NEC、フルキーボード搭載のAndroid端末「LifeTouch NOTE」
LifeTouch NOTE |
かつてのモバイルギア(左)とLifeTouch NOTE(右) |
NECは、QWERTYキーボードを備えるノートパソコン風のAndroid端末「LifeTouch NOTE」を発表した。Wi-Fi対応版(ストレージ容量の違いで2モデル)が3月10日に、FOMAハイスピード対応版が4月下旬に発売される。
「LifeTouch NOTE」は、ソフトウェアプラットフォームにAndroid 2.2を採用したノートパソコン型のモバイル端末。1月に米国で開催された展示会「International Consumer Electronics Show(CES)」で展示されたモデルで、いわゆるスマートブックにあたる製品となる。
かつて同社では、キーボード付きのモバイルデバイス「モバイルギア(Mobile Gear)」シリーズを展開。「LifeTouch」をAndroid採用端末のブランドとして、今回の「LifeTouch NOTE」はモバイルギアシリーズには含めていないものの、製品開発の発端はモバイルギアにあった、とする。パソコン通信が盛んだった1990年代中頃に登場したモバイルギアシリーズは、約5年間で60万台程度の販売を記録。しかし、PDA市場そのものが日本では崩壊状態となり、NTTドコモから「シグマリオン(sigmarion)」のような機種が登場したものの、フルキー搭載のモバイルデバイスは姿を消した。
携帯電話の普及を経て、スマートフォンやタブレット、モバイルWi-Fiルーターなど、新たなモバイル機器で市場が活気づく中、Androidという新たなソフトウェアプラットフォームの登場に後押しされ、かつてのモバイルギアが担っていた、スピーディに利用できるコミュニケーションツールを復活させる――そのような考えで開発されたモデルが「LifeTouch NOTE」となる。
NECでは、スマートフォンよりも大画面で、タブレットよりも入力しやすい端末という、新たなカテゴリーの製品に位置付ける。スマートフォンそのままの部分と独自の工夫を組み合わせ、高いITリテラシーを持つユーザー層だけではなく、インターネットを利用する幅広い層に向けた機種としている。
ピアノブラック | バーミリオンレッド | チョコレートブラウン |
■パソコン同等のキーボード、方向キーと同等のポインティングデバイス
フルキー搭載 |
最大の特徴となるキーボードは、いわゆるQWERTY配列となり、ファンクションキー(F1~F10)や方向キー、Ctrlキー、Altキーなどを備える。キーピッチは16.8mm、キーストロークは1.6mmで、タッチタイピングする際はパソコンと同等の感覚で入力できる。
Android端末特有のMenuキー、検索キー、Homeキー、Backキーはキーボード右上に配置されている。Menuキーはキーボード左にも配置されており、計2つ用意されている。設定メニューや各種アプリのアイコンが並ぶメインメニューは、デスクトップ画面右のメニューボタンをタッチして呼び出せる。
文字入力時には、Menuキーとxで「切り取り」、同じくMenuキーとcで「コピー」といったショートカットが利用できる。後述する独自アプリ「ライフノート」では、Windowsパソコンと同じように、Ctrlキーとの組み合わせのショートカットも利用できる。キー左のMenu、Fn、Ctrlはそれぞれキーバインド変更に対応し、ソフトウェア的に場所を入れ替えられる。
日本語変換にATOKが採用されており、パソコンのATOK用ユーザー辞書を「LifeTouch NOTE」へコピーして一括登録することもできる。英数・かな・記号・漢字が入り交じった文字入力もサポート。たとえば「いろn」と入力して、Spaceキーを押せば「異論」と漢字に変換し、F6キーでひらがな、F7キーでカタカナ、F8キーで半角かな、F9キーで全角英字、F10キーで半角英字となる。Tabキーを押せば、予測変換となり「異論」「いろいろ」「いろんな」などの候補が表示される。
■Android 2.2対応、独自アプリ「ライフノート」搭載
ライフノート |
ソフトウェアプラットフォームにAndroid 2.2を採用し、Flash Player 10.1をサポートする。Wi-Fi版はグーグルの認証を得ており(FOMAハイスピード対応版は認証取得予定)、Androidマーケットが利用できる。タッチパネルやGPS、電子コンパス、加速度センサー、アウトカメラと、スマートフォンにも搭載される各種機能が用意されていることから、多くのスマートフォン向けアプリが利用できると見られる。
