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“実質0円”廃止で来店客が大幅減、KDDI田中社長「現時点で読めない」

第3四半期決算は増収増益で好調

KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏

 KDDIは、2015年度第3四半期の決算を発表した。

 2015年4月~12月までの合計は、売上高が前年同期比3.8%増の3兆2990億円、営業利益が前年同期比11%増の6724億円となり、3期連続の増収増益となった。

 好調の要因は総合ARPA収入の増加で、前年同期比3.7%増、509億円の増加になっている。営業利益の進捗率は第3四半期を終えて82%と、好調に推移しているが、総務省のガイドラインに従って導入した施策などもあり2月以降の「幅が読み切れない」(田中社長)として通期の業績予想は据え置かれている。

 9日には都内で記者向けに決算説明会が開催された。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は、各施策が順調に推移している様子を解説し、12月から全国のauショップで取り扱いを開始した「au WALLET Market」の会員は170万件を突破したと紹介した。ジュピターショップチャンネルへの資本参加については、それぞれの強みを活かし、スマートフォンとテレビ通販番組を組み合わせた新番組を計画しているとした。こうした各種の施策を推進し、「3期(3年)連続で二桁成長を遂げたい」と、通期での好調な業績に意気込みを語っている。

 純増数は4~12月の合計で136万件だが、前年同期の146万件より少なくなっている。この要因については、「スマホシフトが進み、MNPの流動性も対前年で減っている。タブレットなどスマートフォン以外で純増数を増やしている。こんなもんかな、というのが本音」と、純増数の絶対値の低下は想定の範囲内であるとした。

2015年度第3四半期 決算説明会プレゼンテーション

タスクフォースへの対応、店頭施策に歪み

 2015年の年末に開催された総務省のタスクフォースと、それを受けたガイドラインの策定で、料金プランの追加や、端末の販売方法は2月から「実質0円」を廃止する方向になるなど、店頭施策をはじめ市場は慌ただしく変化している。

 タスクフォースがまとまった2015年12月18日には、高市総務大臣から3キャリアの社長にプランの値下げと販売適正化が口頭および文章で「要請」されたが、これには、キャリアから総務省に取組状況を報告することも記されていた。田中社長は、「1月末に報告している。その内容は、店頭における端末値引きを分かりやすく表示することと、端末の値引きについて、実質0円にならないよう販売奨励金も含めて適正化を図ること」と報告した内容を説明する。

質疑応答に応じる田中社長

1GBプランは「行政の要請により作った」

 タスクフォースやガイドラインにより追加される形となった“1GBプラン”については、3月からの導入のため、今期の業績に影響はないとしている。「行政の要請により作ったところもある。市場をみてどれぐらい出るのかは、想像がつかない。(1GBプランで)フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが進めばいいなと思っているが、数値は前提にはしていない」とし、仕方なく作ったプランであり、業績への関与には期待はしていない様子を語っている。

“実質0円廃止”2月は来店者数が大幅減

 総務省による覆面調査や密告窓口を設けているという点については「我々としては、実質0円にならないように頑張っていく。そういうことをされることにはコメントを控える。粛々とやっていく」としている。

 同社が新たに取り組んでいる「au WALLET Market」などは、auショップに来店するユーザーをターゲットにしたもので、2月に入ってからの大幅な来店者数の落ち込みに、田中社長は危機感を募らせている。店頭の様子を聞かれると、「大幅に減っている、来店者数にはそうとう影響が出るだろう。1月末の駆け込み需要をならして、落ち着いた後にどうなるのか、現時点では読めないというのが偽らざる認識」と率直に、一時的に見通しの悪い状況になっている様子を語る。2月以降の来店者数がどう推移するかも「注視する」と慎重な姿勢で、上記のように通期予想を据え置いた原因にもなっている。

 報道陣から「高市総務大臣がキャリアの第2弾、第3弾の取り組みに期待すると言っているが」と問われると、「今のところは考えていない」と不満気な表情で答えていた。

囲み取材に応じる田中社長

太田 亮三