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楽天G、四半期黒字化達成 三木谷氏「モバイルがグループの成長ブースターに」
2024年11月14日 00:53
楽天グループは、2024年度第3四半期決算を発表した。IFRS連結売上高は1兆6176億2100万円、営業利益は-510億6600万円、損益は-1503億5800万円の赤字だった。第3四半期単体では営業売上高は5667億1200万円、営業利益は5億3800万円の黒字で、収益性は改善傾向にある。
四半期ベースで黒字化
2024年度第3四半期における売上収益(IFRS)は5667億1200万円。モバイルセグメントは前年同期比19.5%の売上増を達成した。第3四半期の売り上げ成長の40%が楽天モバイルによるもので、楽天グループ 三木谷浩史会長は「楽天モバイルが単なる大きな収益ビジネスになるだけではなく、楽天エコシステム成長のためのブースターになりつつある」と収益性が改善していることを強調した。
営業利益(Non-GAAP)は123億円で、前年同期比で534億円増。第3四半期は、楽天モバイルがMNOとして設備投資を本格開始した2019年度第3四半期以降で初の四半期黒字化を達成した。楽天モバイルの増収やコスト管理で損失を改善、楽天カードの増益も利益改善に貢献した。IFRS営業利益でも5億円の四半期黒字化を達成しており、EBITDAは922億円で前年同期比159.1%増となった。
モバイルセグメント単体では売上高は1060億円。営業利益は487億円の赤字だったが前年比で265億円改善、EBITDAは52億円の赤字だが前年比で305億円改善した。三木谷会長は「もうすぐEBITDA黒字化が見える水準に来た」と話した。2024年~2025年の財務上のリスクは解消されたとしており、設備投資の負担が大きい楽天モバイルの資金をセール・アンド・リースバックによる調達を行うなど、財務の健全化につなげる取り組みが行われている。
モバイル回線数は821万に
法人やMVNO、MVNEを含む全契約回線数は11月10日時点で812万回線に達した。短期解約を除くMNO解約率は1.09%という。ユーザー1人あたりからの利益を示すARPUは2801円。グループサービスの利用を含んだ数字で「目標とする3000円に近づいてきた」と三木谷会長は話す。MNO回線数としても、一般的に動きが低調という8~10月期も健闘しており、10月は前年同期比で46.5%増となった。
三木谷会長によれば、楽天市場や楽天カードなどの他サービスからの流入が多いという。さらに「最強家族プログラム」や「最強青春プログラム」で若年層の獲得が好調だった一方、シニア世代へのアピールに苦戦していたことから「最強シニアプログラム」導入でテコ入れを図るなどした結果、65歳~の年齢層の加入も増えた。
新規ユーザーも増えており、ARPU上はエコシステムに係る部分が減るものの、三木谷会長は今後エコシステムからの利益をさらに拡大していきたいと話す。その一環が先般、発表された「Rakuten Link」の生成AI機能で、今後はグループ内のサービスも含めてコンシェルジュサービスを実現してスーパーアプリ化を目指すとした。
競合他社がサブブランドで中容量帯のプランを強化する動きが出ているが、三木谷会長は楽天モバイルへの影響は低いと見方を示す。楽天グループ独自のエコシステムや国内通話やSMS無料、海外利用のしやすさなどを魅力としており「現在のプランでもまだまだ優位性が高いのでは」と話した。
また、あくまで楽天モバイルはシンプルなワンプランで勝負を続ける姿勢を明らかにした。そのうえで今後、高齢者に向けた詐欺被害防止のサービスやヘビーユーザーに向けた還元策のようなものも考えていきたいという。
通信品質の改善に向けて地下鉄では5MHz幅のところを20MHz幅に増強するほか、路地や人混みなどでの品質改善を進めているという。東京メトロでは2025年度中には20MHz幅化を完了する予定という。ほかに頻発する災害に向けて基地局の長寿命化なども進めている。また、衛星通信の「AST SpaceMobile」との取り組みや「Rakuten Symphony」でもさらに事業を拡大していく姿勢が示された。
すべてのセグメントで好調
インターネットサービスでは、2023年にふるさと納税の駆け込み需要があったために、成長率としては勢いが下がったものの、売り上げと利益の面でともにプラス成長を達成した。国外向けの事業ではロシア・ウクライナ戦争の影響で利益は低調ぎみだったが、回復基調は続いている。第3四半期としては黒字であり今後大きな利益が期待できるとされた。
フィンテック系は売上・利益ともにプラス成長。楽天銀行や楽天証券で継続的に顧客基盤が拡大した。楽天カードや楽天ペイメント、楽天銀行は大幅に増益したという。楽天カードはショッピング取扱高は6兆円。楽天証券の預かり資産は32兆2000億円で楽天銀行の口座開設数は1619万口座になった。みずほフィナンシャルグループと提携し、法人事業の強化を図る。