KDDI、LISMOで民放FM52局が聞けるサービス


全国民放FM52局が聞ける
楽曲の購入も可能

 KDDI、沖縄セルラーは、全国の民放FM52局の放送をストリーミングで提供するサービス「LISMO WAVE」を1月26日より開始する。利用料は月額315円。

 今回開始される「LISMO WAVE」は、民放FM52局のFMラジオ放送を全国どこでも聞けるというサービス。3Gのパケット通信もしくは無線LANを利用し、楽曲情報などとともに聞けるほか、番組でかかった楽曲を購入することも可能。Twitterとの連携機能も用意されている。

 「LISMO WAVE」は2つのチャンネルで構成される。民放FMの放送をストリーミング配信する「ラジオチャンネル」(月額315円)のほか、無線LAN環境で音楽動画などを配信「音楽映像チャンネル」が用意されている。音楽映像チャンネルには、KDDIが無料で提供する「LISMO WAVE Channel」のほか、5月からはレーベルゲートとの協業により、音楽クリップなどを配信する有料の3チャンネルが追加される。

 「ラジオチャンネル」で配信される民放のFM放送局は、FM北海道、FMノースウェーブ、FM青森、FM岩手、Date fm、FM秋田、FM山形、ふくしまFM、bayfm78、NACK5、TOKYO FM、J-WAVE、InterFM、FMヨコハマ、FM-FUJI、FMぐんま、RADIO BERRY、FM-NIIGATA、FM PORT、FM長野、K-MIX、FMとやま、FM石川、FM福井、FM AICHI、ZIP-FM、Radio 80、FM三重、FM滋賀、α-STATION、FM OSAKA、FM 802、FM COCOLO、Kiss FM KOBE、FM山陰、FM岡山、広島FM、FM山口、FM香川、FM愛媛、FM徳島、FM高知、FM FUKUOKA、CROSS FM、LOVE FM、FM佐賀、FM長崎、FM熊本、FM大分、FM宮崎、FM鹿児島、FM沖縄。なお、J-WAVEは3月15日より配信を開始する。

 配信では、実際のFM放送から5分程度の遅延が発生する。これは、同サービスの特徴にもなっているバッファを生成するためで、バッファが配信サーバーと端末側に用意されることで、通信が途切れても約5分程度の聴取が可能になっている。各局が放送しているCMについては、LISMO WAVEでも配信されるかどうかは各局ごとに対応が異なる見込み。空白となった時間については、局が用意する楽曲などが流れる。

 対応端末は、Android搭載端末では、IS03、REGZA Phone IS04、IS05。フィーチャーフォン(従来型の携帯電話)ではT006。すでに発売されており、対応機種に含まれていないスマートフォンについては、検討中となっている。今後はスマートフォンを中心に対応が進められる見込みで、フィーチャーフォンでは、無線LAN対応端末であれば対応が可能だが、具体的な展開は未定。

 IS03でLISMO WAVEを利用するイメージ
 フィーチャーフォンでLISMO WAVEに対応するT006

 

次に進むべき道がクラウドミュージック

KDDI 代表取締役 執行役員 専務の高橋誠氏

 25日には都内で記者向けに発表会が開催された。KDDI 代表取締役 執行役員 専務の高橋誠氏は、auのAndroid端末向けに提供しているLISMO!のアプリが好評で、楽曲のダウンロード数も順調に推移していると紹介。スマートフォンにおいても音楽サービスが受け入れられているとした。

 一方同氏は、「フィーチャーフォンでは楽曲のダウンロードが基本だったが、やはりクラウド化していかなければいけない。インターネット上での楽曲管理を、もっと体験してもらいたい。ストリーミングで聞くことも、非常にたやすくできる状況になっている」と述べ、「次に進むべき道はクラウドミュージック」とLISMOサービスの方向性を明らかにした。

 IPサイマルの形をとる新サービスの「LISMO WAVE」では、「通信のエリアであれば、FM52局が、全国どこでもクリアに聞ける」と語り、これまではその地域にいかなければ聞かなかったFM放送が、全国どこにいても聞けるという新たなサービスを解説した。

 高橋氏はまた、「ラジオの魅力は、思いを込めて音楽を届けること。リスナーは、思いがけない、たくさんの曲と出会える」と、ラジオの魅力を語り、2003年より展開しているFMケータイの展開や、MEET THE MUSICといった取り組みを紹介。「52局で1570人のパーソナリティ、1508の番組がある。LISMO WAVEで1日にであえる曲数は約7800曲にもなる」と多様な音楽と出会う場としてのラジオ番組をアピールした。

