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栃木県真岡市で220MbpsのWiMAX 2+、「電測ツアー」を体験してきた
(2015/2/20 21:54)
UQコミュニケーションズは20日、受信最大220MbpsのWiMAX 2+による高速通信を体感する電波測定ツアーをメディア向けに開催した。2月12日に全国に先がけてWiMAX 2+の周波数帯を40MHzへと拡大し、基地局のCA対応を果たした栃木県真岡市を舞台に、商用電波を用いたリアルタイムの実測データなどを披露した。
最大220Mbps以上を目指すWiMAX 2+の現状
1月に通信速度の倍化計画を打ち出し、まずはWiMAX 2+の受信最大速度を220Mbpsとして、将来的には440Mbps、1Gbpsへと速度向上を図るとしているUQ。これら高速通信の達成に向けたバックグラウンドには、WiMAX 2+が使用する周波数帯の拡大に加え、CA(キャリアアグリゲーション)と4×4 MIMOと呼ばれる技術がある。
CAは複数の異なる周波数帯を束ねることで高速化を図る技術であり、他社でもLTE-Advanced方式で、取り組みがすでに始まっている。また、4×4 MIMOは基地局のアンテナと端末側のアンテナを両方とも4本相当にすることで、データの同時転送数を従来より拡大する技術だ。既にUQでは2×2 MIMOは導入済だが、アンテナの数を増やしてさらに高速にする。UQの新しいモバイルルーター「Speed Wi-Fi NEXT W01」はCA(2波)に、「Speed Wi-Fi NEXT WX01」は4×4 MIMOにそれぞれ対応しており、どちらも受信最大速度は220Mbpsに達する。
ただし、2月20日現在、WiMAX 2+でCAを使える地域は先行提供エリアとして選定された栃木県真岡市のみ。対応機種の「Speed Wi-Fi NEXT W01」は1月30日に発売済みではあるものの、一般ユーザーのCA対応は3月末に予定されているファームウェアアップデート後となる。
また、4×4 MIMOは、対応機種の「Speed Wi-Fi NEXT WX01」が3月上旬発売、サービス自体も2015年3月末までに全国で一斉に開始するとアナウンスされている状況。いずれも一般ユーザーが使えるようになるのはもう少し先ということになる。
真岡市内はほぼ常時CAを維持。ピークは195Mbps
今回の電測ツアーは、そのCAが利用可能な国内唯一の地域、栃木県真岡市にて行われた。使用したのは特別にCA対応のファームウェアを搭載したテスト用のSpeed Wi-Fi NEXT W01(ハードウェアは製品と同等)。これを用いた通信速度の計測状況をリアルタイムにモニター表示し、真岡市内をバスで移動しながら速度の推移などを車内で観察した。
スタート地点は、近隣にある基地局からの電波がダイレクトに届き、さらに周辺の低層住宅によって反射波などによる多重波伝播(マルチパス)が生まれる、最もピーク速度の出やすい場所が選ばれた。真岡市のエリアはキャリアアグリゲーションと2×2 MIMOで220Mbpsを実現しており、マルチパスも高速化に繋がる。ここでは、モニターに表示された受信速度(TCP/IP通信時)が195Mbpsを記録。最大220MbpsのWiMAX 2+で、TCP/IP通信における速度としては理論上最大とされる196Mbpsに限りなく近い値だという。
一方、実速度を表す物理層の通信状況は、2波CAの仕組み上「プライマリーセル(Pcell)」と「セカンダリーセル(Scell)」に分かれる。電波状況は移動しなくても刻々と変化するため、これらの数値もめまぐるしく上下するが、スタート地点ではいずれも頻繁に100Mbpsを超える数値を示していた。合計した速度は200Mbpsをゆうに超え、時折220Mbps前後を記録するほど。
記者らを乗せたバスが移動を始めると、基地局から離れるだけでなくマルチパスの効果も薄くなるため、やや速度が低下したものの、基地局から1kmほど離れた場所でもCAを維持したまま100Mbps以上をキープ。基地局と基地局の電波の境目をまたぐ場面ではハンドオーバーが発生し、通信においては不利な状態に陥るが、それでもCAを維持したまま、数十Mbpsの速度で推移した。
同社執行役員技術部門長の要海敏和氏によれば、WiMAX 2+のCAは使用周波数帯が連続していることなどから、周波数帯が分離している他社のような「CAで接続できる時だけCAになる」処理とは異なり、「通常はCAの状態で、まれにCAが外れる」処理になっているという。そのため、実質的にCAで高速通信できる機会が多いのがWiMAX 2+のアドバンテージだとした。
基地局などとの位置関係と地形が重要。全国展開後も速度維持できるか
今回、バスで移動しつつ車内から計測するという条件ではあったが、どういった場所がCAで高速通信しやすいのか、ある程度理解することができた。たとえば、電波を直接受信しやすいよう基地局から適度な距離があること(基地局直下は逆に電波が届きにくいため不利となる)、マルチパスが形成されやすい低層の建築物、構造物(土手など)があること、という2点がCAにとっては重要となる。また、やや高台にある場所も電波が届きやすいようだ。
いくつかの基地局にハンドオーバーしながら真岡市内を3kmほど走行している間、通信速度が極端に低下することはほとんどなく、CAが外れたのも数えるほど。不利な場面でも数十Mbps以上を維持し、しかも100Mbps以上を記録する時間帯も多かった。WiMAX 2+のユーザーが1基地局当たり数名程度しかいない好条件であったことが測定結果に影響しているのは間違いないが、真岡市内においては当面はきわめて快適に通信できると言えるだろう。
しかし、今後CAや4×4 MIMOを全国展開していく中で、都市部の混雑する場所でもユーザーが満足できる通信速度を維持できるかは未知数。UQでは真岡市でCA対応する際に行ったように、都市部などでも基地局ごとの電波範囲を細かく調整することで最適な通信エリアを提供していくとのことだが、本格的なサービススタートとなる3月末以降も、今回のような安定した高速通信の恩恵にあずかれるかどうかがユーザー拡大のカギとなりそうだ。