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ドコモ井伊社長、楽天モバイル0円廃止に「経営者として真っ当な判断」
2022年6月15日 12:57
NTTドコモの井伊基之代表取締役社長が15日、本誌インタビューに応えた。
インタビューは、法人事業の強化や店舗戦略など多岐に渡ったが、本稿では、楽天モバイルの料金改定をきっかけに、設備投資に関する井伊社長の話をまとめた。
――最初に、直近の話題からお願いします。5月に楽天モバイルが料金改定を発表しました。「1GBまで0円」を撤廃するというものです。
井伊氏
他社さんの戦略について、私はなにか言える立場ではありません。(楽天の)三木谷さんも思いがあってサービス開始時に「0円宣言」を打ち出されたのだろうと。
ただ、「0円」って、はっきり言って収入がないモデルです。最初の加入者をたくさん引き付けるためのキャンペーン的なものとしてはあり得るんだけど、「最初の料金プラン」として 0円プランをしっかり出したっていうところは、当時、新鮮な驚きでしたね。
(サービスエリアを作り上げるという)巨額な設備投資が必要なモバイル通信事業において、どうやって回収するのかな? っていうのは、当時思いました。
だから、今回、(0円を)お辞めになるという判断は、経営者としては真っ当なお考えだなと思ってます。その間、おそらくお客さんもたくさん集められたんでしょうから、目的は達したんだろうなと思ってます。
ただ、「0円」を辞めることによって、お客さまの流動性(携帯電話契約を乗り換える動き)があらためて高まりました。まあ、他社さんは、追撃していろいろと追加のキャンペーンなどを出されますが、うちはそれをやらずに従来通りのまま、「エコノミーMVNO」や「ahamo」も変えずにいます。
――0円で利用できるということで、通信サービスとしての収入がない一方で、ほかの経済圏全体で稼ぐという考え方を、楽天モバイルではかねてより示していました。0円はともかく、構造自体は、ドコモの場合もスマートライフ事業で収益を伸ばしており、似ているところがあります。やっぱり、「0円」かそうじゃないか、というのは大きな違いですか?
井伊氏
はい、構造は確かにそうです。通信サービスで顧客基盤を確保し、実際の収益・利益はその上の付加サービスという戦略は、他社さんもおそらく同じです。
逆に楽天さんの場合は、付加サービスのほうが、Eコマースをはじめとして、充実しておられた。最後に顧客基盤を通信サービスでしっかり獲得しようとしてた、という構図でしょう。
でも、「0円」は、今の大容量を必要とするプランを使う方ではない。たとえば映像コンテンツのような、容量をたくさん使うサービスはたぶん「0円戦略」とはうまく合致しない。Eコマースのような大容量が必須ではないサービスとは合う。ですから、楽天さんは戦略通りに進められたのでしょう。
とはいえ、設備投資が相当大変で、何期か連続で赤字決算となれば、抜本的な収益戦略を見直さなければならないのは、上場企業としては当然の判断。投資家さんから見れば、軌道修正するのは、経営者として当然の判断でしょう。
そうした大きな変化があるとお客さまは動きます。価格弾性、つまり安いほうに動く方は乗り換えますよね、付加サービスで引き付けたわけではないですから。そこを魅力に感じてもらえていれば、たぶん、他社へは乗り換えない。だから何%かは振り落とされるんでしょう。
――他社のインタビューで、井伊社長は「安いほうに動く方は、ロイヤリティが低い」といった表現をされていましたね。
井伊氏
はい、そう思います。
――そういった方を獲得して、付加サービスを使ってもらう、というのはやはり難しいですか。
井伊氏
ポートフォリオとして、「通信事業で赤字を出して、付加価値事業で黒字を出し、組み合わせて黒字にする」という考え方だと思うんですけど、健全な事業は、通信事業だけ見ても、基本的にはあの収支をトントン以上にしないと。通信サービスの赤字を違う事業で埋めるっていう事業ポートフォリオはやはり健全じゃないですよね。
コスト削減など別の手段を使って、失った収益をどうカバーするか考えないといけません。しかも設備投資が必要です。
設備投資が伴う産業で、ずっと赤字が拡大するっていうのは、やっぱり、かなり厳しい経営になります。
設備投資は、ずっと続きます。「(基地局を)展開し終える」ことはないです。5G が終われば、次は6Gです。作ったものは保守しなければいけません。
携帯電話事業は、投資が必ずある産業です。減価償却が必ずあります。他社さん含め、「値下げして投資をする」っていうのは、もう、今大変なモードなわけですよ。
普通、料金を下げたら投資は抑制するべきなのに、(国の政策として)5G拡大も期待されてるもんだから、これ、実は真逆の行動なんですよ。
だから、どこかでコスト削減しない限り(料金値下げした通信サービスは)赤字になりますよね。