レビュー

ドコモの5Gがついにスタート、その速度を体験してみた

 25日、NTTドコモが国内初の「5G」商用サービスを開始した。第5世代のモバイル向け通信規格といった意味の「5G」は、速度の向上や通信時の遅延が少ないこと、従来よりはるかに多くのデバイスが接続できることを特徴としているが、まずは「超高速」が体験できるようになった。

 今回はまず、対応機種のひとつ「Galaxy S20 5G」を手に、都内の5Gエリアでその通信速度を試すことにした。テストは、グーグルで「スピードテスト」と検索して表示される機能を用いている。

5Gの電波浴びてきました

 今回、筆者が訪れたのは、東京スカイツリーだ。その理由は後述するが、スカイツリーの中でも、1階にあるソラマチひろばで計測した。アンテナの場所は、ソラマチひろばの横に立つ建物の3階付近にあり、ちょうどひろばに向かって平らな板がいくつか並んでいる。

 その場所で5Gのアンテナピクトを確認した上で、スピードテストを実施。アンテナが見える場所であれば300Mbps台(300~390Mbps程度)を記録した。

 下り最大3.4Gbps(6月以降は4.1Gbps)とされるスペックからすると、ちょっと物足りない。ただし4G LTEに切り替えてから測定したところ100Mbps前後だったことを考えると単純に「(開始当初の)5Gは3倍速い」という結果だ。屋内であればもう少しスピードは期待できそう。たとえば先日の5G発表会会場でのスピードテストでは、5Gは1.4Gbpsを超える速度を記録した。これを屋外でも体験できるようになるのか、楽しみにしたい。

ドコモの発表会場におけるスピードテスト。5Gは1.4Gbps、LTEは134Mbpsだった
5Gエリアでのスピードテスト結果

 5Gエリア内でも場所によっては200Mbps台になった。これはアンテナのある場所のすぐ下、つまりアンテナへの見通しが悪い場所や、アンテナとの間に何らかの障害物があるような場所での計測だ。

速度がグッと落ち込む場所も

 ソラマチひろばには、巨大なオブジェも設置されているが、アンテナと筆者の間にその巨大オブジェがある状況で計測すると、5Gながらさらに速度は落ち込み、57.9Mbpsという結果になった。

 また、同じスカイツリーでも、4階にあるスカイアリーナでは今回、うまく5Gへ接続することができなかった。

 東京スカイツリーという東京を代表する観光名所とはいえ、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている状況や、平日昼であることを考えると、その瞬間、筆者以外の5Gユーザーは限りなく少ない状況だっただろうが、あくまでサービス開始当日のもの。ユーザーが増えてくれば、あるいは設備が増えて使える場所が広がってくればどんどん変化していくだろう。

 現時点では「サービスエリア」とされる場所であっても、まだまだかなり範囲が限られそう。東京以外の地域ではどの程度使えるかわからないが、当面は「サービスエリア」とされていても、現地では本当に狭いスポットのような形になるのかもしれない。

まだまだ限られるエリアだが……

 世間一般からも高い注目を集めてきた5Gサービスだが、ドコモの5Gサービスエリアは、3月25日時点でかなり限られている。同社では2021年の後半から面的な展開に注力する方針だ。

 筆者自身、ドコモの発表を受けて、思わず「ちょっと狭いかも」と感じてしまったが、開始時点のサービスエリアをよく見ると、特色というか、狙いのようなものがあるように思えてくる。

 たとえば駅前で使える場所は、全国15カ所ある。札幌、仙台、金沢、大阪、高松などの駅前では使える。しかし首都圏だけ駅前で5Gエリアが整備されていない。

 各地の観光名所や、繁華街でも整備されている。札幌の大通公園(西12丁目、西9丁目)、金沢の香林坊、大阪の道頓堀、神戸の南京町などだ。一方で、首都圏の繁華街に5Gエリアはない。観光名所では唯一スカイツリーで使える。

 対象エリアに渋谷も含まれているが、詳しく見ると、渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアといったビル内の一部に限られる。実際に訪れてみると、どちらもイベント用のホール、レンタルスペースが5Gエリアとなっており、今回は立ち入れなかった。

 ほかに都内でエリアになっているのはドコモショップやドコモの施設、あるいは競技場、羽田空港だ。普段の生活で訪れる、通りがかる場所というよりも、何かしら目的をもって訪れる場所だろう。ただ唯一、スカイツリーだけはぶらりと訪問できる場所と言えそう。

ちょっとわかりづらいが右上に「5G」とある

 普段の生活の中で携帯電話を使うことを考えると、サービス開始直後からしばらくの間、ドコモの5Gは、首都圏とほかの地域によって捉え方が異なることになるかもしれない。

 首都圏の人にとっては、日常生活の中で使える場所は、ほぼないように思えるが、何かしらのイベントがあれば5Gを通じた特別な体験を味わえる環境が、他の都市よりもいち早く整備されている。逆にほかの地域、関西を例にあげると阪神甲子園球場の観客席が5Gエリアになるなど、比較的、訪れやすく身近なスポーツ観戦で利用できる場所もありつつ、大阪駅前やユニバーサル・スタジオ、南京町で使えるなど、いわば5Gが日常的な存在になりやすそうな印象がある。

 これらの背景には、今夏予定されていたオリンピック・パラリンピックに向けた準備があっただろうし、5Gで期待される地方創生という意味があるのかもしれない。プロ野球やサッカーのスタジアムもそれなりにカバーされており、「スポーツ×5G」の新たなコンテンツが今から楽しみになる整備具合だ。

 6月には47都道府県で5Gエリアが整えられる。そして1年後の2021年3月には全国500都市で使えるようになる。この1年だけでも使える場所がどんどん広がる予定だが、ドコモでは「基盤展開率(全国を10km四方のメッシュで区切り、そこに基地局を置けばカバー率としてカウントされる)を重視する。人口密集地へ極端に配分するのではなく、全国津々浦々でドコモの5Gエリアが広がっていくことになりそうだ。