ニュース

ソフトバンク宮内社長一問一答

「ソフトバンクでんき」で東電と組んだ理由と、総務省“要請”に対する受け止め

 12日に実施されたソフトバンクの発表会では、東京電力とソフトバンクの代表者による質疑応答の形でに「ソフトバンクでんき」提供の狙いが説明された。

 発表内容については、別記事(※関連記事1関連記事2)を参照いただきたい。

 質疑応答の場に登場したのは、ソフトバンクの宮内謙代表取締役兼CEOと、東京電力 カスタマーサービス・カンパニー アライアンス推進室長の眞田秀雄氏と、ソフトバンク エナジー事業推進本部 執行役員本部長の馬場一氏。

左から、ソフトバンク馬場氏、宮内社長、東京電力の眞田氏

――ソフトバンクと東京電力とが手を組んだ理由は?

宮内氏
 一番は東京電力は電気の供給能力がすばらしいという点。発送電分離やリニューアルエナジーなど、新しい取り組みを行っていること。さらに、業界で一番大きい企業であることによって、東電と組むことによって自由化でプラスになるのではないか、ということから提携を決めました。

眞田氏
 ソフトバンクをパートナーに決めたのは、ひとつは全国に対する営業力、もうひとつは、既存のものを組み合わせて新しい付加価値を提供する強い力を持っていることです。

――2011年の東日本大震災で原発事故を引き起こした東電と、原発事故以降自然エネルギーに力を入れてきたソフトバンクとの提携は矛盾があるように思えるが。

宮内氏
 確かに東日本大震災での原発事故は大変なものだと思います。ただ、安心で安全でお得な電気を提供するというなかで、この電気は売ってその電気は売らないということはできない。「FITでんき」で自然エネルギーを提供する一方で、それだけではまかなえないとも考えているので、今回の提供は矛盾はありません。

眞田氏
 我々も同様で、自然エネルギーに力をいれている一方で、東京電力の電気を使っていただくことにご理解いただいているので、なんら矛盾はないと考えています。

――ソフトバンクでんきだけで「バリュープラン」を提供した意図は?

眞田氏
 先週発表した「スタンダードプラン」と「プレミアムプラン」では電力使用量が少ないお客様向けと多いお客さま向けのプラン。その中間に相当するミドルレンジプランは、正直東電だけではカバーできていませんでした。ソフトバンクの通信を組み合わせることで、東電だけでは料金的なメリットを出せなかったミドルレンジもカバーできました。

――サービスエリアの拡大予定は?

宮内氏
 サービスエリアはまずは東名阪から。できれば、今期の半ばには全国ベースでまで拡大していきたい。東電とでは届かないエリアでは、他の事業者とのタイアップも考えられます。

――「おうち割」の第2弾以降はどういった製品を考えているのか、2017年に自由化される都市ガスも視野に入れているのか。

宮内氏
 今日は第1弾だが、エネルギー関係で自由化されたものについては取り組んでいきます。例えばオンラインショッピングのように、スマートフォンと組み合わせることでより便利になるものについては、エネルギー分野も含めて積極的にやっていきたいと考えています。

――キャリア間での差別化が難しくなっていく中で、キャリアショップは今後どう変わっていくのか。

宮内氏
 全国に3600店舗ほどあるソフトバンクショップやワイモバイルショップは、今では携帯電話を売るだけではなく、その使い方を教えた上で、eコマース(オンラインショッピング)の使い方を教えるような店になりました。

 今後IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)の世界が広がっていくなかで、スマートフォンはすべての中心となるリモコンのような存在になっていきます。そのような世界の中で、これからは、ソフトバンクショップがICTやeコマース、電気や光サービスをトータルでサポートする、そんな店に今後3年くらいで作り変えていくつもりです。

“ゼロ円販売の全部が全部を問題視しているわけではない”

 発表会後、宮内社長は囲み取材にも応じた。その中では年始に発表された総務省の販売適正化要請に関する質問もなされた。

――サービスが多様化する中でショップの負担が増えているのではないか。

宮内氏
 質疑応答の中でも話しましたが、ショップのコンセプトを変わっていて、今は新機種を何十種類も並べていく時代ではなくなっています。スマートフォンをどういう風に生活の質を向上させていくかを提案するかが重要になってきています。その中で、スマホアドバイザーや光アドバイザーといった、コンシェルジュのように提案ができる店員を養成しています。

 もう一点は、Pepperを接客に活用しようという取り組みを考えています。Pepperがお客様のご要望を聞いて、カウンターに座るころには7割方手続きが終わっているといったようなことを現在計画しています。

――競合他社も電気のサービスを提供してきたら、差別化はできるか?

