ニュース

PayPayとVisaが戦略提携、米国展開と国内インバウンド強化へ その狙いは

 PayPayとVisaは12日、グローバル決済エコシステムの拡大を目的として、戦略的パートナーシップの締結に向けた検討を開始したと発表した。

PayPay 代表取締役社長執行役員CEO 中山一郎氏とVisa 最高製品・戦略責任者 ジャック・フォレステル氏

 PayPayの代表取締役社長執行役員CEOである中山一郎氏は冒頭、PayPayの現状について報告し、登録ユーザー数が2025年末時点で7200万人を突破したと説明。2024年の実績として、PayPayグループ全体の取扱高は12兆円を超え、そのうちPayPayアプリ単体でも日本の個人消費の8%を占める規模に成長した。

 特に重視している指標である「決済回数」については、年間100億回を超える規模に達しており、現在では日本のキャッシュレス決済の「5回に1回」がPayPayアプリによるものとなるなど、国民的な社会インフラとしての地位を確立しつつある。

 今回のVisaとの提携による取り組みの一つ目は、日本国内におけるインバウンド対応の強化とサービスの統合。インバウンド施策として、世界中のVisaユーザーが利用している「Visa Pay」などのアプリで、日本のPayPay加盟店に掲示されたQRコードを読み取り、決済が可能になる仕組みを導入する。

 これにより、世界で49億と言われるVisaのカード発行基盤を持つ訪日外国人が、日本国内のPayPay加盟店でスムーズに買い物ができるようになり、加盟店側にとってもインバウンド需要の取り込みが容易になるというメリットが生まれる。

 また、国内ユーザー向けには、PayPayカード、PayPay残高、バーチャルカードの3つを一体化し、アプリとカードを通じた新しい決済体験を年内を目処に提供する計画も明かした。

 さらに、PayPay主導による米国市場への進出の計画も発表した。PayPayは米国で新会社を設立することを検討しており、Visaがパートナーとして参画する形で事業展開を図る。中山氏は、米国の個人消費が日本の約9倍にあたる巨大市場でありながら、約300兆円規模の現金決済市場が残されている点に大きなポテンシャルを見出す。

 米国ではデジタルウォレットの普及が進んでおり、2030年には決済の40%を占めると予測されていることから、このタイミングでの参入を決定した。米国での展開にあたっては、スマートフォンを用いたNFC(非接触決済)とQRコード決済の両方に対応する「デュアルモード」を実装し、現地の多様な決済ニーズに応える戦略を掲げている。

 Visaの最高製品・戦略責任者であるジャック・フォレステル氏は、今回の提携について、PayPayが持つ強力なローカル基盤とVisaのグローバルなスケールを組み合わせる「有意義なイノベーション」であると評価する。

 Visaのネットワークを活用することで、PayPayユーザーが海外渡航時にVisa加盟店で決済できるようになるほか、海外からの旅行者が日本のPayPay加盟店を利用できるようになるなど、国境を越えたシームレスな決済環境の実現を目指す。

 両社は、世界的な決済テクノロジー企業としての強みを融合させ、日米およびグローバル市場において新たな決済体験の創出に取り組むとしている。

主な質疑応答

――米国進出の時期的な目処について教えてほしい。

中山氏
 時期については現時点では「未定」です。米国は州ごとにライセンスや法規制が異なり、その取得や準備に時間がかかります。まずは検討を開始することに合意した段階であり、これから具体的に決めていくことになります。

――PayPayが主導して設立する米国の新会社について、PayPayが出資比率の過半数を持つ合弁会社のようなイメージで良いか。

中山氏
 出資比率のパーセンテージはまだ決まっていませんが、PayPayが「主導」するという意味において、過半数以上を持つことを前提に会話を進めています。

――今回の提携は、将来的なIPOに向けた成長戦略の一環という理解で良いか。

中山氏
 そのような理解で間違いありません。

――米国のキャッシュレス市場にはVenmoなどの競合が存在する。差別化や強みをどう考えているのか。

中山氏
 米国は非常に多様性に富んだ社会です。日本のPayPayが持つ強みとVisaの強みを掛け合わせることで、その多様性の中で選ばれるサービスになりたいと考えています。

