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テレビでYouTubeを見るユーザーは2000万人以上、多様な世代に広がり見せるYouTubeの今
2021年10月6日 13:21
拡大するYouTube
グーグル Head of Display and Videoの須田尚宏氏によると、日本における直近の利用者動向としては、18歳以上の6900万人がYouTubeを視聴しているという。
一方で「若者のサービス」と捉えられがちなYouTube。しかし、45歳~64歳の間でも2500万人が利用しており、同世代人口の75%と、中高年世代でもかなり高い割合でYouTubeが利用されていることわかる。
60歳~89歳のシニア世代においてYouTubeを利用する動機を聞いたところ「動画や音楽の視聴」「娯楽」に加えて「知りたい情報を探す」といった回答が得られた。視聴する動画のジャンルとしては、音楽系や料理、ニュース、動物、スポーツだという。
動画サービス利用者にとってYouTubeは、お気に入りのコンテンツや番組があるなど4つのポイントで1位を獲得したとしている。
テレビ視聴が増加
YouTube利用においてここ数年の最も大きな変化はテレビでの視聴が増えたと須田氏は語る。
その数は2000万人以上。さらに、テレビでYouTubeを視聴するユーザーのうち20%がほとんどテレビでのみYouTubeを視聴するという。加えてスマートフォンやパソコンでの視聴と比較して平均視聴時間が長くなる傾向にある。
加えて、2021年3月時点でテレビ画面上でのコンテンツ視聴時間は、前年同期比で大きく伸びを見せたものが多い。須田氏は音楽やフィットネスといった視聴時間が増加したコンテンツについて「テレビとの親和性が高かったのでは」と分析する。
加えて、スマートフォンやパソコンとTVでのYouTubeユーザーで大きく異なる点として、その半数以上が家族や友人などと一緒に視聴している点だ。
さらにTVからのユーザーの1/3以上が、「YouTubeはテレビ」として認識していることもまた特徴として挙げられる。こうしたユーザーにとって、テレビ画面を通じてみているものはネットの配信なのか地上波の番組なのかの線引が曖昧になっていると言える。
ユーチューバーの状況は
一方のYouTubeにおけるクリエイター、いわゆる「ユーチューバー」はどういったトレンドにあるのか。
須田氏によると、日本において10万人以上の登録者がいるチャンネル数は5500以上で前年比45%増。さらに100万人以上の登録者がいるチャンネル数は350以上だという。
さらに100万円以上の収益があるチャンネル数は前年同期比で50%伸びた。テレビで見るという新しい視聴スタイルの定着やさまざまなジャンルからYouTubeへの参入がありプラットフォーム全体としての伸びも大きいと須田氏。
チームスポーツのコンテンツは70%以上、将棋は2倍、大学入学共通テストは8倍以上にも視聴時間が増加した。さらにこの1年間で「ライブ配信を見たことがある」と答えたユーザーは6割以上とライブ配信の文化が日本でも根付いてきたことが伺える結果となった。
テレビに合わせた広告、企業との取り組みも
テレビでYouTubeを視聴するという新たなスタイルの対応として、広告でも新しい取組みが行われている。テレビ画面では、スマートフォンやパソコンのように気になった広告をクリックして遷移するといった動作が難しい。
そこで、「コネクテッドテレビブランド表示オプション」では、テレビで見ていた広告のURLをワンクリックで自分のスマートフォンへ送信できるようになる。
従来、テレビ広告に直接アクションすることは難しかったが、これによりユーザーがより素早く情報にアクセスできるようになる。この機能は今年中に順次公開していくという。
ネット広告に本腰を入れる企業も多く出ている。味の素では、テレビ広告ではコアターゲットへの接触の難しさやパーソナライズドの難しさを課題として、ターゲットを細分化しそれに合わせた施策を打ち出すことで、結果につながったという。
また、NTTドコモでは、YouTubeの広告を活用した施策の結果をほかのメディアも横断で評価したいというニーズがあった。ドコモとグーグルの持つデータをグーグル提供のサービス「Ads Data Hub」で分析することで、広告に接触したユーザー塗装でないユーザーの効果などを獲得するにいたったという。
このほか、ニールセンやフェイスブックなどとデータから広告の費用対効果などを計測、最適化するMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の正しい方法の啓蒙活動も実施。加えて個別の企業のMMMも行っており、サントリーの場合はテレビよりもYouTubeのほうが広告効果が高いことが実証されているという。
また、71社の消費財形企業のMMMを分析した結果、YouTube広告はテレビ広告よりも平均3.3倍広告効果が高いという結果になったとしている。
一方でグーグルは課金することで広告を非表示にできる「YouTube Premium」を展開中。これが浸透すると広告ビジネスに影響は及ぼさないのだろうか。
須田氏はこれについて「ユーザーには選択肢があるのが大事。YouTube Premiumには広告非表示に加えてオフライン再生、ダウンロードの3つの特長がある。YouTube PremiumもYouTube自体も拡大している。広告の視聴者が今すぐにでも大きく減るということはないと考えており、広告込みで視聴する人も増えている」と語った。
YouTube Works Awardsの第2回が開催予定
2021年5月、日本でもYouTube Works Awardsが初めて開催された。7つの部門賞とその中でも最も効果があった広告がグランプリとして選出される。部門については開催国によって異なるという。
このアワードが開始されたきっかけをグーグル YouTube Ads Marketing 統括の中村全信氏は「広告である以上、成果を出す必要がある。YouTube自体が広告プラットフォームとしてなくてはならない存在になりつつあるという声もあり、効果を出すという責任がある」と語る。
測定ツールやテレビ広告とどう組み合わせると効果的かといったシミュレーションなどを提供してきた。さらに、実際にどのような広告なら効果が出るのか、という広告主からの声があり、広告賞を通じて「このケースにはこの広告フォーマットが効果を出せる」という事例の共有の意味があるという。
中村氏は、広告賞は一般に、クリエイティビティで表彰されるものが多いとしつつ、同アワードで表彰される広告は、実際に企業が設定した成果をあげられているものと語る。
第1回の審査員としてはユーチューバーのHIKAKINなどが参加。グーグルは審査に関与しない。
日本での第1回開催における応募総数は300作品以上。ファイナリストには40作品が残り、7作品が部門賞、グランプリ1作品が選出された。
また、10月6日からは第2回が「YouTube Workds Awards 2022」という形で開催される。賞のカテゴリーが一部変更となり「Best Innovation」「Best Sales Lift」「Best Target Reach」という形で総数は変わらず7カテゴリーで受賞される。
第2回の審査員には、ユーチューバーのシルクロードなどをはじめ12人が最終審査員として参加。スケジュールとしては、6日から2022年1月まで作品を募集。複数回の審査を経て、初夏頃に受賞作品が発表される。