レビュー
10万円弱でライカ監修カメラが楽しめる「AQUOS R10」の魅力に迫る
2025年7月11日 00:00
昨今のスマートフォン市場は、ミッドハイと呼ばれる、10万円弱の価格帯が盛り上がっている。ハイエンドモデルの価格高騰に加え、スマートフォンの平均的なスペックが向上してきたことで、10万円程度の製品であっても、多くの人が満足できるようになっているためだ。
数年前までは、10万円ほどで最上位モデルが購入できたことも、ユーザーが手を出しやすいゾーンとなり得る要因だろう。
シャープのAQUOSシリーズからは、ミッドハイクラスの新モデルとして「AQUOS R10」が発売されている。
前モデルであるAQUOS R9から採用されている、三宅一成氏のデザインや、AQUOS R6から続くライカカメラ社監修のカメラを踏襲し、個性と扱いやすさ、コストのバランスに長けたスマートフォンになっている。
本記事では、メーカーからお貸出いただいた実機を2週間ほど試せたので、使用感について詳しく紹介していく。
程よいサイズ感と明るく滑らかなディスプレイ
AQUOS R10は、大きさは156mm×75mm×8.9mm(突起部除く)、重さは197gとなる。サイズを考えると比較的軽量なのに加え、カメラの突起が控えめで、すっきりとしたデザインに感じる。
AQUOS R9から採用されている、曲線を使ったカメラデザインが、いい意味でガジェット感を薄れさせ、普段使いしやすい印象を受ける。
本体サイズはそれなりに大きいが、7インチに迫る大画面モデルと比べると、やや控えめになっているため、極端に持ちにくさは感じていない。
背面はかなりツヤっとした素材になっており、指紋は目立つほどではないが、多少付着する。また、ケースなしで使用していると、滑りやすさを感じることがある。
電源ボタン、音量ボタンは右側面に集約されているが、どちらも位置が少し低いところに配置されているため、指紋認証センサーも兼任する電源ボタンに、親指が届きにくいシーンがあった。
SIMトレイは本体上部に搭載されており、SIMピンがなくても取り外せる仕様を引き続き採用している。
ディスプレイは約6.5インチ。少し前までは大画面だと言えるサイズだったが、今の感覚でいえば、やや大きいくらいなのかもしれない。ベゼルも細く、フラットなディスプレイになっているため、操作感も良好。
画面上部をタッチするには、両手操作や持ち替えが必要になるかもしれないが、ある程度の操作は片手でも行える。
AQUOSシリーズの特徴でもある、高いディスプレイ性能は健在。解像度は2340×1080にとどまるが、1~240Hzのリフレッシュレートの滑らかな動きが心地よく、Webスクロールやゲームアプリがヌルヌルと動作する。
本モデルより、ピーク輝度が3000ニトに向上しているため、屋外での視認性も高い。
ライカ監修カメラがサクッと使える楽しさ
アウトカメラは、約5030万画素のメイン、約5030万画素の超広角の2眼構成。AQUOS R6から続いている、ライカ監修のカメラとなる。
AQUOS R6や、AQUOS R9 proといった、1インチセンサーを搭載する、カメラユニットの大きいスマートフォンと比べると、コンパクトにまとまったデザインになっているので、カメラに特別なこだわりがない人にとっても、扱いやすい印象だ。
ライカ独特な画質チューニングに加え、シャープ独自の画質エンジン「ProPix」や、リアルな色味の表現をする14chスペクトルセンサーを搭載することで、メリハリのあるボケ感、現実に忠実な色味の表現ができる。ピントも素早く合い、パキっとした写真が、簡単に撮影できるのが魅力だ。
ポートレートモードは、人間だけでなく、ペットを認識して、毛並みを質感を調節しながら、背景をぼかした写真の撮影ができるのが面白い。夜景モードでも、的確に明かりをとらえ、明暗のコントラストがはっきりとした写真が撮影できた。
ただし、連続して写真撮影を行っていると、バックグラウンドでの処理に少しもたつき、シャッターボタンのタップにラグを感じることが、まれにある。
超広角カメラでの撮影は、明るい場所での撮影には、十分な力を発揮するが、メインカメラと比べると、若干暗さを感じることもあり、細部のディテール感も物足りなさを感じることがある。
とはいえ、日常的な風景を撮影したり、集合写真を撮る程度であれば、ストレスを感じるほどではないだろう。
