ドコモ決算は減収増益、スマートフォンやSIMロック解除に言及


ドコモの山田氏

 NTTドコモは、2010年度第3四半期連結決算を発表した。2010年4月~12月までの累計期間における営業収益は前年同期比1.0%減の3兆2091億円、営業利益は7.9%増の7585億円、税引前利益は6.7%増の7486億円、当期純利益は5.9%増の4440億円となった。

 NTTドコモの山田隆持社長は、「第3四半期は、我々の主要目標を着実に達成する内容になった。減収増益の結果だが、営業利益の進捗率は90.3%に達した。第4四半期はスマートフォンの販売増加により、販売手数料の増加が見込まれることから、営業利益の通期目標は変えない。第3四半期は、成長、サービスレベル向上、コストコントロールという取り組みがうまく並立した」と総括した。

 山田社長が成果としてあげた3つのポイントのうち、「さらなる成長に向けた取り組み」としては、「着実に進捗した」とコメント。第3四半期までの累計でスマートフォンの販売台数が126万台に到達。パケット収入も累計で前年同期比766億円増、新規事業分野が含まれる「その他の収入」でも、前年同期比546億円増となった実績に言及。また、「サービスレベルの維持・向上」では、お客様満足度第1位を、個人部門、法人部門、データ部門でそれぞれ獲得したことや、解約率が0.46%と低い水準に留まったこと、2010年12月24日からXi(クロッシィ)サービスを新たに開始したことなどに触れ、「2008年10月に、ドコモが一人負けといわれていた時期に、中期ビジョンを策定し、3年がかりで顧客満足度ナンバーワンを目指してきた。それを達成できた」などとした。



 「適切なコストコントロール」としては、端末販売費用が第3四半期累計で前年同期比424億円減、ネットワーク関連コストが同じく453億円減、設備投資は162億円減となったことなどを示した。

 一方、基本使用料を50%割引きとするサービスの契約率は8割を超えたことで、収入減への影響が軽微になったとし、バリュープラン契約率は68%に到達したことを報告した。山田氏は、「バリュープラン契約数における収益へ影響はあと1年は続くだろうが、契約数の拡大は継続している」と語った。



ARPU

 総合ARPUは、前年同期比340円減の5130円。そのうち、音声ARPUは440円減の2590円、パケットARPUは100円増の2540円となった。

 「音声ARPUは、2年繰り越し制度の引当金方法の見直しがあり、その影響が110円ある。そのため実質330円の減少だと考えている。そのうちバリュープランの影響が150円程度とみている。一方で、パケットARPUに関しては、第1四半期には80円増、第2四半期には90円増、第3四半期には100円増となっており、着実に増加している。年間110円という、『あり得ない』といわれるほどの挑戦的な数字を掲げたが、そこに到達しないとしてもパケットARPUの増加傾向は大きな成果といえるものだ。スマートフォンの普及におけるパケット利用増加が背景にあるが、その一方でiモードのミドル/ライトユーザーの押し上げが予定よりは少なかったのが反省点といえる」などとした。

MNPの転出超に懸念

 総販売台数は、第3四半期累計で前年同期比4.4%増の1359万台となった。純増数は35%増の113万台となり、「純増数の拡大は、大きな課題として取り組んでいく」と語る。

 山田社長は、「第3四半期の課題をあげるとすれば、番号ポータビリティと純増の2点」とし、「番号ポータビリティは、転出超となっており、これはiPhoneの影響が大きい。10月~12月にかけて転出超の数は減少しており、良いスマートフォンを出すことでこれからさらに減少してくるだろう。番号ポータビリティの転出超がゼロになれば純増数が増加する」などと述べた。

 また、FOMAおよびXiへのマイグレーションは順調に推移しており、12月末時点でのmovaの契約者数は164万。全体の2.9%となった。



Xi基地局は今年度中に1000局

 さらに、データ通信の販売数では、「通期の70万という目標に対して、堅調に推移。データプランの契約数は150万の通期目標に対して、134万契約となっている」と語ったほか、「来年度早々には、LTEに対応したモバイルWi-Fiルーターを発売する予定であり、端末のラインアップも強化する」とした。

