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情報との接し方をデザインする、新INFOBARで示すauの向かう道

情報との接し方をデザインする、新INFOBARで示すauの向かう道

 KDDIは、1月24日、auの春モデルとして「INFOBAR A02」を発表した。KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏は、auの今後の方向性を示した。

 auは2012年1月、新スローガン「あたらしい自由。」の発表とともに、ブランドマークを刷新することを明らかにした。田中氏は、「剛力彩芽ちゃんとスマートパス構想をスタートし、なんとかやってこれた。今日は1年やってきて、次、auはどこに行くんだよ、という今年目指す雰囲気を紹介したい」などと語った。

KDDI田中氏

 INFOBARシリーズのコンセプトモデルは、2001年に披露された。2003年に初代のINFOBARが登場し、2011年にはスマートフォン版のINFOBAR A01が登場、2012年2月にはハードウェアキーを搭載したINFOBAR C01も発表された。INFOBARによってauは、携帯電話の世界にデザインを取り込んだ。田中氏は「お客に新しい選択の自由を提供した」と表現した。

本当にこれでいいのか?

 また、昨年12月の「HTC J butterfly」は、HTCとのコラボモデル第2弾として、冬モデルのフラッグシップ機となった。日本のユーザーが好む味付けがほどこされたスマートフォンとなっており、田中氏は「おかげさまで好評。いくつかの賞をとった」などと話した。

「でも、本当にこれでいいのかなと思っている」

 田中氏はそう語り、「私たちが欲しいモノ、もっと先のものが入っているのか。少し違うのではないか」と続けた。

写真左から、プロダクトデザインの深澤氏、KDDI田中氏、UI設計の中村氏

 「INFOBAR A02」は、情報があふれかえるクラウド時代において、スマートフォンのあり方を定義しようと試みたモデルとなった。田中氏は「次の世代は、情報との向き合い方をデザインしなければならないんじゃないか」と疑問を投げかけた。

 田中氏は「情報への接続をもっとシンプルに、よりリアルにしなければならない。情報の見え方がもっと自分らしく、自由にならなければならない」と話した。また「INFOBAR A02」について説明する中で、「リアルな世界に常に繋がっているような世界。なんとなくクラウドに触っているような感覚。指で画面にふれるたびに、さまざまな表情を見せる。アップデートすることで自分に近しい感じになる。本当の意味で“info”のバーにできたのではないか」などとアピールした。

スマホならではの機能が使いやすいように

 端末の詳細は、au design projectの時代からプロジェクトに携わるKDDIプロダクト企画本部 プロダクト企画1部の砂原哲氏が紹介した。

砂原氏
プレゼンの模様

 同氏は、INFOBAR A02について「最初は大きいなと感じるかもしれない。A01やC01はスマートフォンとフィーチャーフォンの良いとこ取りをしようと作った。今回のA02は、写真や音楽、SNS、電子書籍といったスマートフォンならではサービスがより使いやすくなるよう作った」と話した。

 さらに、INFOBAR A01のユーザーから、バッテリーの持ちが悪くパフォーマンスが悪いといった指摘を受けたとして、「今回はそれを全て解消していこうと思う」と語った。

 砂原氏は、ユーザーインターフェイスに採用された印象的な動作について、「ゼリーのような有機的な動き」と表現した。また、パネルを動かすと聴けるガムランボールの音色については、8つの音が重なるようにプログラムされているなどと説明した。

 今回、ピンチアウト操作でパネルが設置できるようになったほか、写真は、ローカルに保存したものだけでなく、アルバムを貼り付けたり、FlickrやFacebookアルバムといったネット上の画像も設置できると紹介された。新しいiida UI(iida UI 2.0)は、「自己表現できるユーザーインターフェイス」という。

デザインはユーザーが作る、新しいINFOBAR

 発表会の後半には、プロダクトデザイン手がけた深澤直人氏、ユーザーインターフェイスを手がけた中村勇吾氏、auの砂原氏を交えてトークセッションが行われた。

 深澤氏は、今回のINFOBAR A02について、モナカとアンコの関係ではなく、今回はヨウカンであるとした。同氏は、「工業デザインは箱を作って中身を作るが、それは元々求めているわけではない。専門的に言うとUCM(User Conceptual Model)というが、ユーザー概念モデルをまず浮かび上がらせてデザインしていこうと考えた。外と中身ではなく、外も中も中身の感触までも全て一体にデザインしようと、中村さんと一緒にパートナーを組んでやった」と話した。