NEC独自のアプリ「ライフノート」は、「LifeTouch NOTE」のフルキーボードを活かす目的でにプリセットされるテキストエディタ。文章入力後、「Menuキー」→「送信」を選択すると、「メール」か「ブログ/SNS」のどちらかを選択できる。このうち「ブログ/SNS」は、事前にSNSや各種ブログサービスのアカウント情報を登録しておけば、文章入力後、すぐ投稿できるというもの。BIGLOBEやライブドア、Ameba、seesaa、mixiなど、メール投稿のAPIが開示されている主要サービスに対応する。なおFacebookは非対応で、ユーザー自身の手でアカウント設定を追加することはできない。メール投稿が可能なサービスであれば、「メール」のほうから送信できる。
「ライフノート」で入力した文章を保存すると、パソコンのようなファイル1つではなく、ブログのようにひとまとめにされる。執筆中に、写真を撮影して貼付することもできる。
「ライフノート」で利用できるショートカット、キーアサインは以下の通り。
- Delete:後ろの文字を削除
- Shift+方向(カーソル)キー:範囲選択
- Ctrl+a:全選択
- Ctrl+x:カット
- Ctrl+c:コピー
- Ctrl+v:ペースト
- Home(Fn+左):文頭移動
- End(Fn+右):文末移動
- Fn+↑:前の記事へジャンプ
- Fn+↓:後の記事へジャンプ
日本語フォントとしてNECの「FontAvenue」が採用されるほか、オフィス文書対応のビューアーアプリ「Catalyst Mobile Reader」がプリセットされる。また、独自アプリでメーラーの「ウェブリメール」やTwitterクライアントの「ついっぷる」は横画面表示にあわせ、2ペイン表示をサポートする。
このほか、BIGLOBE運営のポータルサービス「andronavi」も利用できる。同サービスでは、信頼性の高いアプリ、電子書籍などのコンテンツが提供される予定という。
対応する各種Web左 | アカウント設定 |
ショートカットも利用できる | メールの1つとしてEvernoteなどへデータを渡せる |
■ハードの特徴、価格帯
NVIDIA製のデュアルコアプロセッサ「Tegra 250」(1GHz駆動)を採用し、HD動画の再生など高い処理能力を誇る一方、モバイルデバイスに適した低消費電力も実現している。Wi-Fiモデルにおけるバッテリー駆動時間は、Webブラウジングで約9時間、動画再生で約8時間、YouTube動画再生で約7時間となる。
ストレージは、FOMAハイスピード対応版の「LT-NA75F/1A」と、Wi-Fi対応版のうち「LT-NA75W/1A」は内蔵メモリが8GBで、8GBのSDHCカードが装着され、計16GBとなる。またWi-Fi対応版の「LT-NA70W/1A」は内蔵メモリが2GB、同梱のSDカードが2GBで計4GBとなる。なお、内蔵メモリのうち600~700MBはシステムに占有される。SDHCカードスロットは最大32GB対応で、ユーザー自身が別途購入したSDHCカードに差し替えて利用することもできる。
Bluetooth、GPS、電子コンパス、加速度センサー、Wi-Fi(IEEE 802.11n/b/g)が利用できる。複数のWi-Fiアクセスポイント(FOMAハイスピード対応版はドコモ回線含む)を登録し、そのうち最適な回線へ自動的に切り替える機能が用意される。
FOMAハイスピード対応版の回線契約は、ユーザー自身が行う形となり、NTTドコモの定額データプランやプロバイダ契約が必要となる。対応周波数は2GHz帯と800MHz帯。FOMAハイスピード対応版がWi-Fiアクセスポイントとなる、いわゆるテザリング機能は利用できる。ドコモのspモードやドコモマーケットは利用できない。
ディスプレイは7インチ、800×480ドットで、タッチ操作が可能となっている。ただし、静電式ではなく抵抗膜式でマルチタッチは利用できず、タッチペンが用意される。200万画素カメラ搭載で、最大11cmの近接撮影が可能となる。
【お詫びと訂正 2011/02/16 21:00】
記事初出時、3Gモデルの対応周波数に誤りがございました。正しくは2GHz帯と800MHz帯です。お詫びして訂正いたします。
大きさは234×138×25mm、重さはWi-Fi版が約699g、FOMAハイスピード対応版は未定。ディスプレイ周辺やキー周辺はブラックに統一され、Wi-Fi対応版でストレージ容量が計4GBの「LT-NA70W/1A」の天板はピアノブラックのみとなる一方、ストレージ容量16GBの「LT-NA75F/1A」と「LT-NA75W/1A」は天板のカラーバリエーションとして、ピアノブラックのほか、バーミリオンレッドとチョコレートブラウンも用意される。