 LTE(Xi)に関しては、2010年度から2012年度までに合計約3000億円の整備投資を行い、2015年度には人口カバー率が約70%となる約3万5000局に基地局を拡大する計画に改めて言及。「今年度中には、東京、名古屋、大阪で約1000局の基地局設置を目指すが、現時点で700局を開設しており、順調に進捗している」と述べた。2014年度にはLTEサービスで1500万契約を目指す考えで、「ドコモの契約者のうち、4分の1が加入する規模になる」との目標を示した。

 電子書籍サービスについては、「2011年春までにコンテンツを約10万点に拡充。今後は、ブックリーダーに加えて、さまざまなスマートフォンにも対応していく」という。

12月のスマートフォン販売、半数近くがドコモ

 一方、今回の会見では、スマートフォンに対する発言が相次いでいたのも特徴だ。第3四半期までの累計で126万台を販売したとしたほか、12月単月では45万台を販売。さらに12月のスマートフォンの販売台数シェアはGfKジャパンの調査で半分近いシェアを獲得し、首位になったと語った。

 「先週日曜日(2011年1月23日)までで150万台に到達した。ラインアップを増やしたことによる成果だといえる。今年度中にあと100万台積み増しを行い、年間250万台の販売を目指したい」(山田社長)とした。

 これまでにXperiaの累計出荷は60万台強、Galaxy Sの累計出荷は30万台強を販売したという。

市場急拡大、2011年度にもスマートフォンは600万台前後に

 現在、冬春モデルとして、Galaxy Tabを含む6機種のスマートフォンを発売しており、近いうちにタブレット型端末を新たに投入する。1月19日にXperiaの機能をバージョンアップしたことも、販売に弾みをつけるとみている。ドコモでは、3~4月にかけてLYNX 3Dを、4~5月にかけてREGZA PhoneをAndroid2.2へバージョンアップする計画だ。

 「スマートフォンの販売規模は、当初は年間130万台程度とみていたが、それが2倍近い数字となっている。2011年度はさらに2倍プラスαの規模が想定され、600万台前後になるだろう。NTTドコモの新規販売台数は年間1800万台であり、そのうち600万台をスマートフォンが占める計算となる。さらに、端末数で捉えれば、2011年度には半分程度がスマートフォンになると考えている。販売台数でスマートフォンとフィーチャーフォンが逆転するのは2013年とみていたが、これは2012年度になりそうだ」と、スマートフォン市場の急激な拡大を予測した。

 さらに、同社では、ドコモマーケットでのコンテンツの充実や、ドコモ地図ナビを2011年10月31日までスマートフォン向けに無料で提供すること、スマートフォンを購入しやすくする「月々サポート」および新たな「パケット定額サービス」を用意。また、学生向けには、「応援学割キャンペーン」を用意して、学生向けのスマートフォンの販売を加速する。

 「これまで端末購入時点に一度に割り引きをするものだったが、月々サポートでは、端末は正規価格で購入してもらい、月々の請求額から割引をする。新料金体系により、来期以降、200~300億円の影響があるだろうが、使ってもらうことで、あとから収入を得ること、割引の平準化ができ、柔軟な価格設定が可能になるなどの効果がある。また、応援学割キャンペーンは、中学から高校へあがる際に、スマートフォンに変更したいという学生が多く、それに対応したものになる」などとした。



4月1日以降、全モデルにSIMロック解除機能搭載

 さらに、今回の会見では、SIMロック解除に向けた取り組みについても言及した。

 山田社長は、「2011年4月1日以降に発売する機種は、スマートフォン、フィーチャーフォンを問わずに、すべての機種でSIMロック解除機能を搭載する」とし、「ドコモショップで申し込みいただき、iモードが他のキャリアでは使えなくなるなどの重要事項の説明に対して同意していただいた上で、SIMロックの解除を行う」とした。

 SIMロック解除機能を搭載における検討事項として、SIMロック解除時の説明事項の整備、SIMロック解除後の端末動作に関する参考情報の公開、故障時にどちらのキャリアが対応をするのかといった事業者間体制の整備などが必要だと指摘した。

 なお、ソニー・コンピュータエンタテインメントの新ゲーム機「NGP」において、NTTドコモの3G回線が利用できるようになるのではないかとの質問に対しては、「通信と放送の融合、通信と自動車の融合、通信と家電の融合など、これからは融合が重要になり、そこに力を入れたい」としたが、「個別の機種に関する件は、ご容赦いただきたい」と明言を避けた。


 

(大河原 克行)

2011/1/28 19:34