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Google DeepMind CEO、AI開発の「前例のない勢い」とAGIに向けた次世代モデルを語る
2025年8月13日 12:29
Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは、「Google AI: リリースノート ポッドキャスト」の最新回で、同社がAI技術の開発において「前例のない勢い」を経験していると語った。
「ほぼ毎日、何かをリリースしており、社内でも追いつくのが難しいほどだ」と述べ、「Gemini 2.5」のDeep Thinkや「Genie 3」などの成果に言及した。
Deep Thinkとエージェントシステム
ハサビス氏は最近の大きな進展として「思考モデル」の登場を挙げた。これは、AlphaGoやAlphaZeroといった初期のゲーム研究にルーツを持つ「エージェントベースシステム」へ回帰するものだと説明する。
こうしたシステムはタスク全体を完了でき、現在では数学やコーディング、科学問題など、推論や計画、思考を必要とする分野に応用されている。特にDeep Thinkを搭載したGeminiモデルは、国際数学オリンピック(IMO)で金メダルを獲得できる水準の実力を備えているという。
さらに注目を集めているのが「Genie 3」。ハサビス氏によると、Genie 3は「物理世界を理解する世界モデル」の構築を目指している。物理的構造や物質、液体、生物の行動までを理解することを狙い、AGI(汎用人工知能)にとって不可欠な要素となる。
Genie 3は「世界を生成できること」でその有効性を示しており、ユーザーが目を離しても世界が同じ状態で保たれている点は特に驚くべきことだという。
Google DeepMindはすでに自社トレーニングにGenie 3を活用している。AIエージェントのSIMAをGenie 3が生成した世界で訓練でき、無制限のトレーニングデータを作成可能になる。これはロボット工学やAGIシステムの学習に有用で、インタラクティブエンターテインメントの将来にも大きな可能性を秘める。ハサビス氏は「映画とゲームの中間のような新しいジャンル」の誕生にも期待を寄せた。
AGIへの課題と新ベンチマーク「Game Arena」
ハサビス氏は、AGIは「些細な欠陥を簡単に見つけられてはならない」と指摘。現状では数学や単純な論理問題、ゲームなどで簡単な誤りを犯すことがあり、これは推論や計画、記憶に欠ける能力があるためだと分析する。
この課題に対応するため、Google DeepMindはKaggleと提携し「Game Arena」を立ち上げた。既存ベンチマークの多くが飽和しつつある中で、「より難しく幅広い新基準」が必要だという。ゲームは客観的な性能測定が可能で、システムの能力に応じて難易度が自動調整される利点がある。
Game Arenaでは最良のモデル同士が対戦し、能力向上に応じてテストも自動的に難しくなる。将来的にはチェスから数千種類のゲームへ拡張し、さらにAIが独自のゲームを発明して他のAIに学習させることも視野に入れる。AGIに近づくほど重要となる認知能力の領域を網羅する、長期的なベンチマークになる見込み。
ツール活用とモデルの進化
ハサビス氏は「ツール利用」をAIの最も重要な能力の一つと位置づける。モデルは思考プロセス中に検索や数式処理、コーディングなどのツールを呼び出して利用でき、これによりより高度なタスクを実行可能になる。
今後は、モデルが単なる重みの集合体ではなく「システム全体」へ進化し、開発者がアプリケーションを構築する方法も変わっていくと見ている。
最後にハサビス氏は、AGI達成後の個人的な夢として「史上最高のゲームを作ること」を挙げた。AGIが安全にラインを越えた後、その技術をゲーム開発に活用することは、自身にとって夢の実現だという。AI開発を推進してきた背景には、現実の性質やシミュレーション理論への関心があったことも明かした。

