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ソフトバンクとNVIDIA、完全仮想化5Gの商用化に向けた研究施設「AI-on-5G Lab.」を開設へ
2021年11月10日 13:49
ソフトバンクは、5Gの仮想化無線ネットワーク「vRAN(virtualized Radio Access Network)」と「MEC(Multi-access Edge Computing)」が融合した環境でさまざまなソリューションの実証実験などができる研究施設「AI-on-5G Lab.(エーアイ・オン・ファイブジー・ラボ)」を2022年に社内に開設することでNVIDIAと合意した。
MECとRANの共存
ソフトバンクでは、2019年からNVIDIAのGPUを活用したvRANや、MECによるエッジコンピューティング処理を活かした実証実験に取り組んでおり、これらの検証の結果「通信機器の仮想化によるコストダウン」だけでなく「通信以外のさまざまなアプリケーションを同時に構成できる」こともメリットになることがわかったという。
同社先端技術開発本部 ネットワーク研究室 室長代行の堀場 勝広氏は、エンタープライス向けの5Gネットワークのあり方として、ネットワークの提供だけでは差別化が困難で、MECのアプリケーションやサービスとセットで付加価値を提供することが重要と指摘する。
たとえば、5G通信の特徴である低遅延性や、オフロードサービス、セキュリティを担保しながらのデータ処理などを活かしたアプリケーション/サービスが提供できる。
一方で、MECサーバーにはAI学習や画像レンタリングのサービスが期待されているが、これを支えるにはGPUの搭載が必要となる。今回のGPUを活かしたvRAN「GPU vRAN」であれば、MECサーバーの流用もできるという。
なお、MECとRANを共存させる方法として、vRANのアクセラレーターにはeASIC、FPGA、GPUの選択肢が存在する。堀場氏は、MECをターゲットにした場合、GPUが最適であると説明する。
共通化する理由
また、vRANとMECのハードウェアを共通化させるメリットとして、通信の処理負荷が時間帯でまちまちである点を堀場氏はあげる。
郊外の基地局では、日中は通信を頻繁に行うのに対し、夜間ではほとんど通信を行わない基地局が存在する。共通化できれば、夜間の余ったリソースをMECサーバーの処理に割り当てることで、コスト削減効果が期待できるとしている。
今回設立された「AI-on-5G Lab.」では、世界で商用利用されているO-RAN準拠のハードウェアを利用した実証実験を行う。また、ラボ内でのアプリ開発に際しては、SDKを提供し、基盤となるハードウェアとともにパートナーと実証実験を進めていくという。
GPU vRANや共通化で通信が遅くならない?
一方で、通信とデータ処理を共通化する方式だと、一方の処理負荷が増大してしまうと、もう一方の処理に影響を与えるのではないかという心配がある。
堀場氏によると、ソフトバンクが今回提供するGPUでは、「コアを分割し、リソースを割り当てる」仮想化の方式を採用しているという。処理に合わせて適切にコアの割り当てができていれば、ほかの処理に影響を与えることは少ないと説明する。
また、仮想化された基地局ではまだまだ力不足ではないかという指摘には、「性能は徐々に上がっていく」ことを期待しつつもこれまでのハードウェア構成の基地局と並行して採用していくと説明。当面はプライベート5Gで研究/検証していくという。
【お詫びと訂正】
堀場 勝広氏の役職名に誤りがありました。また、一部誤記「OLAN→O-RAN」を修正しました。