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石川温の「Google I/O 2016」レポート
「Android N」で進化の方向性を示唆、スマホはVR/ARでスペック競争が再加速か
(2016/5/20 13:43)
グーグルは5月18日(米国時間)より3日間、米国・サンフランシスコ、マウンテンビューの本社隣にて毎年恒例の開発者向けイベント「Google I/O 2016」を開催した。
スマートフォン・タブレット向け次期プラットフォームである「Android N」の詳細や、VRに向けた取り組みが披露された。
「Android N」3つの強化ポイント
2016年3月から、すでに開発者向けの「プレビュー版」が公開されている「Android N」に関しては、主に3つの注力点が紹介された。
1つめの「Performance」においては、3DグラフィックスAPI「Vulkan」に対応。また、新たにJITコンパイラ(実行時コンパイラ)を導入したことにより、アプリのインストールが75%高速化し、コンパイルしたコードのサイズも50%ダウンになるという。
2つめの「Security」においては、これまで一度に大容量のファイルをダウンロードしてシステムアップデートを行っていたところを、バックグラウンドで随時更新できるようにするという。また、アプリのチェックも強化されるとのことだ。
3つめの「Productivity」では、マルチウインドウを紹介。画面を上下で分割できるだけでなく、下の画面でアプリを切り替えて使えるようになる。
このほか、emoji(絵文字)も大幅に強化され、表現力が増す。
Androidは、お菓子やスイーツの別名がつくことで有名だが、グーグルでは「N」が頭文字になるスイーツの名前を募集することも発表した。
高品質なVR環境を「Daydream」として提供
ここ最近、VR(ヴァーチャル・リアリティ)が注目されているが、グーグルでは「Android N」にVRモードを搭載すると発表した。
グーグルはこれまでダンボール素材によるVRヘッドセット「Cardbord」を普及させていたが、本格的なVRを楽しむには限界がある。そこで新たに「Daydream(白昼夢)」というプラットフォームも立ち上げ、VRに本腰を入れることになった。
Daydreamで重要となるのがスマートフォンだ。現在、Daydream ReadyというVR対応スマホを開発中で、今年秋にも登場予定だ。VRを快適に楽しむには、頭の動きをトラッキングする精度や、3Dグラフィックにおける描画遅延の解消、VRのユーザーインターフェースを構築するなどの課題がある。
Daydream Readyでは、描画の遅延速度が20ms以下で、「Oculus Rift」や「Gear VR」と同等になるとのこと。また、VRコンテンツを見ながら、通話やメールの着信が受けられるようにもなるという。
Daydream Ready対応スマホの開発に名乗りを上げているのは、サムスン、HTC、Xiaomi、ファーウェイ、ZTE、ASUS、アルカテルの8社で、日本メーカーはいまのところ含まれていない。
ヘッドセットに関しても、グーグルでは開発を進めている。新たにコントローラーも作り、手の動きに応じて、VRの世界で、物体を操作できるようになる。これまで、スマホのVRは、視聴するだけというのが一般的であったが、コントローラーがつくことで、操作性が向上し、ゲームの分野で一気に盛り上がりを見せそうだ。
ちなみに、ヘッドセットやコントローラーに関しては、グーグルが製作するものは、当初はNexusと同様の販売方式がとられるようだ。特定のメーカーとの共同開発で、グーグルブランドのVR製品を作ることで、市場を切り開いていく覚悟があると見られている。
立体認識「Project Tango」、この夏に対応スマホを発売予定
Google I/Oにて、もうひとつスマホ関連で注目だった発表が、Project Tangoだ。複数のセンサーやカメラを駆使し、スマホやタブレットが人間の眼のように被写体を立体的に捉えることのできる技術だ。廊下や部屋の床や壁、階段、家具など、周辺にあるあらゆる立体物を認識できる。
デモでは、壁の四角い部分の長さを測ったり、床を認識し、その上に恐竜を表示させたりする様子を披露していた。
これまで開発者向けのデバイスが販売されていたが、6月上旬にサンフランシスコで開催される、レノボのイベント「レノボワールド」にて、この夏にコンシューマー向けに発売予定の製品が発表されると明かされた。ちなみにProject TangoもAndroid Nで稼働するという。
Android Nの登場により、DaydreamのVRや、Project TangoによるAR/MRなど、新たな機能が一気に加わることが見えてきた。これらの技術を実現するには、処理速度の高速化や、画面解像度の向上、さらにセンサーを増やすなど、これまで以上に、本体スペックの高いスマホが要求されることになりそうだ。
ここ最近、スマホの機能に進化が求められない方向にあったが、Android Nにより、またスペック競争への流れが加速するかも知れない。