望遠カメラは非搭載で、デジタルズームは最大8倍まで対応する。2倍、3倍程度の倍率であれば、高解像度を活かし、画質が大幅に下がる印象もない。色味の表現も、ライカらしさを残した、自然な仕上がりになる。
最大倍率までズームすると、さすがに解像感に物足りなさを感じるが、ここは価格とトレードオフの部分だろう。
カメラを使ったユニークな機能として紹介したいのが、影除去機能。被写体が料理、もしくは書類などのドキュメントの場合、スマートフォンの影を的確に除去した形で撮影できる。
書類をスマートフォンカメラでスキャンし、PDF化するといった使い方を多用する人にとっては、非常に便利な機能だ。
AQUOSらしいバッテリー性能と耐久性にステレオスピーカーを搭載
バッテリー容量は5000mAhで、サイズを鑑みれば、比較的大きいと言える。また、Pro IGZO OLEDディスプレイによる省電力性などは踏襲されており、バッテリー持ちは非常にいい印象だ。試しにYouTubeで動画視聴をしてみたが、3時間の連続再生でも、90%以上のバッテリー残量を維持している。1日の外出程度であれば、モバイルバッテリーがなくても、あまり電池切れの心配はいらないだろう。充電は、最大36Wに対応する。
本体はIP68準拠の防塵防水性能を有しており、指紋認証と顔認証の両方に対応。最大2TBのmicroSDカード、おサイフケータイ機能にも対応するなど、使い勝手を分ける細かなポイントにも抜かりない。今回は試せていないが、迷惑電話をブロックするAI機能なども搭載されている。
AQUOS R10ならではの進化ポイントが、新開発のフルメタルBOXスピーカーを搭載している点。音量は従来比約25%、低音域は従来比約35%向上しているとのことで、実際に試していても、音圧が上がっていることをはっきりと感じられる。
そもそもAQUOSシリーズは、一部で音質がいまいちという声もあったが、新たな技術を搭載することで、弱点をカバーするアプローチをしている点には好感が持てる。実際、他のフラッグシップスマートフォンと比べても、ストレスを感じないレベルにまで、音質の向上を感じる。
Snapdragon 7+ Gen 3、12GBメモリ搭載で安定感も十分
搭載メモリは12GB、ストレージは256GBと512GBの2サイズが展開される。仮想メモリとして、最大12GBのストレージをメモリ領域として使う機能も利用できる。
SoCはSnapdragon 7+ Gen 3を採用。前モデルから据え置きとなるが、これは価格と性能のバランスを重視した結果とのことだ。メモリ容量とSoCに進化は見られなかったが、冷却機能が向上しているため、ハイパフォーマンスを維持する力は増しているように感じる。
実際、原神のようなヘビーなゲームアプリでも、デフォルト設定であれば、かなり快適にプレイできた。長時間プレイしていると、さすがに本体が熱を持つシーンも見られるようになったが、10万円程度の端末としては、かなり満足感のある動作性だと感じている。
ゲーム内のグラフィック設定を上げると、少しもたつくシーンも見られ、発熱も増すので、ゲームアプリをガツガツプレイしたいという人に対しては、最上位クラスのスマートフォンを勧めたい。
なお、近年の大きな競争軸であるAI機能については、Apple IntelligenceやGalaxy AIのように、メーカーの統合的なAI機能として搭載するのではなく、写真撮影時の影除去機能のように、各アプリで使える機能を、自然な形で落とし込むようにカスタマイズされている。
AIを〝使っている感〟として、チャット形式のものなどは、グーグルのGeminiに任せ、普段使いにおいて、あると少し便利になる、さりげない機能をAIによって実現していく恰好だ。
メーカーとしてのAIへの向き合い方、とらえ方については、今後どのような結果が出るのかという段階であるため、一概にどちらが優秀とは言えないだろう。
一方で、一人のユーザーとしてスマートフォンのAI機能をとらえると、「開発が進んでいるからすごい」というものではなく、実用的な機能が自然に使えれば、それでいいのではないかとも思う。
価格だけでなく、カメラやバッテリー、処理性能、AI機能といった各要素を見ても、AQUOS R10は非常にバランス感覚にこだわられたスマートフォンだということを、強く感じられる。





















