リアルとネット書店、電子書籍も連携する「honto」刷新
小城氏 |
トゥ・ディファクトの社長 小城武彦氏は、リアル書店とバーチャル店舗、電子書籍配信サービスなどを統合した総合書店サービス「honto(ホント)」について説明した。
■電子書籍、ネット書店、リアル書店が連携
「honto」は、トゥ・ディファクトと大日本印刷(DNP)、NTTドコモ、丸善CHIホールディングスによる総合書店サービス。5月17日にリニューアルが行われ、ドコモのスマートフォン向け電子書籍配信サービス「2Dfacto」は、他キャリア版およびパソコン版と共通の「honto」に名称が変更されるとともに、ネット書店「ビーケーワン(bk1)」も統合された。
なお、トゥ・ディファクトはドコモとDNP、丸善CHIによるジョイントベンチャーで、社長の小城氏は丸善CHIの社長を兼務している。リニューアルによって、hontoはネット書店と電子書籍配信を手がけるでなく、丸善傘下のリアル書店(MARUZEN、ジュンク堂書店、文教堂)との連携が強化される。
リアルとバーチャル店舗で共通のポイントカードが導入され、ポイント付与だけでなく、リアルで購入した書籍もバーチャル店舗で購入した書籍も、また電子書籍も統合されたバーチャル本棚が導入される。honto対応のリアル店舗で購入した本が自動的にこのバーチャル本棚に登録される。
■本格的なCRMを書店へ
会員システムの導入によって、書店には本格的なCRMシステム(顧客管理システム)が用意されることになる。小城氏によると、書店では店舗レジで購入された書籍のデータを得て、ある書籍の購入者は別のある書籍を購入する傾向にあるといった購買動向を得ているという。
しかし、「ほとんどCRMはやっておらず、会員に情報を送るにしても一斉に同じものを送る」と指摘。会員システムの導入により、ユーザーの嗜好性が強い書籍や雑誌において、顧客単位でのマーケティングデータが得られることになる。
小城氏は、米国よりも書店数が多く1書店あたりの人口カバー率が米国の4倍ある国内の状況と購入先の多くが書店である点を説明。ネットを利用したアンケート調査の結果を公表し、購入先が「書店と通販の両方」が52.3%、「書店のみ」が40.4%となる一方で、「通販のみ」は5.7%とした。
また、電子書籍購入者の調査結果も公表し、電子書籍購入後、紙書籍の購入頻度は「変わらない」が73.8%、「やや減った」「減った」「購入しなくなった」がそれぞれ7.1%(合計21.3%)、「やや増えた」が4.8%だったとした。
出版不況が叫ばれる中、リアル書店が現在も数多く存在し、電子と紙が併用されている。小城氏は「日本は併存型いいだろう」と述べ、トゥ・ディファクトがハイブリッド型書店を指向する理由を説明した。
さらに、CRMに強いとされるネット書店は、リコメンド力や検索性に分がある一方で、リアル書店での購入データが反映されないとする。前述した本棚サービスのほか、書店員のオススメやレビュー、そしてリアル書店における顧客単位の購買動向が得られる点のほか、ユーザーの嗜好に合わせてサイン会情報を提供するなど、顧客単位での提案力を「リアル書店を持っている我々ならではの展開」と語っていた。
海外では、流通大手のAmazonが電子書籍サービスが展開され、日本参入の噂もある。小城氏は、米国と日本では書籍環境が大きく異なるとし、生活者の読書スタイルを尊重した購入しやすい環境を提供するとした。発表会後の囲み取材では、「全て利用者が判断する」とした上で、読書スタイルは国毎に大きく異なり、国内のニーズに合わせる形の方が利便性が高いとの見方を示していた。
「honto」では、店舗の在庫検索および書籍の取り置きサービスを年内にも展開する予定。すでに仕組みはできており、準備段階にあるという。また、紙書籍と電子書籍のハイブリッド商品なども計画しているという。自宅では紙の書籍、移動中は電子書籍といった利用方法や、在庫切れ商品や通販商品などに、商品が届くまで電子書籍を先に提供するなど、紙と電子の連携商品が企画されており、出版各社に提案中という。
最後に小城氏は、「電子書籍は紙からの置き換えではない」とし、「もっとすばらしい読書スタイルを提供していきたい」と語った。
2012/5/18 16:59