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Bluetooth、6GHz帯対応やロスレス・ハイレゾ標準化へ 次の25年に向けた構想語る

 混雑する2.4GHz帯などの課題を背景に、Bluetooth SIGが6GHz帯の対応への展望やオーディオ機能で2026年ごろにもロスレス・ハイレゾを標準化すると、東京都内で開催した会見で説明した。

Bluetooth SIG ケン・コルドラップ氏

ロスレス・ハイレゾ標準化、高周波数帯への対応も

 新たな機能としては今後、マウスやキーボードなどのHID(Human Interface Device)で、より低遅延を目指す。ゲームパッドなどでも遅延が改善されることから、パフォーマンス向上が見込める。

 また現在、最大2MbpsまでのBluetooth LEで最大8Mbpsへの速度引き上げを目指す。既存のアプリケーションや想定される用途でのパフォーマンス向上だけではなく、独自仕様で実装されているロスレス・ハイレゾオーディオの標準仕様化にも寄与するという。

 現在は、2.4GHz帯のみのBluetoothだが、将来的には5GHz帯や6GHz帯への対応も視野に入れる。2.4GHz帯は、Bluetooth以外にも多くの機器が活用しており混雑しているほか、より高い周波数帯に対応することで、低遅延性や低消費電力などを実現していく。

 Bluetooth SIG CMOのケン・コルドラップ氏によれば、常に50ほどの技術開発に関するプロジェクトが同時に進行しているという。より高い周波数帯への対応について「(性能向上に関する)こうした取り組みを向こう25年間にわたってさらに進めるためにも必要」と語った。

 ロスレス・ハイレゾオーディオとBluetooth LEの高データスループットに関する技術は、2026年中にもリリースされる見込みという。

センチメートル級の高精度測距や高データスループットのデモ機が動作する様子

着実に成長するBluetoothコミュニティ

 Bluetooth搭載機器の出荷台数は順調に伸び続けている。Bluetooth SIGによれば、2025年のBluetooth機器出荷台数は50億台を超えた。2029年には77億台の出荷台数を見込む。

 特に中心的な存在である、オーディオ機器の出荷台数は多い。ABI ResearchによるBluetoothオーディオ周辺機器の出荷台数は2025年に9億台を数える。マウスやキーボードでもBluetooth接続は一般的になったが、こちらも2025年に3億8600万台の出荷を見込んでいる。

 アップルの「AirTag」などに代表される忘れ物防止タグでもBluetoothを搭載したものは同じく8000万台の出荷、さらにBluetoothを備えるスマートバンドやスマートウォッチなどウェアラブル機器は3億2300万台、パルスオキシメーターなどの医療用機器でも、精査中の数ではあるが、3600万台の出荷が予測されている。

 コルドラップ氏によれば、個人用デバイス以外にも産業用途でBluetoothは存在感を発揮しつつある。2025年、倉庫などでどこに商品があるかを追跡するタグの出荷台数は2億4500万台に達するとされている。温度を検知するセンサーなども2026年までに45%がBluetoothを搭載する予測がある。

 小売店の店頭で商品管理に活用される棚札も、紙からBluetooth搭載のタグに置き換わりつつある。2029年までにBluetooth電子棚札の出荷台数予測は1億3800万台に上る。物流現場などで品物の管理に用いられるスマートラベルでは、Bluetooth搭載のものが2029年までに1億4000万台出荷されるとする。米国の小売り大手「ウォルマート」で採用が進んでいることを例にとり、コルドラップ氏は「2029年までに1億4000万台という数字はかなり確度が高い」と話した。

 現在、Bluetooth SIGに参加する国別メンバー企業数で日本は米国と中国に続く世界3位。グローバルでも順調に歩みを進めるBluetoothだが、コルドラップ氏はそのなかでも「日本は重要な市場」とした。

 Bluetooth SIGは「つながりの力で、より良い世界へ」というビジョンを掲げ、安全や健康、生産性など多くの観点でより良い世界を目指してBluetoothの技術進化に向けて進む。