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“ガラホ”やシニア/ジュニア向け、アップグレード――田中社長が語るauの戦略

 19日、auの2015年春モデルが発表された。スマートフォンのラインアップは、デザイン性を重視した「INFOBAR A03」、コンパクトな「AQUOS SERIE mini」、そしてシニア向けやジュニア向けと、ターゲット層が明確に異なる機種が並ぶ。フィーチャーフォンでは従来機種の後継となる「GRATINA 2」とともに、Androidベースの「AQUOS K」が登場した。

CMキャラクターとともに登壇した田中社長(一番右)

 新機種群が顔を揃える一方で、機種変更しやすくするための仕組み「アップグレードプログラム」も発表された。これらの取り組みは、スマートフォンの普及によって他社との違いを打ち出しにくくなる「同質化」への対策、スマートフォンをまだ手にしていない人たちに向けたもの、はたまた他社との競争上、ユーザーに長くauを使ってもらうための施策だ。国内の携帯電話市場では、新生活に向けた春商戦が最も活発になる、と言われる。その春に向けたauの狙いについて、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は何を語ったのか見てみよう。

冬モデルと春モデルで、幅広い選択肢の春商戦に

 プレゼンテーションはまず、冬モデル導入時にスタートしたVoLTEやFirefox OSを搭載したスマートフォン「Fx0」の紹介からスタート。司会役の平井理央とともにVoLTEのデモを披露するなど、冬の発表内容をおさらいし、その上で春モデルの紹介に入る。

 久々の登場となる「INFOBAR」の最新モデル「INFOBAR A03」については、「個人的には、やるなau、INFOBAR忘れてないよ、という気持ち」とこだわりがあることをアピール。シニア向けのBASIO、ジュニア向けのmiraieにも時間を割いて説明して、異なるユーザー層にとって手に取りやすい機種を用意し、冬モデルとあわせ「えらべる自由」というコピーにあわせた品揃えになった、と胸を張る。

スマホが浸透していないシニア、小中学生

 シニア向けの「BASIO」、小学校3年~6年生向けという「miraie」はどちらも、スマートフォンの普及率があまり高くない層に向けた機種とされる。

シニアの携帯保有状況
ジュニアの携帯保有状況

 田中社長は「50代、60代はまだまだスマホをお持ちじゃないんじゃないかな。(まだスマホを手にしていない)残りの人にぴったりなスマホを作らなきゃいけない」「小学生、中学生はスマホをエンジョイしていないが、この背景には料金の高さ、アプリで遊んでしまうのではないか、有害サイトにアクセスするのではないかという保護者の不安もある。他社に遅れて出すからには、究極のジュニアスマホを出したい」と述べて、それぞれ、ユーザーの声を聞き、不安や課題とされるポイントに手を打った機種を開発したのだという。
 なぜ今、セグメント(ユーザー層)を絞った機種を投入することになったのか、質疑で問われた田中氏の答えは「今でしょ」。以前の流行語を使ったものの会場をわかせなかった田中氏は「早く出せば良いのか、と言うとそうでもない。何度もアップデートしてきた」と述べて、試行錯誤を繰り返し、状況を見据えて今春が投入時期と判断したとコメント。auにおけるスマホの浸透率(上期終了時点)が52%であり、スマホをまだ手にしていない人が多いシニア層、ジュニア層に向けて、それぞれにあわせた端末とコンテンツ、そして料金などを1つのパッケージとして提案することが強みになる、とする。

AQUOS Kで「あたらしいステージへ」

 シニア向けなど、これからスマートフォンにしよう、という人々に向けて商品を用意しつつ、いまだスマートフォンそのものへの移行に足踏みする人々を意識して開発された機種が「AQUOS K」だ。LTE対応でクアッドコアCPUとそれまでのフィーチャーフォンよりも快適に操作できる仕上がりにし、タブレットを使う人にとっても連携しやすいようWi-Fiテザリングの親機になる機能などを搭載する。

 ケータイを選べる自由もあたらしいステージへ、というコピーを掲げた田中氏は「スマートフォンを持ちたいが、形はフィーチャーフォンのほうがいい。でもネットはタブレットで、という人はテザリングが欲しい。(AQUOS Kは)中身がスマホだから(テザリングが)一番よく使われるかな。ケータイとスマホの間にある機種。結構面白いんじゃないか」と自信を見せる。なお、テザリング向けという割に、シニア向けプランに含まれる0.7GBという通信量が少ないのでは、という指摘に「チャージできるので、それはそれでいい」とする。なお、AQUOS Kにおけるテザリングの利用料はこれまで通り。当初24カ月は無料だが、その後は月額500円かかる。

