富士通、動画を撮るだけで情報を取得できる技術を開発
富士通研究所は、映像を携帯電話・スマートフォンのカメラアプリで撮影するだけで情報を取得できる技術を開発したと発表した。広告クライアントなどに向け提供するもので、2013年度中の実用化を見込んでいる。
情報が埋め込まれた映像を専用アプリで撮影。映像自体に特殊な効果は見られない(知覚できない) | 情報を取得、クーポンが表示された |
今回開発された技術は、人間の目では知覚できない光の明滅を映像に埋め込み、それを携帯電話のカメラを利用して専用アプリで撮影することで、埋め込まれたURLなどの情報を取得できるというもの。この技術では、映像にノイズが混ざるといった映像の劣化は抑えられているほか、画面全体を利用するため、画面から2~3mの離れた場所でも利用できるのが特徴。光の明滅として埋めこれまれた情報を取り出す専用アプリが必要になるが、QRコード読み取りアプリのように、カメラのファインダーに映像をとらえる時間は2~3秒程度で済むようになっている。
ユーザー側の利用例として、テレビのCMを撮影すると情報サイトや販売サイトにすぐにアクセスできたり、デジタルサイネージとして街中で流れている映像を撮影するとクーポンや店舗情報を取得できたりといった用途が想定されている。
富士通研究所ではこの技術をプラットフォームとして開発しており、ソフトウェアを広告主や広告代理店などに提供する。クラウドプラットフォームとして、動画をアップロードし設定すると、この技術が埋め込まれた動画に変換できるといった形態での提供も予定されている。また、埋め込まれたURLなどの情報から、具体的にどのWebサイトにアクセスするとかといった部分は変更できるようになる見込みで、キャンペーンや期間限定コンテンツへの利用にも対応する。
埋め込める情報は現時点では16bpsで、実用化までには、複数の周波数を用いるなどして32bps以上の実現を見込んでいる。
富士通研究所 主管研究員の阿南泰三氏 |
4日に開催された記者向けの発表会で、富士通研究所 主管研究員の阿南泰三氏は、現在のテレビなどの映像メディアと携帯電話・パソコンなどのインターネットが「ダイレクトにつながっていない」と課題を指摘し、映像にURLなどの情報を埋め込み、カメラを向けるだけで受信できる今回の技術が、既存の技術の問題点を克服したものになっていることを紹介した。
具体的には、光の明滅をなめらかに行うことで、人間の目には知覚できない(=映像品質が変わらないように見える)レベルにし、0と1を表す2種類の明暗を利用する。これをデジタルデータとして、携帯電話などの専用アプリで分離し取り出せるようにしている。1秒間に7.5回の明滅が行われるとのことだが、現在のディスプレイは全体をなめらかに明滅させることが難しいということもあり、画面全体を明滅させるのではなく、画面内で小さな点を明滅させ、その点の数の増減で画面全体のなめらかな明滅を生み出しているという。いずれにしても肉眼で見ている限り知覚は難しく、公開されたデモでも、普段の映像となんら変わらないように見えた。
なお、てんかんなど光の明滅に起因する症状に対しては、すでに研究を行い、知覚できない明滅であることからてんかんを引き起こすことはないとしている。
■プレゼンテーション
2012/6/4 13:28