ニュース

NTT、スマートフォンを回転させて手足の器用さを定量的に測る手法を開発

 NTTは、スマートフォンを使って「器用さ」の度合いを簡単に可視化する方法を開発したと発表した。

 人間の動きはロボットと異なり、「ばらつき」が生じる。成長やトレーニングによって運動のばらつきがどのように変化するかを調べ、そのメカニズムを理解することで、脳の情報処理の仕組みを明らかにすることができる。そのため、NTTは、「動きのばらつき」をより簡単に計測する方法について検討を進めてきた。

 手や足の器用さに関する従来の評価は、特殊な器具を使用するために大規模な計測が困難だったり、手法として不十分だったりした。今回、測定を受ける人がスマートフォンを手に持つか足に装着し、15秒間ぐるぐる繰り返し回す運動をし、その際の加速度軌道のばらつき量を定量化する手法が開発された。

 4歳から88歳までの総計608名から得られたデータによると、ばらつき度は手足ともに、成長に伴って減少し、その後一定となり、加齢によって増大する。また、手足ともに、利き側のほうが非利き側よりもばらつき度が小さい。

手足の動きのばらつき度は成長と共に減少し、高齢で増大

 また、トレーニングがばらつき度の左右差に与える影響を検討するため、右利き、左利き、右手への矯正者(質問紙調査で右利き538人、左利き27人、右手への矯正43人)でそれぞればらつき度が評価された。右利きの人は左手の方がばらつき度が大きく、左利きの人は右手の方がばらつき度が大きい。右手を使うように矯正された人は、両手ともばらつき度が少ない。右手を使うように矯正トレーニングを受けた場合、右手のばらつき度が減少するだけでなく、左手のばらつき度は増えないということが明らかになった。

 足のばらつき度も、手の左利き、右利き、そして矯正のグループでそれぞれ解析された。手が右利きの人は、右足の方がばらつき度が少ないのに対し、手が左利きの人は、左足と右足のばらつき度に差がない。さらに、右手を使うように矯正された人は、通常足を使う運動の矯正はされないにもかかわらず、左足より右足のばらつき度が小さくなっていた。利き手を変えるトレーニングは、左手と右手の器用さ度合いの差を変化させるだけでなく、左足と右足の器用さ度合いの差にまで影響を及ぼすことが明らかになった。

右手を使うように矯正されると、手と足のばらつき度とその左右差に影響

 この研究は、スポーツ種別に則したトレーニング効果や運動リハビリによる回復過程を測定するのに役立つことが期待されている。今回の成果は、6月24日から開催される、コミュニケーション科学基礎研究所オープンハウス2024に出展される。

 今後は実験参加者を増やし、より信頼性が高い知見を得ていくとともに、競技等による手足の器用さ度合いの違いなどを明らかにするという。また、運動機能と脳情報処理の関係を探るツールとしての展開も目指される。