ぶれ補正エンジンなども搭載されている。

 また細かい点になるが、microSDカードはバッテリーカバー内にあり、バッテリーを外さないと抜き差しできないようになっている。利用スタイルによるものの、ここはちょっと不便なポイントだ。

 このほか機能面は、最新機能までしっかりと対応している。Bluetoothにも対応している点はうれしいが、GPSを搭載していないのはちょっと残念なところだ。GSMローミングには非対応だが、3Gローミングは可能なので、海外でも主要都市ならば大丈夫だろう。

使いやすいスポーツ支援機能「Enjoy Exercise」

Enjoy Exerciseの表示。歩いた結果が表示されるのは、非常に楽しい

 デザインが注目されがちな「N-07A」だが、ウォーキングやランニングを支援する機能も充実していて、支援アプリ「Enjoy Exercise」がプリセットされている。

 「Enjoy Exercise」は加速度センサーで歩数を計測し、距離や消費カロリーなどを計算するというアプリだ。コナミスポーツクラブの監修を受けており、シンプルながらなかなか充実した機能が提供されている。

 たとえばウォーキングだと、歩数に加えて距離や時間、消費カロリー、燃焼した脂肪量、さらに「しっかりと歩いた」歩数も計測・計算してくれる。ちなみにウォーキングの歩数は、アプリを起動しないでも計測され続け、過去の歩数をグラフなどで表示できる。とりあえず持ち歩いておけば、あとで「今週はどのくらいカロリー消費したっけ?」と参照できるため、夜飯を焼き肉にするか、それともソバにするか決める際などに参考にできるわけだ。

 なお、運動の成果はカロリー表示だけでなく、いくつかのモードで表示が可能だ。BASICモードでは実際の地名を使ってどこまで歩いたかを距離表示してくれる。東京だけでなく、大阪や名古屋、博多、仙台などにも選択可能で、自分になじみのある地名を選べるのがユニークだ。このほかにも脂肪の燃焼量(グラム表示)や歩行距離から削減した二酸化炭素量に換算して表示したりもできる。

レビューしたときは、なぜか大崎発の埼京線だった。路線は毎週変わるらしいEnjoy Exerciseの表示デザインは変更可能。シンプルな日本語表示などが用意されているカレンダーでその日の消費カロリーを確認できる。自分の食事とダイレクトに比較できるのが憎い演出だ

 健康のためのエクササイズは、続けられたほうがいい。「Enjoy Exercise」は、エクササイズを楽しく続けられるよう作られていて、非常に好感が持てる。持ち歩くだけでデータが蓄積されていくという手軽さも魅力だ。女性はもちろん、メタボと闘わなければいけない男子諸君にもおすすめの機能である。

デザインだけでなくスポーツで選んでも間違いないモデル

 位置づけとしては、昨冬モデルの「N-04A」の後継モデルとなっていて、フルスライドデザインなどを受け継いでいる。形状的にはほとんど同じだが、amadanaの「N-04A」の方は周囲に溶け込むシックなデザインだったのに対し、佐藤可士和氏の「N-07A」は、はっきりと主張するデザインになっている。ほぼ同じ筐体でありながらまったく異なる印象を与えるのが面白い。

 佐藤可士和氏がデザイン監修しているため、デザイン重視の端末ととらえがちだが、実際に使ってみると、スポーツ支援アプリの「Enjoy Exercise」が使いやすく好印象だ。スポーツ重視の人や、メタボ対策としても選べるのではないだろうか。

 なお、NEC製ケータイの製品情報サイトでは、各製品ごとに「改善ポイント」として、ユーザーからの声を反映させて改善を施した内容を公開している。どのメーカーも同じような改善を続けているわけだが、こうしたわかりやすい形で公開してくれるのは、「前の機種で××が不満だったんだよなぁ」と思っていたような人にとっては非常にありがたい。

 GPSに対応しないなど、全部入りのハイエンドと呼べる端末ではない。しかし基本機能は一通りそろっていて、Enjoy Exerciseという強力な機能も用意されている。個人的にはキーの小ささが気になるが、キーの好みは個人ごとに異なるところなので、購入を検討する人は、店頭などでキーの押し心地をチェックすることをおすすめしたい。



(白根 雅彦)

2009/10/15 11:36