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ドコモの21年度第2四半期決算は増収減益、井伊社長「想定よりも良い」

 NTTドコモは10日、2021年度第2四半期決算に関して、オンライン会見を実施した。

 会見には、代表取締役社長の井伊基之氏、常務執行役員 経営企画部長の山﨑拓氏、執行役員 財務部長の小林啓太氏が登壇した。本記事では、会見と質疑応答の内容をお届けする。

写真左から小林氏、井伊氏、山﨑氏

通信障害に関する謝罪

 会見の冒頭で井伊氏は、10月14日に発生した通信障害に関して「多くのお客様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」と謝罪。

 総務省に対し、電気通信事業法の重大な事故としての報告が済んでおり、「今回の事故を深く反省し、全役員と全社員をもって、お客様に今後安心してサービスをお届けできるよう一層努力する」と述べた。

決算概況

 続いてNTTドコモの決算概況が説明された。2021年度上期において、同社の営業収益は前年同期比337億円増の2兆3162億円、営業利益は673億円減の4963億円。

 増収減益の決算となったが、井伊氏は「さまざまな戦略的な取り組みの結果であり、むしろ想定よりも良い。営業利益は結果的に減益になったが、年間の増益に向けては順調」と語った。

 営業利益に関して、前年度の第2四半期決算では会計制度の特殊要因があり、この要因を除いた場合、2021年度上期は約400億円の減益に。今回の第2四半期でも、特殊要因を除くと、対前年比40億円減となり、同第1四半期では約360億円減を記録していたため、「第2四半期では減益が少し改善している状況」と井伊氏。

 営業収益では337億円の増収を実現したが、最も大きく影響を与えたのは機器販売だったという。井伊氏は「(昨年度はコロナ禍による制限があったが)今年度は営業活動にしっかり取り組めた」「ahamoなどの料金施策が好調で、端末の売れ行きが良かった」と振り返った。

 設備投資に目を移すと、ネットワークコストは前年度に比べて大幅に増加した。井伊氏は「前年度の下期から5Gネットワークの強化に取り組んでいるほか、6Gなどの将来を見据えた投資も行っており、その影響が出た」とコメントした。

 今後の見通しについて同氏は、「5Gのネットワークについては前年度下期から取り組んでおり、今年度下期においては減益要因にはならない。また、前年度に3G資産の除却を前倒しで進めたため、ネットワークコスト全体は今年度下期で削減される見込み」と語る。

 営業関連費用についても、「上期は端末販売に伴う割引などで(営業関連費用が)増加したが、下期ではそういった影響もなくなる。また、DX化を推し進めて販売関係チャネルのコストも削減していく。当初掲げた目標を上回る努力をしていきたい」とし、年間の業績目標の達成に自信を見せた。

セグメント別の実績

 セグメント別に実績を見ると、通信事業は営業収益が355億円増、営業利益が607億円減という結果になった。ただし、会計の特殊要因を踏まえて考えると「通信事業は530億円程度の減益になる」(井伊氏)。

 通信事業に関して、下期ではコスト削減などに取り組み、通期では対前年比で110億円の減益まで回復させることを目指す。

 スマートライフ領域については、会計の特殊要因を踏まえると、対前年比で120億円の増益となる。井伊氏は「金融決済事業を中心に、増益基調に転換できてきた。下期もこれを拡大し、通期ではスマートライフ領域を対前年比で180億円の増益にする」と語り、通信事業・スマートライフ領域をあわせたかたちで増益にすると意気込む。

営業利益の増減要因

 営業利益の増減要因に関して、値下げなどの影響により、モバイル通信サービスは243億円の収入減を記録。これを光通信サービス収入などで持ち上げ、トータルとしては88億円減となっている。

