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KDDIがタイ・バンコクにデータセンター「TELEHOUSE Bangkok」を新設へ、そのねらいは?

 KDDIは12日、タイ・バンコクにデータセンター「TELEHOUSE Bangkok」を2023年春を目処に新設すると発表した。

 投資額約100億円をもって同データセンターを建設する背景には、5G通信などによる通信の高速化や、コンテンツのリッチ化などがあるという。

 発表会では、KDDI 執行役員 ソリューション事業本部 サービス企画開発本部 副本部長の丸田 徹氏と同コネクティビティ・DC企画部長の柳澤 健之氏が、現在のデータセンターの役割と世界の現状などを説明した。

トラフィックの爆発的増加とデータセンターの成長

 丸田氏は、世界のトラフィックの40%に及ぶ「エンターテイメント分野」のコンテンツについて、「5Gの登場で、よりリッチコンテンツの配信が可能となり、データ量が増えていくと予想されている」と分析。データセンターについても、ますます重要な位置づけになるという。

 実際に、2017年~22年の間年率26%の割合で世界のトラフィック量が増加しているというデータもあり、このままの増加割合で進むと、2027年には17年の10倍、2030年には20倍のトラフィック量と計算できる。

 日本国内においても、総務省発表のブロードバンド契約者の総トラフィック量は、2019年5月からの1年間で60%近くトラフィック量が増加しているという。これらのトラフィック爆発は、当面の間進んでいくと考えられている。

 トラフィック量増加を牽引する要素として丸田氏は、「インターネットユーザーの増加」や「インターネットに接続されている端末の増加」「5Gなどによるインターネットアクセス速度の向上」「動画トラフィック割合の増加」を挙げた。

 なかでも、動画トラフィックの増加は、動画視聴機会の上昇に加え、通信速度の向上とともに動画の画質が向上してきており、トラフィックが上昇する要因になっているとした。

 これらの動画コンテンツなどのデータはすべて、データセンターを通過していくことから、トラフィック爆発を支えるため、データセンターの市場が成長していくとしている。

TELEHOUSEの役割

 データセンターの種類として丸田氏は、動画コンテンツなどをもつ「ハイパースケールデータセンター」と「インターコネクションデータセンター」の2つを取り上げた。コンテンツの拡充やリッチ化に伴い、多くのデータを保管するハイパースケールデータセンターだが、エンドユーザーに配信する際、対インターネット事業者と1社ずつつないでいくと、ネットワークがすごいメッシュ構造になってしまうという。

 これを解決するため、ハイパースケールデータセンターとインターネット事業者がつながる場として「インターコネクションデータセンター」を設置し、相互に接続するポイントとして提供すると説明。

 KDDIでは、1990年頃にネットワークでつながるデータの拠点ということで「TELEHOUSE」事業をスタートし、日本は東京・大手町、ヨーロッパではロンドンなど世界各地に拠点を置き、データセンターを発展させてきたとしている。

 この、インターコネクションデータセンターの市場も、トラフィック量増大につれて拡大してきており、TELEHOUSE事業もこれまで評価されてきた接続性や信頼性を高めて、インターネット発展に貢献していくと説明した。

バンコクにデータセンターを置くねらい

 丸田氏は、アジアのトラフィックの集積拠点として「香港とシンガポールであることは有名」としながらも、今後この拠点が国単位にできてくると想定しているという。

 柳澤氏は、バンコクについて「インターネット環境が進んでおり、モバイル決済利用率やインターネットゲーム利用者割合が世界で1位となっている」と説明。

 また、ユーザーのほとんどがブロードバンド環境が利用できることや、トラフィック量についても急成長を遂げていることをふまえ、これに牽引されてデータセンター市場も拡大するとしている。

 なお、データセンターの拠点としてすでにシンガポールや香港があり、タイとシンガポールについても近いところにはありながら、直線距離で2000km程度あることから、ユーザーのレスポンス性の低下が発生することが懸念されると説明。また、この改善には両国間の回線容量の増強が必要だが、コストが増強する分増加していくと指摘。

 国内にデータセンターを設置することで、回線増強なくタイローカルでコンテンツの配信が可能となり、高品質のクラウド環境を提供できる。

 バンコクでは、キャリア系データセンターが分散している実情があり、キャリアごとに開通回線コストや手間が発生しているが、今回開設するインターコネクションデータセンターにより、同一のデータセンター内の構内配線で結ぶことができると説明する。

 なお、災害対策については、水害リスクが低いバンコク中心部に設置するほか、通信線を4ルート確保するなど冗長性を確保している。

 このほか、現地の環境が整い次第カーボンニュートラルに配慮した電力の供給なども進めていくとコメントしている。

現地法人と施設の概要

 KDDIは今後、東南アジアにおけるデータセンター事業の拡大を図っていくとしている。