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「郵便局と駅の一体運営」や「貨物と乗客をひとつの列車に」、日本郵政とJR東日本が社会課題解決に向け連携を強化するための5本柱

左から日本郵政 取締役兼代表執行役社長の増田 寬也氏とJR東日本 代表取締役社長の深澤 祐二氏

 JR東日本と日本郵政、日本郵便は、社会課題の解決に向けた連携強化を目的に2月21日に協定を締結したと発表した。

 今後「郵便局と駅の地域コミュニティ拠点化」「持続可能な物流の実現」、「アセット活用による共創型まちづくり」、「地域産業振興と新たな地域事業創造」、「デジタル化による地域の暮らし支援」の5テーマで連携していく。

デジタル化や人口減少など社会情勢が変化

 日本郵政 取締役兼代表執行役社長の増田 寬也氏は、日本郵政グループでも、郵便業務の機械化やサービス改善、局舎内の搬送を自動化するなどオペレーション変革に取り組んでいるとする一方、急速なデジタル化の進展や人口減少などの社会環境の変化にさらされていると指摘。

日本郵政 取締役兼代表執行役社長の増田 寬也氏

 自治体の行政事務や物販ビジネスの高度化による買い物弱者支援など、少子高齢化などの地域の社会課題解決に向けて、地域の郵便局をハブとして、長期的な視点で取り組みを実施している。

 今回、その中で日本郵政グループと同じく地域に根ざしたネットワークを持つJR東日本と共同で社会課題の解決をすすめる協定を締結したと説明する。

 一方で、JR東日本 代表取締役社長の深澤 祐二氏は、JR東日本グループでも「変革2027」と題し、新たな価値創造を進めているとコメント。社会の変化をチャンスと捉え、成長、イノベーション戦略を再構築、経営体質を抜本的に強化することで、将来にわたる継続的に高品質なサービスを提供することを目指しているという。

JR東日本 代表取締役社長の深澤 祐二氏

 JR東日本グループの総合力を発揮することで、地域の関係人口を拡大し地域産業を活性化、日本経済を支えるまちづくりなど多くの課題に取り組むほか、ローカルDXを進めるなど、地域の発展に繋げていくとしている。今回の協定で、両社の連携を加速させ、社会課題の解決に挑戦していきたいと説明する。

取り組む5つのテーマ

郵便局と駅の地域コミュニティ拠点化

 人口減少や高齢化、居住地の顕在化などで地域内の横のつながりが希薄化しているほか、住民同士でコミュニケーションを取る場所や買い物が楽しめる場所が少なくなってきており、地域の暮らしから楽しみや賑わいが失われている。

 この状況を解決すべく、郵便局や駅を地域のコミュニティ拠点化することを目指す。

 両社は、これまでにも駅と郵便局の一体運営に取り組んでおり、これをさらに拡大させる。具体的には、今夏に内房線安房勝山駅、2025年春に宇都宮線蒲須坂駅、2025年夏頃に外房線鶏原駅で一体運営を実施する。中長期的には、地域住民が集えるラウンジや、行政窓口機能の導入、グループ商材の取り扱いなど地域ニーズに応じた機能を付加して拠点化していきたいという。

持続可能な物流の実現

 物流業界の2024年問題(労働時間に関する規制が敷かれる)や輸送能力の逼迫予想、環境問題などへの対応が求められている中、持続可能な物流の実現に取り組むべく、これまで日本郵政グループでは、EV車両の導入や新幹線を活用した荷物輸送などへ取り組んできた。

 2024年度には、駅の多機能ロッカーにゆうパック受け取りサービスを導入し、集荷や再配達の負担を軽減する。また、双方のネットワークを組み合わせた輸送の省力化や環境負荷の軽減を目指した物流デザインの共同研究を推進し、中長期的には輸送量あたりの二酸化炭素排出量を約1/10とし、環境性能の高いJR東日本の鉄道ネットワークとラストワンマイルに強い郵便ネットワークによるリレー輸送や、貨客混載などを進めていく。

アセット活用による共創型まちづくり

 ターミナル駅や駅周辺の郵便局の建物更新が進まないと都市全体の機能強化が遅れ、都市全体の魅力や競争力が失われてしまう恐れがあるため、両社のアセットを活用し、共創型のまちづくりへの取り組みを加速させる。

 直近の取り組みとしては、JR秋葉原駅と御徒町駅間の高架下に、「未来の郵便局プロジェクト」として「SOZO BOX」を開業させる。

 中長期的には、全国の都市部から地方の駅周辺にある郵便局やターミナル駅周辺で、都市の魅力を高めて日本の国際競争力強化に資するまちづくりを目指すとしている。

地域産業振興と新たな地域事業創造

 地域で支えてきた産業が、高齢化や後継者不足により衰退し、地域経済の疲弊や空き家の増加につながり、若者の働く場が牛なられ、都市へ流出する悪循環が発生している。

 両社のグループでは、これまでも地域と連携しながらさまざまな領域で取り組んできたが、今後は両社の地域ネットワークを連携させ、より多様で魅力的な地域の商材を取り扱うコーナー展開や、郵便局や駅ナカでの提供を実施していく。

デジタル化による地域の暮らし支援

 これまでも、郵便局でのオンラインスマホ相談や窓口、駅ナカ、子ども食堂におけるオンライン英会話教室など、生活に身近な場所でデジタル技術に親しめる取り組みを進めてきた。

 今後は、両社グループのリアルな顧客接点を活用し、リアルとデジタルを掛け合わせて駅でのオンライン診療サービスの拡大や処方薬の集荷などの分野で連携していく。

 また、1億2000万口座あるゆうちょ銀行と、2500万枚発行されているモバイルSuicaを連携させ、地域の暮らしに便利なキャッシュレスサービスを提供し、地域の生活利便性の向上にも貢献していきたいとした。具体的な取り組み内容はまだ決まっておらず、今後両社協議の上内容を詰めていくという。