ニュース

携帯電話の仕組みを守るウラ側、明日に備えるドコモの災害対策

 どこでもつながるのが当たり前と思われる携帯電話。しかし、その当たり前を維持するのは必ずしも簡単ではない。災害発生時やその復旧過程の裏には、サービスを維持するために昼夜を問わず動き続ける人達がいる。

携帯電話の通信網を監視する

 東京都に存在するNTTドコモの「ネットワークオペレーションセンター」はそのひとつ。北海道から東海までの地域を担当しており、関西以南は「西日本オペレーションセンター」が管轄する。2つの施設は仕組みを共有しており、どちらかのセンターが罹災した場合や業務で手一杯になった場合、片方がその業務を引き継げる仕組みになっている。

 その業務は、ネットワークの設備を監視し、異常があれば復旧に向けて対応することと局所的な混雑への対応などネットワークそのものの監視の2つに分かれている。NTTドコモ サービス運営部 ネットワーク統制の太田昌宏氏によれば、ネットワーク監視、現地復旧措置、高度技術支援と体制が分かれており、全国で2000名の人員を擁するという。

NTTドコモ ネットワーク本部 サービス運営部 部長 小川将海
同 ネットワーク統制 担当部長 太田氏
同 災害対策室 塩野氏

 実際にトラブルが発生した際には、オペレーションセンターから遠隔で再起動や代替装置への迂回などを行うが、それでも復旧できない場合は、機器の交換など物理的な対応を行うことになる。近年は総務省やWebサイトでの状況報告などの業務も担っているという。

 あわせて「ゼロタッチオペレーション」を、2022年春から国際監視業務で取り入れた。AIが故障内容を確認し、自動的に対処。複雑な故障や大規模障害などを除いて人の手を離れて監視業務を自動化する。最大75%効率化できるとしており今後、国内の監視業務にも取り入れ、将来的にはオペレーションセンターの業務の完全自動化を目指す。

ネットワークを監視するオペレーターとその設備
基地局の状況を表す画面。赤はサービスに影響あり、紫は影響なし。黄緑は対処済みで青は混雑していることを示し、黄色は混雑解消のための規制中を示す
ネットのトレンドもチェック(中央上)。基地局の場所を示す画面も(中央下)
交換機を監視するオペレーター。パケット・音声通信のサービス状態などがわかる画面

大ゾーン基地局など災害への備え

 NTTドコモ 災害対策室の塩野貴義氏は、平常時からの信頼性向上のほか、有事の際にも緊急通報確保、通信サービスの早期復旧を災害対策の3本柱として掲げる。

 東日本大震災時には、全部で4900ほどの基地局がダウンした。しかし、直接的に地震や津波による被害は少ない。大方の原因は、停電でのバッテリー枯渇や光ファイバーとの伝送路切断が原因だったという。

 そうした教訓から得た、災害対策の大きなポイントのひとつとなるのが「大ゾーン基地局」だ。1基で最大半径7kmをカバーできるもので全国で106カ所設置されている。東京都には全部で6カ所。そのうちのひとつが、東京のオペレーションセンターに設置されている。

大ゾーン基地局のアンテナや無線装置など設備。地上約140mに位置する
左=地上約140mから地上の眺め。右=地上からの眺め。ビルの出っ張った部分に大ゾーン基地局がある
オペレーションセンター屋上からの眺め

 オペレーションセンターが入るビルのほぼ屋上付近に位置しており、2GHz帯や1.7GHz、1.5GHz帯、800MHz帯の4G LTEで運用されている。周波数ごとに異なる伝送路を用いて信頼性向上を図っているという。東京のオペレーションセンターに設置された大ゾーン基地局の場合、周囲約280基地局をカバーでき北は東京駅、南は蒲田付近までをエリア化できるという。

 外から見ると、シートで覆われたその内部にはアンテナを始めとした、基地局の設備が並ぶ。もの自体は通常の基地局と変わりなく、高いビルの上に設置されていることが特徴。これは、遮へい物を避けてより広いエリアを確保するため。

 ビルの四隅に同様の設備があり、最大で4万2000端末を同時接続できるという。最大の半径7kmをカバーした場合、平常時ほどのスピードでの利用は難しいとのことで、あくまで災害時の情報収集などの利用にとどめたほうが良いとみられる。このほか、全国2000局の「中ゾーン基地局」も設置が進む。

 さらに全国1900局で無停電化・バッテリー24時間化のほか、移動基地局車や車両が入れない場所にも持ち運べる可搬型衛星基地局、移動電源車などを揃えるほか、船舶型やドローン搭載の基地局なども新たに揃えている。

今後、予想される首都直下型地震への備え

 今後、発生の可能性が予見されている、首都直下型地震。ドコモとしては、発災直後の輻輳、電源枯渇による不通エリア拡大、避難者・帰宅困難者による殺到など3つの対策すべき状況が想定される。輻輳に対しては、通信を規制し緊急通報などが滞らないように務めるほか、災害伝言板や+メッセージなどパケット系サービスの利用を促す。

 電源の枯渇による不通エリアへの対策には、前出の大ゾーン基地局を用いるほか全国で被災エリアを支援する体制を整えている。南海トラフ地震にもあわせて支援マニュアルが作成されており、これに従い支援人員・物資を被災地へ届ける。避難所での充電サービスや帰宅困難者へ自社ビルの開放も行うとされており、実際に、北海道胆振東部地震の際には自社ビルを開放した実績がある。

 同社では、自社グループ内での訓練と同時に、自衛隊や海上保安庁などと連携した合同訓練などを実施するなど、災害への備えを整えている。大ゾーン基地局が稼働した実績は、現時点で北海道胆振東部地震での1度だけ。起きてはほしくない災害だが、こうした備えが万が一のときに誰かを救うことになるかもしれない。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、記事中の用語と登壇者名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。