宮内氏
 うーん、いろいろな知恵を絞ってことが大事になると思います。例えば、孫会長肝いりのPepper。最初のうちは疑問に思われてたでしょ。でも、企業や銀行に家庭と、普及しています。今日はその場ではないから詳しくは話しませんが、IoTやAIなど、新しい技術を組み合わせていくことによって生活全体の向上させる、なおかつコストを下げることができる。

 企業としても他の2社と比べてコストが安いです。なぜか。ITをむちゃくちゃ使っているからです。9年前からiPhoneを社員全員に配る、iPadを配る。そして使っているから、仕事のスピードがめちゃくちゃ速いです。スピードが速くなるからコストが下がる。

 ビジネスの機会だけでなく、コンシューマーの世界でも効率化の効果はあると思います。今皆さんの前で決定打を打ち出す、とはいえませんが、差別化は可能です。なぜなら、僕らの世界はICTの世界だからです。

――先日、総務省の要請を受けて「1GBプラン」を導入すると発表されたが、第2、第3の新プランを提供する用意はあるか。

宮内氏
 それよりも、長期ユーザーのみなさんに対して、まだ課題が残っています。そういった方々に向けての検討はしていきたいと思います。

 ただ、ソフトバンクで今提供しているプランで、ほぼすべてのユーザーのニーズに対応できると思います。複雑だともいわれますが、データを多く使うユーザーにはホワイトプラン、音声通話を多く使うユーザーにはスマ放題と選びわけることができます。現状でも、いい均衡になっています。

 ただ、確かに、「データはほとんど使わないけれどiPhoneを使いたい」という年配のユーザーも中にはいると思います。1GBで本当に足りるかどうかはわかりませんが、それ(1GBプラン)は作ったほうがいいなということで、作りました。

――長期ユーザーに対する割引は?

宮内氏
 今シミュレーションをしているところです。

――総務省からの「圧力」があのくらいで済んで、ほっとしているのではないか?

宮内氏
 圧力……。僕らの仕事というのは、顧客が喜んでもらわなくてはいけませんから、顧客の声が本当にあるのならプランを提供するということです。単に総務省に言われたからプランを出すといったようなことだけではないです。

――料金と端末の分離プランなど、抜本的なプランの改革を行う予定は?

宮内氏
 どのようなプラン改定が「抜本的」かはいろいろ考えられると思います。ホワイトプランにもスマ放題にも根強いニーズがあります。その中でどう変えていくかと、先ほど発表した「ギガ学割」のように学生さん向けに使えるパケット量を増やすといったようなことも、回答のひとつだと考えています。

――総務省が「ゼロ円販売」を問題視している中、学生などは買いにくくなるとも思うのですが、今後の端末販売はどうなるか。

宮内氏
 総務省もゼロ円販売の全部が全部を問題視しているわけではないと思います。ただ、10万円の端末が0円になったりとか3万円になったりとかしている中で、長期ユーザーの負担になっているのではないかという指摘は、確かに一理あると思います。

 でも、日本は世界で一番スマートフォンが安い国です。アメリカは料金と端末を完全に分離した販売制度を提供になっています。経営的に見るとうまいやり方だと思います。端末に割引が一切つかない代わりに、リーズナブルな通信料にするという形。

 実はワイモバイルは、通信料がリーズナブルな代わりに端末購入に割引が一切つかないという形になっています。ただ、いくらかは端末購入に割引がついていたほうが、ユーザーにとってのメリットも大きいと思っています。

――官製不況に陥るのではないかという懸念があるが。

宮内氏
 そこは知恵の使い方ではないでしょうか。スマートフォンになってから、さまざまなサービスを楽しんでいただくことで、価値は非常に高くなると考えています。そういった価値を感じていただくためのアドバイスをつけて提供することで、価格以上のサービスだと感じていただけるのではないかと。

石井 徹