 販売が好調とされる機器収支は、値引き負担が増加したため180億円減となった。

 ネットワーク関連費用に関しては、5Gネットワークの強化などによる影響で、276億円増を記録している。

オペレーション指標

 「dポイントクラブ」の会員数は順調に増加しており、2021年度上期で合計8554万人に到達。同様に、「dポイントカード」の登録も増加している。

 携帯電話サービスでは5Gの契約数がすでに700万を突破しており、「年間目標1000万に向けて好調に推移している」と井伊氏。

 8月に提供を開始した「home 5G」も9月末で8万契約を突破し、「ドコモ光」とあわせて好調な様子を見せる。

 スマートライフ領域では、金融決済の取扱高が対前年比で大幅に増加し、全体で4兆円以上を記録。井伊氏は「加盟店の開拓やプロモーションなどの積極的な取り組みによるもの」と分析した。

 「d払い」の取扱高は前年比で65%拡大し、「dカード」の契約数は1500万契約を突破した。

今後に向けて

 ドコモは今後、「カスタマーファーストの視点」を徹底することで、通信サービスの顧客基盤の拡大を目指す。

 また、スマートライフ領域を「新たな成長の柱の1つ」と位置づけ、メディカル事業の成長を図る。第3四半期からは、オンライン診療サービス「CLINICS」の本格的な開始も予定されている。

 法人ビジネスでは、5Gソリューションの拡充に加え、中小企業向けの提案サポートも強化。DXによる経営変革を支援する。

 また、成長領域の拡大に向けたR&Dでは、基盤技術のフィールド検証やそれに対するフィードバックを繰り返しながら、最先端の技術を磨き上げていく。

 井伊社長は「NTTコミュニケーションズとNTTコムウェアをドコモグループに迎え入れ、新しいドコモグループとして新たな世界の創出に挑戦していく。我々の挑戦に期待していただきたい」とコメントし、会見を締めくくった。

質疑応答

――(携帯電話サービスの)解約率があまり改善されていないように見えるが、どう考えているのか。

井伊氏
 我々としても本当はもっと下がると思っていたが、実態はご覧の通り。「競争は激化している」ということに尽きると思う。我々のサービスが解約されるが、我々も他社から奪い返すということが盛んに起きているという証左だと考えている。

――モバイル通信サービスの収入減の243億円は、ahamoへの移行が進んだためととらえて問題ないか。契約者数も含めて教えてほしい。

井伊氏
 どちらかというと、MVNOに対する音声料金の値下げがほとんど支配的。ahamoへの移行の影響もあるが、加入者数の増加もあるため、予想よりは少なかった。

 加入者数については、前回の決算時に180万程度と申し上げたが、すでに200万を超えている状況。

――「エコノミーMVNO」について、「ドコモから声かけされていない」というMVNOもある。今後の拡大に向けた取り組みを教えてほしい。

井伊氏
 我々としては、我々の回線を提供しているほぼすべてのMVNOに声をかけているが、その中でも「すぐに取り組みたい」というMVNOと「検討中」というMVNOに分かれている。フリービットを含めた2社の参画が呼び水となることを期待したい。

――KDDI(au)では、楽天モバイルによる0円の料金プランの影響を受け、「povo 2.0」で0円のプランを導入したという話もあった。こうしたプランに関する考えは。

井伊氏
 0円からのプランは、通話やデータ消費が少ないユーザーにとっては大変魅力的なサービスだろうと思う。また、結果としてそのようなユーザーが楽天モバイルへ転出しているという認識もある。

 ただし、我々としては0円プランをやるつもりはない。今回のMVNOとの座組がそういった低用量・低料金を嗜好するユーザーにフィットするという考えを持っており、“0円競争”に参画する計画はない。

――ソフトバンクは先日の決算説明会で、「低廉な料金プランの拡充が、将来的に設備投資に影響する可能性がある」としていた。ドコモの低価格なプランに関して、設備投資への影響はどのようなものになるのか。

井伊氏
 長期的な視点で見ると、周波数の有効活用や端末側の高度化など、技術も進歩すると考えている。したがって、低廉になることが設備投資に影響すると言い切ってしまうのはどうかと思う。

