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「サステナブル」を新たな競争軸に、FCNTが「arrows N」で見せるスマホの新たな価値

 NTTドコモは2月10日、FCNT製のAndroidスマートフォン「arrows N F-51C」を発売する。発売に先駆けてFCNTが東京都内で発売記念イベントを開催した。

左からGab 山内萌斗氏、NTTドコモ 松野亘氏、FCNT 外谷一磨氏、FCNT 荒井厚介氏

 FCNT 代表取締役社長 社長執行役員の田中典尚氏は、FCNTが2022年に創立7周年、富士通時代から数えて、携帯電話事業30周年を迎えたことを紹介。arrowsをリブランドし「サステナブルな社会の実現に向けて尽力してきた」とコメント。「arrows Nを通じて社会貢献し、それにより我々の事業への理解も深めてもらえたら」と語った。

FCNT 田中氏

“F”の次の挑戦

 FCNT プロダクト&サービス企画統括部 プリンシパルプロフェッショナルの外谷一磨氏は、富士通、富士通コネクテッドテクノロジーズ時代も含めて同社がさまざまな挑戦をしてきたことを紹介。「早すぎると揶揄された」としつつも、次の当たり前を具現化してきたと自信をのぞかせる。

 そのうえで「次の30年にすべきことはなにか」と問いかけ「サステナビリティ」の追求を示した。同氏によれば、携帯電話(スマートフォン)が排出するCO2は1億4600トン。製造時に排出されるのはそのうち8割ほどにのぼるという。また、世界中でおよそ43トンほどの携帯電話が廃棄されている指摘する。

 製造拠点を国内に持つ同社の強みを活かして、製品だけではなくサプライチェーンやユーザーが手放した後にも配慮した製品開発の仕組みづくりに取り組む。スマートフォンがコモディティ化して、差別化が難しくなるなか、環境性能を新たな付加価値として提供する。

 同社では2023年中に国内製造の使用電力に再生エネルギーを取り入れ、CO2排出量のおよそ43%削減を目指すほか、その後2025年にはarrowsやらくらくホン、フィーチャーフォンを含めてFCNT製品の全ラインアップに環境へ配慮した素材を取り入れると説明した。

 外谷氏は「スマートフォンの新たな競争軸に「サステナブル」を取り入れたい。まずは第一歩を我々が踏み出す。そこにいろいろな競争が起きることで、しのぎを削り、協力しあい全体的な取り組みが進む」として、そうした土壌を作り上げることが今回の目標であるとした。

4年使えるバッテリー

 FCNT プロダクト&サービス企画統括部 プリンシパル クリエイティブ プロフェッショナル荒井厚介氏は、2022年のarrowsのリブランドについて社会、FCNTが提供する価値、地球環境の3つの変化が背景にあると説明する。

 arrows Nは、本体のおよそ67%に再生プラスチックや再生アルミニウムなどの部品を採用。従来モデルではほとんど0%だったが、大幅にその使用率を引き上げたところが、開発における大きなチャレンジポイントだったと説明する。サウジアラビアのサウジ基礎産業公社(SABIC)が市場から回収したCDやペットボトル、自動車のヘッドライトカバーなどを含む原料の再生プラスチックや「Pixel」シリーズのサプライヤーと同じ再生アルミ部品が取り入れられている。

 一方で、環境性能だけではなくスマートフォンとしての基本性能もおさえた。カメラについては前モデルの「arrows NX9」からセンサーサイズが1.65倍に向上した、1/1.5型を採用する。明るく夜景を撮影できる「スーパーナイトモード」を搭載。arrowsとしての便利機能「FASTウォレット」なども継承する。

 本体がエコな素材というだけではなく、長い期間使えるように新品時のバッテリー持ちが4年間続くともうたわれている。これは米国のバッテリー関連技術を開発する企業であるQnovoの技術を採用した。さらに、Androidのバージョンアップはarrowsシリーズで最も多い3回、セキュリティアップデートは最長4年を予定する。

arrows N誕生の経緯、価格への考え

 ドコモでの本体価格は一括で9万8780円。この価格設定について指摘する声もあるが外谷氏は「そういう声は承知しており、真摯に受け止める」とコメント。価格設定についてはさまざまな要因があり一概には言えないとしたうえで、長期的なソフトウェアサポートなどもそのひとつの要因であることを明かす。多くのユーザーに使ってもらうことでスケールメリットを活かすかたちでコストダウンにつなげていければとした。

 そのうえで、長期利用に耐えるだけのカメラやバッテリーなどのスペックを用意したとも語り「トータルバランスでご理解いただければ」と語った。

 開発の背景には、ドコモ内での環境配慮製品への機運の高まりがあると、NTTドコモ プロダクト部長の松野亘氏は説明。ちょうどFCNTから環境配慮型のデバイスの提案があったことから、arrows Nが生まれることとなった。

 荒井氏は、素材の選定などに加えて、安全性や性能をどう担保してチャレンジするかという点で今までにない苦労になったと明かす。長く使われることを前提に古さを感じさせないよう「将来の当たり前を先取りしてデザインに落とし込んだ」とデザインのポイントを語った。

エコにつながるアプリや販売後の環境にも配慮

 販売元となるNTTドコモでは、自分の行動がどれだけCO2削減などにつながっているかを測定するアプリ「カボニューレコード」を提供しているほか、arrows Nにはペーパーレス化につなげられる「Adobe Scan」などをプリインストールする。

 さらに、伊藤忠商事とオランダに拠点を構えるグリーンテック企業のClosing The Loopと連携した廃棄物保証サービスを用意。arrows Nが1台販売されるごとにアフリカで不正な方法で廃棄される携帯電話1台が適正にリサイクルする。

 アフリカでは、おもに先進国から輸出された携帯電話が年間3億台ほど不正に廃棄されており、レアメタルなどを目当てに近づいた地元住民が有害物質で健康を害するなどの被害が絶えない。FCNTでは、製品を販売した後にも環境問題に取り組み、地球環境への貢献を図る。当初は5000台限定とされている。