 同氏はこのほか、質疑応答の中で「将来的にはスマートフォンだけでなく、ほかのデバイスにも広げていきたい」とし、CATVのセットトップボックスなど同社のグループを活用した展開を検討中とした。

全国の民放FM52局が参加ラジオ番組の重要性をアピール
約5分間分のバッファ、Twitter連携など使い勝手にも配慮「クラウドミュージック」を標榜し、今後この考えを発展させていく

 

八木氏にインタビュー

KDDI 新規ビジネス推進本部 メディアビジネス部長の八木達雄氏(左)、同 サービス企画グループ課長の藤田哲史氏(右)

 KDDI 新規ビジネス推進本部 メディアビジネス部長の八木達雄氏に、短い時間ながらインタビューする機会を得た。

 発表会では、ストリーミングを安定して受信したり、クリックしてすぐに受信を開始したりといった、手軽に楽しめる“環境の進化”に言及されたが、実際の仕組みはどうなのか。八木氏によれば、これは具体的な通信方式や規格を指しているのではなく、ネットワークと端末の双方が進化してきた結果だという。特にスマートフォンでは端末性能の進化や、一度にやりとりするパケット通信量に制限がないため、これらのサービスが利用しやすい。

 また、スマートフォンが無線LAN機能を標準的に備えているのも重要で、トラフィックの7割を占めるとも言われる“宅内での利用”を無線LANに担わせることが可能になっている。なお、フィーチャーフォンである「T006」では、一度に通信できる容量が20MBのため、LISMO WAVEでは最大約40分が経過した頃にお知らせの表示が出る。ここで継続して聴取する選択を行うと、再度通信が行われて聴取が継続できる仕組みになっている。

 全国の民放FM局をすべて配信サービスとして提供するきっかけは何だったのか。八木氏は、音楽サービスに注力し、FMケータイの展開やMEET THE MUSICといった取り組みを通じてFM局と話す機会が多くなったとしており、今回のサービスも自然な流れとする。「radikoは、放送の延長で、難視聴地域向けに整備されているが、根本にはリスナーを増やしたいという思いからスタートしていると思う。私たちも同じだが、私たちは音楽にこだわってきた。FMはアーティストを育てるところだったが、今は聴取環境が狭まり、(FMを通じて)さまざまな音楽に触れる機会が少なくなっている」と、同社が繰り返し強調している“音楽に触れる機会の増加”を目的に挙げる。八木氏は「良い音楽を聞いてもらえれば、音楽を買ってもらえる。そういった行動につながる」と語り、音楽を巡る循環の入り口として、FM放送が重要であるとした。

 

小林克也、内田恭子、IMALUとFM52局のパーソナリティ52名が集結

手前左から小林克也、内田恭子、IMALU、KDDIの高橋誠氏

 25日に開催された発表会では、FM放送のパーソナリティとして小林克也、内田恭子、IMALUの3名が登壇してトークショーを行ったほか、52局からパーソナリティ52名が集合。それぞれが「LISMO WAVE」にかける期待を語った。

 小林克也は、自らを“ラジオマニア”と紹介し、移動中も各局の番組を次々にチェックしてしまうという。LISMO WAVEで全国の番組が聞けるとなれば「競争意識が出る」と意気込みも新たにしている様子。集まった52局のパーソナリティに向けては、「地域の特色といっても、(番組は)一人のもの。自分らしさを出して、好きなことをやればいい」とエールを送っていた。

 TOKYO FMで番組を持つ内田恭子は、「放送エリアの制限が無くなって、どこでもクリアに聞けるのは画期的。みなさんと1つの番組を盛り上げていると思うと、放送する側もテンションが上がります」と、こちらも期待を寄せている様子だった。

 FMヨコハマで番組を持つIMALUは、「地域で区切りがあったところが、クリアに、全国になるのはすごく嬉しい。私の番組が全国で聞いてもらえるのが今から楽しみ。クリアに音が聞こえるのは、リスナーとパーソナリティの距離が縮まると思う」とコメントし、地域のFM放送局を超えた展開に期待を語った。

 発表会ではこのほか、会場に集まった52局52名のパーソナリティから抱負が語られ、いずれも全国で聞けるという展開に期待を寄せるとともに、地域色のある情報発信をアピールしていた。



 

プレゼンテーション

 



(太田 亮三)

2011/1/25 11:00