 かつてフィーチャーフォンが日本独自の進化を果たし、海外との違いが顕著になったことから揶揄の意味もなかば込めて使われ、今では少なくない人が単にフィーチャーフォンを意味する言葉として使う「ガラパゴスケータイ(ガラケー)」にちなみ、AQUOS Kを「ガラホ(ガラケー+スマホ)」と田中氏は呼び、そのAQUOS K向けに特化したアプリもいろいろと準備中と説明。

資料にも「ガラホ」

 一方、AQUOS Kでは、専用のauスマートパスが用意される一方で、EZwebやビデオパスは利用できない。こうした点に田中氏は「調査した結果、電話は昔ながらのフィーチャーフォン、コンテンツはタブレットというパターンがわかった」と解説する。スマートフォンの浸透は、世界的に見ても、全体の7~8割が天井との見方を示し、残る2~3割のユーザーには、今回のAQUOS Kのような機種、あるいは従来型のフィーチャーフォンが今後も必要と推測した。

 今回のAQUOS Kは、今後、通信ネットワークをLTEに一本化するための布石ではないか、という問いに「それとは別」と否定。LTEのサービスエリアを拡げていくと、最終的に3G(auはCDMA方式)が残るのはM2M(機器間通信)の分野だけで、それも2020年頃になるとしており、LTEに一本化するまではまだ時間があるため布石ではない、という説明だ。

auユーザーで良かった、と思ってもらえるように

 新機種群とあわせて発表された新たな取り組みは、「アップグレードプログラム」だ。月額300円を支払うと、18カ月経った時点で、次の機種を手にするとき、それまで使っていた機種の残債が0円になる。

 「au大好きプログラム」と田中氏自身は呼んでいるというこの施策は、もともと米国で同様のプログラムが先行して登場しており、それにならったもの。囲み取材で問われた田中氏は「18カ月ではなく12カ月でという人もいるだろうが、調査の結果、18カ月にした。プランとして(18カ月版、12カ月版)2つプランを作っても良かったがわかりにくくなる。端末販売を刺激する、というよりも、ずっとauを使っているのだから良いことがある、ということと、割賦の支払いを終える時期と新機種発売時期がずれることがあり、そこでも自由に選べるようになったら、という考えで導入することにした」と語る。

 ユーザーの囲い込みに効果があるのでは、という問いかけにも「ロイヤリティプログラムだから効くでしょうね」と述べて、継続利用を促す策としても期待していることを明らかにした。

 また、下取りプログラムとは別の施策になる、とのことで、ユーザーが機種変更する際には、下取りか、アップグレードか、どちらかを選ぶ形になるとした。

今年の学割は「パッカーン」、au WALLETポイント増量なども

 auでは、1月21日~5月31日にかけて学生を対象にした割引キャンペーンを実施する。新料金プラン「カケホとデジラ」では、データ利用料(5GB以上のプラン利用時)から毎月1500円の割引を2年間、そして旧料金プランの「LTEプラン」では月額利用料(誰でも割適用時で934円)が3年間無料になる。なお、LTEプランではパケット定額プランの契約は必須ではない。

 またau WALLETポイントの増量キャンペーンも1月20日~2月28日に実施される。イトーヨーカードーなどで決済すると、利用時に付与されるポイントが普段よりも増えるというもの。たとえばイトーヨーカドーでは200円につき2ポイント、レストランのサガミでは200円に3ポイントとなっているが、キャンペーン期間中は10ポイントに増える。

 CMキャラクターに俳優の松田 翔太(桃太郎)、桐谷 健太(浦島太郎)、濱田 岳(金太郎)を起用した今回、学割では桃太郎にちなんだのか、桃が割れるイラストともに「パッカーン」という擬音で、価格を大幅に割り引いたことをアピール。田中氏は、数回、「今回、結構がんばるでしょ?」と述べて、金額的に奮発した施策と強調し、さらに「パッカーン」というワードは流行語になって欲しい、とつぶやきつつ、今春は学生だけではなく、家族もしっかり応援したい、と意気込んだ。

CMそのままの衣装で登場した松田 翔太(桃太郎)、桐谷 健太(浦島太郎)、濱田 岳(金太郎)
アドリブが多かった、とCM制作の舞台裏を語る3人とMCの平井理央。ノースリーブの濱田は冬、海岸での撮影がこたえたようだ
トークセッションのなか、田中社長が登場、それぞれと握手
通常は黒子となる司会役だが、今回司会を務めた人気アナウンサーでもある平井理央にまで握手を求めると会場から笑い。これが自由なんだよ、と田中社長は言い張る

関口 聖