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コロナ接触通知アプリ「COCOA」で行動を変えた人は約7割、デジタル庁が報告書

接触通知「あり」は20代で約35%、65歳以上は5%

 デジタル庁は、2020年6月に提供を開始した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」の取り組みに関する総括報告書を公開した。

 「COCOA」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人との接触を通知するためのスマートフォン向けアプリ。2022年11月に最終のアップデート版が配布されており、通知サーバーの運用は2023年3月末までに停止をもって、システム全体の停止が予定されている。

 同アプリは、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(以下、「HER-SYS」)に登録されることを前提とした仕組みであったが、2022年9月からは医療機関で陽性と判定された人でも、発生届けの対象が重症化リスクの高い高齢者などに限定されるようになった。こうした変化をうけて運用が見直しされ、同年11月に簡単に機能を停止するための最終版が配信された。

ダウンロード数と陽性登録数の推移

 最終版のリリース前日までのダウンロード数は約4128万件、陽性登録件数は369万件にのぼる。ダウンロード数は、2020年6月のリリースから3カ月で1700万件に達した。

 これは民間を含めたアプリの中でも類をみないペースである。また、政府からの呼びかけや各アプリストアで検索しやすくするなどの取り組みによって、一定のペースでダウンロード数が増加した。

 陽性登録件数は、2021年12月の処理番号自動発行機能を実装してから大幅に増加した。2022年夏の新規陽性者の大幅な増加は、陽性登録件数の大幅な増加に表れており、処理番号を自動発行したことの効果と分析している。

 報告書では、「COCOA」の開発・運用に要した費用を契約総額で12.7億円とまとめた上で、ダウンロード件数(累計)の4128万件で割ると、ダウンロード1件あたりの費用を約31円と算出している。また、累計の陽性登録数で算出すると1件あたり344円になる。

 報関係者へのヒアリングの結果として、「COCOA」への取り組みはコストパフォーマンスが非常に良かったとする意見が掲載されている。これは、ドイツでは同様のアプリ開発に30億円をかけたことや、イギリスではリリース後に作り直しが発生したことと比較して、国内では2020年度の費用が約3.8億円で提供に至ったことが背景にある。ただし、これには「COCOA」が動作する前提となるHER-SYSに関する開発・運用費用は含まれていない。

「COCOA」をインストールした理由

 「COCOA」の利用者に対するアンケートでは、インストールした理由で最も多かったのは「自分自身に対する感染リスクが分かると思ったから」が50.8%で最多となり、次いで「自分自身が感染したときに、接触したひとにリスクを伝えられると思ったから」が30.4%で2番目に多くなった。

 年代・性別で区切ると年齢層が高くなるほど「自分自身に対する感染リスクが分かると思ったから」とする回答が多くなった。また、10代から20代の女性は、他の年代性別と比べて「勤務先・通学先・イベント主催団体の強い推奨があったから」とする回答が多くなった。

接触通知の受け取り、年代別では20代が最多

 アプリでの接触通知を受けた経験があると回答したのは20代が最多。一方、65歳以上では5%にとどまった。また、詳細な年齢は集計されていないが、18歳以下と同居している利用者は接触通知を受けた回数が多いとされた。

接触通知で7割が行動変容、20代後半から30代はより高い

 アプリによって接触通知を受け、普段と異なる行動を取ろうとしたかを尋ねるアンケートでは、普段と「異なる行動を取ろうと考えた」または「何らか普段と異なる行動を取った」とする回答が20代後半から30代で高くなり、15〜19歳と50代〜64歳までは低くなった。

 アンケートで行動変容に繋がる割合が低かった年代では、「普段と異なる行動をする必要性を感じなかった」や、「通知を受けたあとにどういう行動をしてよいか分からなかった」とする回答が他の年代よりも高くなった。

 報告書では、利用者アンケート結果によって接触通知を受け取った人のうち7割以上が他人との接触を避ける行動をとったため、「他人との接触を避ける行動を促す」効果が一定あったとまとめている。

 「COCOA」を利用して良かったことは「特に無かった」とする回答が全年代で最も多く、年代が上がるほどその割合は高い。「自分自身に対する感染リスクが分かった」とする回答が2番目に多くなった。

 一方で、接触通知を受けた利用者に限定すると、利用して良かったことが特にないとする回答は33.5%に減少し、2回以上接触通知があった利用者では、18.0%まで減少した。2回以上の接触通知を受けた人で最も多かった回答は「勤務先・通学先・イベント主催団体からの強い推奨に応じられた」が最も多く、2番目に「自分自身に対する感染リスクが分かった」が続いた。

接触通知が正常に届かない不具合、4カ月以上継続

 Android版においては、2020年9月28日に配信を開始したアップデートに含まれた不具合の影響で、接触通知が受け取りできない不具合が4カ月以上継続した。報告書では、「国民の信頼を失う事態を招いた」としている。

「COCOA ログチェッカー」による機能補完

 「COCOA」は、陽性判定を受けて「COCOA」アプリで陽性登録を行った人との接触時間を表示する機能があったが、日付別に接触件数や接触時間、平均および最短距離などを表示できる「COCOA ログチェッカー」が有志によって開発・公開された。

 「COCOA ログチェッカー」については、アプリの機能を補い、「COCOA」の利用促進に効果があったと分析しているほか、「COCOA」自体にも同様の機能を持たせるべきであったという意見も出された。