フォレステル氏
 米国のデジタル決済はあらゆる場面で急速に成長しています。重要なのはNFCかQRコードかというフォームファクターではなく、消費者にとって「体験」が安全で、シンプルで、即時性があるかどうかです。PayPayはその優れたユーザー体験を作ることに長けており、そこに勝機があると考えています。

――新会社は「QRコード決済」ではなく「スマホ決済(モバイルペイメント)」の会社と捉えて良いか。

中山氏
 我々は常に自分たちをモバイルペイメント企業であると意識しています。日本ではたまたまQRコードが導入しやすく、ユーザーや加盟店の支持を得やすかったためそこから入りましたが、米国ではNFCとQRコードの「デュアルモード」で展開し、モバイルペイメントという文脈で挑戦します。

――米国でのサービスに個人間送金機能は実装されるのか。

中山氏
 送金機能については、できれば実装したいと考えていますが、規制が非常に厳しいため慎重に検討する必要があります。

――新会社は米国在住の新規ユーザー獲得を目指すのか、それとも日本人旅行者の利用を想定しているのか。

中山氏
 ターゲットについては、米国現地のユーザーを獲得することを目的としています。もちろん日本からの旅行者も使えますが、事業の本質としては、現地の多様な人々に日常的に使ってもらうサービスを目指します。

――インバウンド対応について、PayPay加盟店側で新たな機器の導入や手数料の負担などは発生するのか。

中山氏
 加盟店側で新たな端末の導入などは考えておらず、現在のPayPayのQRコードをそのまま読み取れる形にします。手数料や契約形態についても、加盟店が複雑な負担を感じないよう、PayPayとVisaの間で調整します。加盟店にとっては「掲示しているQRコードを外国人が読み取れるようになる」というシンプルな体験を提供します。

――Visaのクレデンシャルを活用したPayPayカード、PayPay残高、バーチャルカードの統合は「年内」とのことだが、インバウンド対応の開始時期はいつ頃か。

中山氏
 インバウンド対応の時期については現時点では「未定」ですが、できるだけ早く開発を進めて提供したいと考えています。

――Visaから見て、PayPayの「強み」とは具体的にどこにあると分析しているのか。

フォレステル氏
 PayPayの強みは、ユーザー体験への徹底的なこだわりです。使いやすさ、楽しさ、スピード感、そしてそれを支えるチームの情熱と緊急事態のようなスピード感を持った開発力にあります。我々は長年PayPayを見てきましたが、その背後にいる「人」と「体験を作る力」こそが最大の資産だと感じています。

――米国での「デュアルモード」展開時や日本国内での連携において、ユーザーがQRコードを選んだ場合とタッチ決済を選んだ場合で、加盟店が支払う手数料の支払先が変わることはあるのか。

中山氏
 具体的なエコノミクスはこれからですが、加盟店にこのサービスを受け入れてくれるような価格設定にします。

――海外展開を加速させるうえで、国内市場をどのように見ているのか。

中山氏
 国内事業をしっかり安定させつつ、グローバルな成長機会を取りに行くのは、事業をやっている者として当たり前の挑戦だと考えています。国内市場を否定するわけでも肯定するわけでもなく、事実を受け入れながら事業を拡大していきたいと思います。

――今回の戦略的パートナーシップに対する率直な感想や期待を教えてほしい。

フォレステル氏
 非常に興奮しています。この提携は、強力なローカルブランドであるPayPayと、グローバルな規模を持つVisaの融合です。日本のPayPayユーザーが世界中のVisa加盟店で決済できるようになり、逆に世界中のVisaユーザーが日本のPayPay加盟店を利用できるようになる。これは国境を超えたシームレスな決済を実現する「有意義なイノベーション」です。

中山氏
 Visaは数十年にわたり世界の決済をリードしてきた企業です。彼らと組むことで、PayPayはグローバル市場へのアクセスできる、いわば「チケット」を手に入れることができました。日本にとどまらず世界に挑戦するという意味で、これ以上ない強いパートナーシップだと確信しています。