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ソフトバンク、5Gミリ波FWA活用の屋外Wi-Fi実証に成功 イベントでトラフィック分散を確認

 ソフトバンクは、5Gミリ波(28GHz帯)をバックホール回線として利用した屋外公衆Wi-Fiサービスの実証実験に成功したと発表した。

 実験は10月に東京都豊島区のイベント会場で実施されたもので、混雑した環境において、ミリ波非対応のスマートフォンを含む多数の端末に高速かつ安定して通信を提供できることを確認した。

バックホールにミリ波、末端はWi-Fiでエリア化

 今回の実験は、2025年10月に行われた「ミリ波スタンドアローンによるFWA(固定無線アクセス)通信」の実証を発展させたもの。5Gの28GHz帯(29.1~29.5GHz)をFWAで受信し、その回線をバックホールとしてWi-Fiアクセスポイントにつなぐことで、来場者向けの公衆Wi-Fiエリアを構築した。

 実験は、3日間で延べ16万人以上が来場した大規模イベント会場で実施され、会場内に6台のWi-Fiアクセスポイントを設置。ソフトバンクやワイモバイルのユーザーはもちろん、他社回線の利用者や訪日外国人にも開放された。

 結果として、最も混雑した時間帯でも安定して高速通信を維持でき、多数のスマートフォンが同時接続する状況でも、モバイルネットワークから公衆Wi-Fiへの効率的な負荷分散が機能することを確認した。

光回線不要で“即時展開”が可能に

 ミリ波は広帯域・大容量通信が可能な一方で直進性が高く、電波が届きにくいという課題がある。今回の構成では、端末との接続をWi-Fiにすることで、ミリ波非対応のスマートフォンでも高品質な通信を利用できる点が特徴となっている。

 また、小型・軽量な機材を使うため光ファイバーなどの敷設工事が不要で、ミリ波が届く範囲であれば柔軟に設置場所を選べる。短期間で設置できることから、迅速なネットワーク構築にも向いている。今回は実運用を想定し、チャネル帯域幅を20MHzに制限したが、将来的にはより広い帯域幅を用いることで、さらなるスループット向上も見込めるという。

防災・産業用途へも展開

 ソフトバンクは今後、多様なユースケースへの展開を検討している。自治体や公共施設での防災拠点や、庁舎間通信網の迅速な構築、教育現場での光回線同等の通信提供、災害時の避難所での活用などが想定される。

 加えて、イベント会場やスタジアムでの混雑時の大容量オフロード環境の提供、工場や港湾での映像監視や遠隔制御など、産業インフラへの活用も期待されている。