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ドコモ、最新の災害対策とAI運用監視を公開──SNSで“サイレント故障”察知の裏側も
2026年6月8日 20:52
NTTドコモは8日、同社の品川ビルで見学会を開催した。2024年の能登半島地震などを踏まえた災害対策や、AI時代におけるネットワークの運用監視の取り組みが紹介された。
停電と断線に備える「個の備え」
ドコモは、災害対策の基本方針として「個の備え」「連携の力」「将来に向けてもっとできること」の3点を掲げる。
災害時に通信基地局が停止する主な原因は、停電と伝送路の断線。電源確保の取り組みとして、全国約2000カ所に中ゾーン基地局を整備する。
停電時には複数の周波数帯を一つに制限するスリープ制御を導入し、バッテリーの稼働時間を延長する仕組みを取り入れている。
伝送路の断線に対しては、低軌道衛星通信「Starlink」を活用する。アンテナが小型で軽量なため被災地への運搬が容易であり、可搬型基地局と組み合わせることで迅速に通信エリアを復旧する。
半径7kmをカバーする「大ゾーン基地局」
このビル屋上には、広域の通信を確保する「大ゾーン基地局」が設置されている。大規模な災害によって地上の一般的な基地局が倒壊や停電で一斉に機能しなくなった際、広範囲のエリアを救済するための最終防衛ラインとして稼働する。
全国で105カ所に設置され、品川ビルでは4カ所にアンテナを配置。通常時は電波干渉を防ぐために運用されていないが、有事の際には出力を最大化させ、半径約7kmのエリアがカバーされる。
大ゾーン基地局は、北海道胆振東部地震の際に一度だけ商用として発動された実績を持つ。大ゾーン基地局の稼働と通信を維持するための電源はビル内の大型発電機から直接供給され、伝送路も二重化されるなど、徹底した冗長化システムにより高い安全性が担保されている。
悪路を走破する軽自動車タイプの移動基地局車
大規模災害においては土砂崩れなどで道路が寸断され、従来の大型基地局車が被災地に進入できない事態が多発した。この教訓を背景に、ドコモは機動力に優れた小型車両の配備を進めている。
軽自動車タイプの移動基地局車は、上部にStarlinkと最大6mのアンテナを格納する。小回りが利き、細い悪路でも進入して通信エリアを構築する。
従来の普通車タイプの移動基地局車は、Starlinkに加えて通信品質が安定する専用線(JCSAT)のアンテナも搭載する。車内に発電用エンジンを内蔵し、最大11メートルのアンテナを展開して広いエリアをカバーする。通信速度を優先する場合はStarlink、品質を優先する場合は専用線と、現場のニーズに応じた柔軟な運用を実施する。
150時間稼働の発電機と事業者間の連携
電源対策の要として、超長時間稼働が可能な発動発電機を配備する。燃料タンクを2つ搭載し、片方が空になると自動でもう一方のタンクへ切り替わる機能を持つ。稼働させたまま空のタンクへの給油が可能で、約1週間分に相当する100時間~150時間の連続稼働を実現する。
ドコモ単独の取り組みにとどまらず、災害時のお客様支援として他事業者や関係機関との連携も強化する。これまで各社が個別に行っていた避難所支援を「つなぐ×かえるプロジェクト」として共通化。共同Wi-Fiや、10~20台のスマートフォンを同時に充電できるマルチチャージャーを一元的に提供し、被災者支援の迅速化を図る。
AIを活用した運用監視
AI時代の次世代インフラに向け、ドコモは「AI for Network」の取り組みを推進する。
サービスマネジメント部オペレーションシステム担当部長の鈴木啓介氏は、AI活用を「AIと人が対話するステップ1」「AIエージェントと人が対話するステップ2」「AIエージェントが主体的に運用するステップ3」の3段階で定義し、「現在はステップ1と2の導入を進めている」と語る。