 ただ、短期的に見れば、設備に対するリターンが少なくなるのは事実。そこで大事なのは、顧客基盤を伸ばせているかどうか。

 通信料収入では限界もあるので、それ以外の付加価値サービスをユーザーへ提供することで、利用料を上げるという構造が必要だと思う。

 料金の低廉化競争というのはお互いに消耗するだけなので、いかに付加価値に結びつけていくかということを考えていきたい。

――今回の通信障害に関して、さまざまな再発防止策を打ち出していたが、社長としてこういった対策の効果をどのように見ているのか。

井伊氏
 もう一度このIoT機器の切り替え工事をしなければならないので、万全の体制で臨むということで、再発防止策を組み立てた。

 IoT機器と一般の回線を分離するというのがひとつのやり方だが、それだけではなく、実際にユーザーの方へ迷惑をかけないようにするため、技術的な検討を深めるよう指示している。

 今回は切り戻しに関して「切り戻せなかった」というのが本当に痛恨の極みだった。切り戻して元に戻らない事態が想像できていなかったということが、今回の工事にあたって最大の問題点。二度と起こさないような対策を実施していく。

 また、技術に関してもいろいろなハードルが目の前にあるが、分析を重ねて影響を最小化するというところに本当の技術力が求められていると思う。関係者一同反省して、一丸となって取り組みたい。

――通信しづらい状態が最大で29時間あまり続いたが、これに対する評価は。また、役員が報酬を自主返上するという話だったが、社長だけ返上の割合が多いのはどういった理由なのか。

井伊氏
 通信がつながったりつながらなかったりする状況が長引いたことに対し、非常に重く受け止めている。

 29時間続いた中でも、最も長引いたのが3Gのユーザーの復旧。私も「なぜ3Gが最後まで回復しないのか」といろいろ問い合わせていたが、端末によっては自動的に4Gへの復帰が行われないような事態があり、我々としても「どうすれば4Gに戻るか」というのをしっかりお伝えできていなかった。

 ユーザーにご迷惑をおかけした責任を示すということで報酬の返上をすることにしたが、私は社長であり、今回の事態を一番重く受け止めるべきということで(返上の)割合を増やした。

――端末販売の増加によって収支がマイナスになっているが、その理由について教えてほしい。「エコノミーMVNO」では「端末が売れる」という効果があると言っていたが、収支がマイナスになるのであれば逆効果ではないのか。

小林氏
 端末を販売するときに、我々から“奨励金”として販売手数料を出している。昔と比べて減ったが、1台販売するごとに1~2万円弱のコストがかかっており、その影響があった。

 純増が増えた場合の増収効果も見込んでやっているが、コロナ禍によるマイナス影響などが出たかたち。今後はそうした影響も少なくなっていくと思う。

 「エコノミーMVNO」でも、端末が売れてくるとそうした影響が出てくると思うが、たとえばこれまでは他社に流出してしまっていたユーザーを取り戻すというようなことを見込んでいて、そういった中で収支的にはプラスになると思ってやっている。

――奨励金を出してもその後の通信料で取り戻すというかたちだと思うが、MVNOの場合は原価レベルで回線卸をしていると思うので、そのあたりの“取り戻し”は難しいと思うが。

小林氏
 今の厳しい環境の中でユーザーが流出したまま戻ってこないと、収入はゼロになってしまう。

 そういったところまで含めて考えると、我々のサービスに残ってdポイントなどのさまざまなサービスを使っていただくことで、グループ全体で回収することを想定して取り組んでいる。

――NTTコミュニケーションズやNTTコムウェアの子会社化に関して、効果を早急に出すために、どういった課題をクリアしていくことが必要なのか。

井伊氏
 今回の統合再編には、法人事業の強化と、ネットワーク事業の統合によるコストダウンという2つの大きな目標がある。

 こうしたことを実現するためには、両方の社員が一緒になって、それぞれの持ち味を出していく必要がある。思い描くことは簡単だが、実際に働く人間が交わってそれができるかというと、話は別。社員のモチベーションを下げない努力も含めて、今後取り組んでいきたい。