オープンプライスだが、店頭価格は、FOMAハイスピード対応版の「LT-NA75F/1A」が5万5000円前後、Wi-Fi対応版のうち総ストレージ容量が16GBの「LT-NA75W/1A」は4万5000円前後、同じくWi-Fi対応版で総ストレージ容量が4GBの「LT-NA70W/1A」は4万円前後になる見込み。
LifeTouch NOTEではandronaviでお勧めコンテンツを紹介 | フルキーボードが特徴 |
ATOKも搭載 | チップセットはTegra2 |
■年間10万台目指す
NECは15日、都内で「LifeTouch NOTE」発表会を開催した。壇上に立ったNEC支配人兼パーソナルソリューション事業開発本部長の西大 和男氏は、NECの社是としてクラウドコンピューティングを掲げているとして、「ユーザーと繋ぐクラウド端末は成長領域として取り組んでいく」と宣言。このクラウド端末には、パソコンやスマートフォン、広くはサイネージまで含むとして、「しっかり伸ばしていきたい。これまではPCと携帯電話の中間にある、中間領域と呼んでいた分野だが、最近はタブレットやスマートブックと呼ばれることもあるが、単に中間に位置するだけではなく、用途も広がり、用途ともに提案できれば拡がるのではないかと考えている。どういう方に使っていただけるか、4~10インチのデバイスを開発する」と意気込みを見せた。
NECの西大氏 | NECの渡邊氏 |
NECにおけるクラウドへの取り組み | クラウドデバイスとして位置付けられるLifeTouch |
一時は、かつての「モバイルギア」というブランド名での発売も検討したとのことだが、社内での議論を経て、クラウドデバイスは「LifeTouch」というブランドに統一すべきと判断したという。昨年11月には、他事業者を介してユーザーに提供する(B2B2C)タブレット端末「LifeTouch」を初号機としてリリースしており、Androidそのままではなく、無線LAN設定の手軽さなど使いやすさに注力するなど、NECなりのカスタマイズを行ってクラウドデバイスを展開する方針だ。1月に米国で開催された展示会「International CES」では、2画面デバイスの「LifeTouch W」も参考出展されれており、今回の発表会場でも、商品化に向けて開発中として、CES時点からアプリの日本語化程度の変更を加えたものを参考出展として、展示していた。画面を縦長にして、電子書籍や電子教科書として利用することが想定されているが、今後、さらにアプリの作り込みが行われる予定。参考出展ながら「LifeTouch W」も、新たな提案を含めたクラウドデバイスの一環ということにある。
そして今回発表された「LifeTouch NOTE」は、クラウドデバイスの中でもタブレットのように“情報を消費する端末”ではなく、“コンテンツをクリエイトする端末(NECパーソナルソリューション事業開発本部の渡邉 敏博氏)”として開発された製品だ。パソコンはより多くのことができる汎用性が高いデバイスであるものの、バッテリー消費などの面でモバイル用途としてはやや心許ない面がある。フルタッチ型が主流のスマートフォンは長文を作成するには不向きで、パソコンとスマートフォンの中間に位置するスマートブックとして、文章入力を得意とするデバイス、ということになる。
NECとしては、さまざまなクラウド端末を手がける方針で、Androidについても最新バージョンをキャッチアップする考えだが、今回のLifeTouch NOTEに限っては、Android 2.2に最適化しており、バージョンアップの予定はないとのこと。囲み取材において西大氏は、他の製品群と差別化するためにもキーボード付きという、一定ニーズに特化した製品作りをまず行ったと説明していた。
業務向けの用途もセキュリティ面での取り組みを含め、検討しているとのことだが、まずは一般ユーザー向け製品として、ネット通販や家電量販店で取り扱われ、NECでは今後1年間で10万台の販売を目指す。3G対応モデルについては、NTTドコモのSIMロックが施されたものとなり、ユーザー自身が回線を別途調達することになり、ドコモ製品として登場する予定は今のところないとのこと。
参考展示のLifeTouch W | 参考展示のLifeTouch W |
参考展示のLifeTouch W | 参考展示のLifeTouch W |
参考展示のLifeTouch W | 参考展示のLifeTouch W |
参考展示のLifeTouch W | 参考展示のLifeTouch W |
参考展示のLifeTouch W | 参考展示のLifeTouch W |
2011/2/15 11:02