ステップ1では、各領域の専門AIと人が対話することで障害時の初動対応を迅速化する。人が短時間で確認できない大量のデータ全数の傾向を分析し影響範囲を特定する「トラフィック分析AI」をはじめ、自動試験によって被疑箇所を特定する「自動実呼AI」、工事と障害の関係を紐付ける「工事影響確認AI」を活用している。
さらに、過去の事例から最適な対応が提示される「過去ノウハウ検索AI」や、社内外への速やかな周知を担う「情報配信AI」が組み合わされ、初動対応に要する時間が約60%削減されるという。
続くステップ2では、世界最大級となる100万台超のネットワーク機器データが「デジタルツイン」として構築される。異常検知から被疑箇所の推定、復旧措置の提示までがマルチAIエージェントにより自動実行され、複雑な障害対応におけるリカバリ時間が50%以上短縮される。
24時間体制の拠点「ネットワークオペレーションセンター」
実際の運用監視を行うネットワークオペレーションセンター(NOC)では、全国に展開される基地局や交換機のトラフィック状況、Starlinkの稼働状態などが大型モニターにリアルタイムで表示され、24時間365日体制で通信ネットワークが監視・制御されている。
AIエージェントの画面には全国の異常分析状況が表示され、どこでどのようなアラームが発生しているかが可視化される。たとえば「特定装置での局所的な事象であり自動復旧が見込まれるため対処は不要」といった結論がシステムから提示され、オペレーターによるエスカレーションの負担が大幅に軽減される。
原因がドコモ側ではなかった障害の裏側
NOCでは、上記のほかにも、アラートが出ない「サイレント故障」にいち早く気づくため、Xの投稿やダウンディテクターの監視も行っている。
先月19日にはドコモから、SNSなどで「利用しづらい」という投稿が多くあがっていることを確認しているとしつつも、同社の設備故障などによる影響は確認できていないというお知らせが公開された。数時間後、MVNOの設備の影響だと発表されたが、これがまさにこのNOCで、SNSの監視→設備の状況確認→お知らせの公開へとつながった事例。
当時、NOCの担当者がダウンディテクター上で、ドコモに関する異常報告の数値が通常よりも急激に跳ね上がっていることに気づいた。これと並行してただちにXの書き込みを確認したところ、「圏外になっている」といった声が一定数見られたという。
異常を察知したNOCでは、すぐにネットワーク全体のトラフィック状況を確認したが、ドコモの設備上はトラフィックの落ち込みなどの異常は見られなかった。しかし、システム上のアラームが鳴っていなくても、実際に何らかの事象が起きていることはSNSの声から明らかだった。
そのため、ドコモは自社設備に原因がある「サイレント故障」の可能性をまずは疑い、原因が特定できない状態であったものの、ユーザーへの情報開示を優先して1回目のお知らせ(障害情報)を公開した。
その後の調査によって、ドコモの設備ではなくMVNO側の不具合であることが判明したため、障害情報の取り消しという形で動いたという経緯だったとのこと。
すべてがシステム上のアラームとして検知されるわけではないからこそ、NOCでは外部サービスやSNS上のユーザーの声を組み合わせることで、実際のサービス影響にいち早く気づくための監視体制を敷いている。
今後の展開とAI予測の高度化
次世代の災害対策として、DX推進やAIを活用した高度化をロードマップに掲げる。サービスオペレーション部災害対策室室長の尾崎康征氏は「被害が発生する前に予測し、行動支援を行う」と語り、事前の予測体制を強化する方針を示す。今後は国内監視へのAIエージェント導入などを進め、より強靭な通信ネットワークの運用体制構築を目指す。
また、国際ローミングサービス監視の高度化も推進する。2026年3月にはシンガポールStarHub社との間で「国際ゼロタッチオペレーションシステム」の実証試験に成功した。これまで手動で行われていた海外事業者との障害対応が自動判定・自動連携へと移行され、グローバル規模での通信品質向上と迅速な対応を実現していく。









































