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身近なauのショップで「生成AI教室」、携帯の契約だけではないキャリアショップの役割と取り組み

au Style ゆめが丘ソラトスで生成AI教室を取材(店長の瀬筒恒平氏とチーフの三木恵里香氏)

 auやUQ mobileのショップでは、スマートフォン初心者に基本操作や便利な機能を学べる「auスマホ教室」が開催されている。近年は、ユーザーの興味関心にあわせて、金融やウェルネス関連の教室も開かれており、なかでもNISAに関する教室が人気だという。

 そんななか、一部のau Styleでは「生成AI教室」が開講されている。さまざまな生成AIがあるなか、教室ではグーグル(Google)の「Gemini」をメインに進められている。

 生成AI教室では、どのように進められているだろうか。

生成AI Geminiを使った教室

 筆者が訪れたのは、「au Style ゆめが丘ソラトス」(神奈川県横浜市)。教室は、店内のオープンスペースで開催されており、訪れた日には2人のユーザーが参加した。講師は、ショップスタッフでチーフの三木恵里香氏。

ショップスタッフでチーフの三木恵里香氏が講師を務める

 教室では、テキストが用意されており、基本的にはそのテキストの流れで進められる。冒頭に、ユーザーに身近な機能に関するクイズを出題。普段から利用している機能が、実はAIを活用したものであることを伝え、AIへの心理的な距離を縮める狙いだろう。

 生成AIは、「新しいコンテンツを自動的に生成するAIの一つ」と触れられ、講師の三木氏が実際にGeminiを使って「誕生日の人へのメッセージ」を生成し、使い方をレクチャーする。講師1人に対してユーザー(生徒)は2名なので、ワークショップのように進められる。ユーザーが取り残される心配はなさそうだ。

筆者も画像生成にチャレンジ

 もちろん、Geminiでは文章だけでなく画像も生成できる。誕生日の話題に続き、「誕生日を祝う猫の画像を生成する」というお題に挑戦。猫の毛色などもプロンプトに入力することで反映される流れを体験できる。

 さらに、目の前のものをGeminiにアップロードして相談することにもチャレンジ。生徒の目の前には野菜がいくつか用意され、目の前の野菜で作れるレシピをGeminiに相談する。たとえば、「簡単に作れるおつまみレシピ」や「4人前のイタリアン」など、料理の種類やイメージを伝えて考えてもらうことも可能。足りない食材や調味料があれば、買い物リストを作ってもらえる。

自分の端末で生成AIを実際に体験

 このほかにも、YouTubeで再生中の動画を要約してもらったり、動画に映り込んでいる場所のより詳しい情報をまとめてもらったりできる。最後には、より複雑な処理ができる「Gemini Pro」やそれを利用できる「Google AI Pro」などを紹介。生成AIを利用する上で不可欠なハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)や偏見、情報流出のリスクなどが説明され、教室は終了した。

生成AI教室開講の意義

 この生成AI教室への取り組みについて、パーソナル第3営業本部営業統括部統括1部統括3グループの三好亜紀氏は「毎日のようにAI関連のニュースがある中で、『AIって何だろう』と疑問を持っていたり抵抗感があったりするユーザーが多い」と指摘。「AIをユーザー自身のスマートフォンでまずは体験してもらい、身近に感じてもらいたい」と、開講の意義を説明する。

 同店では、6月からAI教室が開講され、半年間でおよそ60人のユーザーが受講している。若年層からシニア層まで、さまざまなユーザーが受講している。中には“スマホの使い方をGeminiに聞く”という使い方をするユーザーもいるといい、年齢層によってもさまざまな使い方が発見できることがうかがえる。同店の店長で、運営代理店であるYTTのコンシューマー営業部店舗統括室グループリーダーという瀬筒恒平氏によると、店舗で直接案内する機会が多く、その場で予約していくユーザーが多いという。

 「auスマホ教室」という取り組みではあるが、同店では「NISAセミナー」と「AIセミナー」、「ウェルネスセミナー」が特に人気だといい、携帯ショップの役割が時代とともに移り変わっていく傾向がうかがえた。

Androidアンバサダーの取り組み

 また、三好氏と同じKDDI統括3グループの秋野康道氏によると、同社では「Androidアンバサダー」による接客体験も提供している。これは、Android アンバサダープログラムを通じて認定されるもので、グーグルの日本本社に出向き、2日間にわたりAndroidの最新サービスやGoogle Pixelシリーズ、Samsung Galaxyシリーズの端末についてトレーニングを受ける。つまり、Androidスマートフォンに精通したスタッフによる接客が受けられるわけだ。

 同社では、8月までにおよそ200人のスタッフがアンバサダーとして認定を受けており、12月にはおよそ900人のスタッフが認定を受ける見込みだという。今回講師を担当した三木氏も、認定を受けたAndroidアンバサダーの1人。実際の接客でもAndroidのさまざまな機能について話しやすくなったことを実感していると話す。

 今回の生成AI教室で使われた「Gemini」についても、この認定プログラムでトレーニングを受けたものだといい、教室内でも「洋服の色をGeminiと相談している」など、自身の生成AI活用例を紹介し、よりユーザーが身近に感じやすいトークで教室を盛り上げていた。

最新のGoogle Pixel 10シリーズも展示されている

“携帯を買う”“通信契約する”だけではないショップの役割

au Style ゆめが丘ソラトス

 SIMフリースマートフォンや各社のオンラインショップの普及、オンライン手続きの拡大などで、読者の中でも、キャリアショップにすっかりご無沙汰になっている方も多いのではないだろうか。筆者も、もうずいぶんと携帯ショップに足を向けていない気がしている。

 一方で、同店のように、スマートフォンの契約や購入以外にもさまざまな取り組みを実施し、ユーザーの生活をより豊かにするサービスやサポートといった取り組みを進めており、キャリアショップの役割が徐々に変化しているように感じられた。

 KDDIは、現在は「au Style」で実施している生成AI教室を、「auショップ」などにも今後拡大させることを検討しているという。新しいテクノロジーの発信拠点としての役割を再び担う日もそう遠くないと感じた。