 さらに、「2001年に最初のコンセプトモデルを作った時にタイルキーを作ったが、それもシームレスなキーを作って一体型にしようと考えたからで、その時からすでにヨウカンを目指していた。今回はハードキーが必要なくなってきたこともあって、サイドのファンクションキーで片手操作を簡単にしようと話をはじめて、その中でこれまでのINFOBARの色や機能盛り込んでシンプルに仕上げた」とした。

 「iida UI 2.0」では、端末スクロール時など柔らかい印象の演出が加えられ、発表会では「プニプニ感」と表現されていた。中村氏は新しいUIの魅力について、「プニプニした動きを作ったのは、そもそもユーザーインターフェイスの中に新しい感触や質感を立ち上げたかった」と切り出した。

 同氏は「四角いパネルにゼリーの物理的な挙動をシミュレートするアルゴリズムを組み込んだ。表面的には四角形だが、その奥に物質的な特徴が入っている。質感や感触は昔からプロダクトデザインで取り入れていた。つるっとしていたりとか、ザラっとしていたりとか、いろいろな質感が最終的なたたずまいを決めていると思う。スマートフォンが成熟化してきて、だいたいやりたいことが達成できるようになった。プロダクトデザインがやっていたように、やっぱりそれ以上のたたずまいとか質感というものをユーザーインターフェイスで作ろうとした」と話した。

 砂原氏は、「プロトタイプの頃に将来への期待として、動画や音楽ができたらいいなと想定していたが、ほぼそのときに考えていたことが技術的な進化でスムーズにできるようになった。普通の人でもフィーチャーフォン時代とは全く違うクオリティでできるようになった。技術が好きな人がハイエンドのモデルを、という話もあるが、普通の人がサービスを使いやすいスペックとはなんなのか、インターフェイスってなんなのか、デザインはなんなのかを考えた」とした。

 深澤氏は「ユーザーがデザイナーの中に入りこんでいく」と話し、使ううちに自分らしい形ができていく電子機器は細胞のかたまりのようなものであるとした。中村氏もiida UIについて、「その人の個性がにじみでるようなもの」と紹介、「自分でデザインするスマートフォンですよ、と考えて欲しい」と話した。深澤氏は、プロダクトデザインとユーザーインターフェイス、そしてサウンドデザインのコーネリアスによって、INFOBAR A02は「五感で吸収できる」などと表現した。

質疑応答、囲み取材

 ドコモの発表会では複数モデルが発表され、春の商戦期に向けて品揃えを拡充する姿勢が見られた。しかし、今回のauの発表会では、ブランド力があるモデルとはいえ、発表されたモデルはINFOBAR A02の1モデルだけだった。

質疑応答。写真右が尾崎氏
囲み取材に対応する田中氏

 KDDIの田中氏は、この点について「ドコモさんがたくさんの機種を出したが、他社がどうのこうのという考えはあまりない。今の時期、年末に春モデルを出しており、次の我々のコンセプトを提案する時期なんじゃないかという想いで1機種で発表会を行った。本当に春になれば、また新たな展開も発表することになると思う」と語った。

 また、発表会で田中氏は、今回のINFOBAR A02が今年のauを象徴する方向性を指し示すモデルであるとした。新しくiida UIが発表されたが、ほかの端末への採用はあるのだろうか。田中氏は「現時点ではINFOBARだけ。未来のことは今なんとも言えない」と話すに留まった。

 スマートフォンが中心となってからというもの、iidaブランドは影をひそめ、INFOBARのブランドを使った端末投入が目立つようになった。iidaブランドはauの中でどういう位置づけになるのだろうか。

 KDDIのプロダクト企画本部プロダクト企画1部 部長の尾崎高士氏は、「考え方としては、iidaプロジェクトの一環として商品を提供している。INFOBARブランドをもう一度周知するため、今はiidaというブランド名を表に出さないようにしている」と話した。田中氏は「ラインナップという平面的な広がりではなく、タイムラインというか、時間も入れた形で新しいブランドを作っていきたいと想っている。今、INFOBARはauブランドの中にラインナップしている」と述べた。

 INFOBARの製造メーカーは鳥取三洋からシャープへと変更され、今回はHTCとなった。囲み取材でこの理由を聞かれた田中氏は、「我々がやりたいことを実現できるメーカーを選んだだけ。ほとんど中身はKDDIでやっている」と話した。

 このほかiPhoneについて、グローバルで当初販売計画がにぶっているとする記事についてコメントを求められると、「KDDIはむしろ上ブレしている。そういった実感はない」とコメントした。

1月25日より東京と名古屋で先行展示

 なおKDDIでは、1月25日より、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオ、名古屋のau NAGOYAにおいて、INFOBAR A02の先行展示を実施する。

 また、au NAGOYAでは、2月3日14時より、開発担当者がINFOBAR A02の魅力を紹介するセミナーも開催される。

津田 啓夢