じぶん銀行が「モバイルSuica」に対応、開業から1年半の課題とは


 じぶん銀行は、同行口座からJR東日本の「モバイルSuica」にチャージできるサービスを2月22日より提供する。銀行口座からモバイルSuicaへのチャージは毎回手数料が発生することになるが、じぶん銀行では、2011年3月31日までの約1年間、手数料が無料とする。

 銀行口座からのチャージという機能は、他行から既に提供されているものの、ネット専業銀行では今回が初めて。ネット専業のなかでもモバイルに特化した形でスタートしたじぶん銀行が「モバイルSuica」へのチャージ機能に対応するのは、利便性向上を図るため。使い勝手を良くし、利用機会を増やすことで、預金残高そのものは増やさなくとも「“普段使い”される口座」を目指す。

他キャリア/スマートフォン向けアプリは?

昨夏バージョンアップしたじぶん銀行のアプリ。auユーザーが利用できる

 2008年7月の開業から1年半、外貨預金やカードローンといった商品を取り揃えてきた。ここで課題となるのは、そういった商品の利用を促進すること。ユーザーの利用頻度を向上させられれば、じぶん銀行の基礎体力を培うことにもなる。

 口座数は現在、90万前後に達し、口座数の拡大が最重要のミッションである時期は過ぎた。利用促進そのものが課題となるのであれば、他キャリアのユーザーに対する施策も気になるところ。携帯サイト版の「じぶん銀行」は、他キャリアユーザーでも利用できる状況だが、アプリ版はauユーザーのみ利用でき、そちらのほうがより多機能だ。他キャリアでもアプリ版が提供されるのか、じぶん銀行 マーケティング本部 マーケティング部長の原山泰之氏は「ユーザーの立場からすれば、そういったニーズはあると承知しており、純粋に銀行の立場からすれば検討すべき施策だろう」と語るものの、現状では計画がないとする。

 一方、昨今話題のスマートフォンについては、「検討はしている」(原山氏)とのことで、前向きに取り組んでいると見られる。ただし、対応機種やスケジュールについては明らかにされていない。携帯アプリ版は、au向けに提供されているほか、auが6月以降にAndroid、およびWindows Mobile搭載のスマートフォンを提供する方針を示しており、そういった機種に対応する可能性は高いだろう。

今後の施策、課題は

 一般的な銀行業では、個人ユーザーの給与振込口座や定期預金口座、カードローン、教育ローン、保険、投資信託といった商品を展開する。また、最も高額な商品の1つとして住宅ローンも提供する。

じぶん銀行の原山氏

 じぶん銀行では、外貨預金やカードローンなどは用意しているものの、住宅ローンはまだ提供されていない。将来的に登場する可能性はあるが、ユーザーとの接点が携帯電話だけ、というモバイル専業銀行において、住宅を購入するだけの資金を調達することは難しいだろう。

 「他キャリア展開」「スマートフォン対応」といった細かな点を含め、開業から1年半経ったじぶん銀行は、今後どういった施策を行っていくのだろうか。

 モバイルバンキングサービスは、iモード黎明期から存在した。携帯電話に特化したとは言え、ユーザーからすれば、他行のモバイルサービスと比べ、じぶん銀行にどういった魅力があるのか、いまひとつ掴みかねているところがあるかもしれない。

 いつも手元にある携帯電話だからこそ日常的なお金の使い方を管理できる、と言う点は魅力の1つになり得る。携帯電話は、さまざまな情報・サービスに対する個々人の窓口として機能することが期待されており、じぶん銀行に対しては、ライフログの活用などを含め、日々のお金の管理を行えるような新たなアカウントアグリゲーションサービスの提供といった面でも期待も膨らむ。今夏には開業から2年を迎えるじぶん銀行だが、同行ならでは、あるいはモバイルならでのメリットをさらに打ち出せるのか、注目したいところだ。

 



(関口 聖)

2010/2/22 12:12