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シャオミの電気自動車工場、まるでスマホのように生産される様子を取材

ショールーム正面

 日本ではスマートフォンのメーカーとして知られているシャオミ(Xiaomi)。お膝元の中国では、家電などさまざまなデジタルデバイスを展開しており、なかでも2024年に発売された電気自動車「Xiaomi SU7」シリーズは、スマートフォン同様に購入しやすく高性能な自動車として受注も好調、発売から1年経った現在でも納車まで数カ月を待たねばならないほどユーザーを着実に増やしている。

 今回は、同社の電気自動車工場を取材。工場内の撮影は叶わなかったが、自動車工場らしからぬその模様が少しでも伝われば幸いだ。

スマートフォンのようなスペック紹介

平日にもかかわらず、多くの見学者が来訪

 工場内には、見学者向けにスペックを紹介する展示が設けられている。通常、中国国内に在住しているユーザーは、抽選で選ばれたユーザーが工場に来訪できるとのことで、筆者が訪れた日も多くのユーザーが訪れており、中国内での注目度の高さがうかがえる。

 展示では、充電池の配置やモーターのスペック、車体で使われている素材などが解説されている。

 自動車のガソリンタンクとなる充電池のバッテリーセルは、車室の床にあたる部分に配置されている。合計190個のセルが床一面に配置されており、一体化されていることで厚さを薄くでき、車室の空間拡大が図られている。

青いのがバッテリーセルのイメージ

 ハードウェアの体積を減らす取り組みはさまざまな部分で工夫されている。自動車のボンネット部分には、フロントトランクが設けられており、ユーザーの荷物を収納できるほか、ダイキャストアルミニウムを使った三角形ブラケットと呼ばれる特別なデザインを採用することで、衝突時の衝撃をほかの方向に分散させ、ユーザーの安全性を向上している。

 ダイキャスト技術は安全面の向上以外にも、生産効率の上昇にも寄与している。通常は小さな部品を溶接して車体を製造するところ、繊細な金型を充填して統合された部品を形成することで、生産時間を10%削減、車両重量を20%減少させ、走行ノイズの低減が実現している。

 モーターは現在3種類あり、モデルによって異なる。なかでも最上位モデル「SU7 Ultra」では、合計3つのモーターが備えられており、時速50kmに達するまでわずか1.98秒という驚異的な加速度を誇っている。

バッテリーセルと放熱構造

 車体には、国立の研究機関と協力し特殊な合金「Xiaomi Tigher Metal」を開発し、一部に使用している。30%のリサイクルアルミニウムを含む11の素材で構成されているといい、世界でもこの合金を使っているメーカーは少ないと担当者は話す。車体には、このほか高強度の素材を使用している。

紫色の部分に特殊合金が採用されている

 ショールームの最後には、同社のIoTデバイスと接続できる様子が展示されていた。ハードウェアの配置や素材などが語られる部分は、スマートフォンの新機種発表会と似ているように感じる。

スマートホームと接続できる展示
スーベニアコーナー
自動車のカスタマイズ素材

工場内はロボットが主役

 続いて訪れたのは工場内。今回は、車体の製造部分を主に見学した。写真撮影が禁止されていたため、文章でしかお伝えできないのが残念だが、工場内を見た筆者の印象は、まさにスマートフォンの工場のようだった。

 自動車工場について、「ベルトコンベアーのように車両が徐々に送られていき、だんだんと車両が出来上がっていく」と想像する読者もいらっしゃるかもしれない。シャオミの自動車工場では、部品を運搬するのも取り付けたり溶接をしたりするのもほとんどがロボットによって担われている。

 たとえば、車体をダイキャスト技術で製造する場面では、形成されたパーツを運搬し、X線による検査をするのもすべてロボットやAIにより行われている。検査で不合格となったものはスクラップされ再び素材の形成にリサイクルされるが、その運搬もロボットによりすべて自動化されているという。

 形成された部品は、ロボットにより次の組み立て工場に運ばれる。組み立て工場には、400本以上のロボットアームと94台の自立移動ロボットが縦横無尽に動いている。部品を取り付けたり溶接したりしたものを次の工程に運ぶのもロボットで、この部分の自動化率は91%を超えているという。工場内も人の姿が少なく、100人程度の従業員の多くは、工場の中央にある管理センターで工程を管理しているようだ。

 製造された車体を塗装するのもロボット。塗装工程では85台のロボットが配置され、ベースフィルムから電気泳動コーティング、カラー塗装、クリア塗装など8層の塗装が行われる。

 製造工場の正面には、約2.5kmのテストトラックが用意されている。高速道路や悪路などを想定したもので、自動車が完成すると、このテストトラックでブレーキ性能など全体的な品質が試験されるという。