ニュース

YouTube、「誤情報への対処」に関する見解を明らかに

 YouTubeの最高製品責任者(Chief Product Officer)を務めるニール・モーハン(Neal Mohan)氏は9月1日、誤情報への対処に関するYouTubeの見解を、公式ブログで明らかにした。

YouTubeは「現実を形成する手助け」もできる

 YouTubeは誤情報の例として「ホロコースト否認」や「米国同時多発テロの陰謀説」を挙げ、こうした誤情報が社会に広がって人々を混乱させている、とする。

 こうした誤情報の流布が起きるのは、YouTubeも例外ではない。そこでYouTubeでは、「最も重要な取り組み」のひとつとして「誤情報への対処」を掲げる。

 その理由として、「YouTubeは現実社会の状況が反映される場であると同時に、現実を形成する手助けもできる」という考えが紹介されている。

動画の削除に関するYouTubeの取り組み

 誤情報対策の一環として、YouTubeは開設当初から「コミュニティガイドライン」を設定し、動画の削除に注力してきた。現在では四半期ごとに1000万本近くの動画が削除されており、その多くは再生回数が10回未満のうちに処理されている。

 こうした迅速な削除の重要性を認めつつ、「YouTubeに残っている動画の扱い」こそが大切であると、YouTubeは強調する。

 現在、ニュースや情報をYouTubeで検索すると、アクセス数が多いコンテンツではなく、コンテンツの質に基づいて最適化された検索結果が表示される。これは、ユーザーが「信頼できるコンテンツ」にアクセスできるようにするためのアプローチだという。

「有害なコンテンツ」はごく一部にすぎない

 YouTubeに存在する数十億の動画のうち、「有害なコンテンツ」はごく一部にすぎない。ポリシーに違反するコンテンツは、総視聴回数のわずか0.16%~0.18%にとどまるようだ。

 YouTubeのポリシーは、「現実世界に深刻な危害を及ぼす可能性のある動画」の削除に重点を置くというもの。たとえば新型コロナウイルス感染症の流行が起きた2020年2月以降は、誤った治療法やデマなどを含む関連動画を、100万本以上削除したとのこと。

何が「有害なコンテンツ」なのか?

「明確な事実の理解」が必要なケース

 YouTubeでは、「明らかに有害なコンテンツを特定するには、明確な事実の理解が必要」としている。

 前述の新型コロナウイルス感染症に関しては、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)やWHO(世界保健機関)をはじめとした保険機関の専門家の見解に基づき、継続的な理解に努めている。

「何が誤情報なのか」が明確ではないケース

 一方、そのほかの多くのケースでは、何が誤情報かはそれほど明確ではないという。こうしたケースに関してYouTubeは、「どこからが誤情報か」という境界線を設定することは必須ではないとする。

 その例として、ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏によって争われた、2020年の米国大統領選挙が挙げられる。

 YouTubeでは、公式の投票数の承認前はさまざまな意見を削除せずに残し、信頼できるコンテンツをユーザーに提供した。選挙報道の1週目に最も多く視聴されたチャンネルや動画は、CBSやUSA Todayなど、信頼性の高い報道機関によるものだったという。

 その後、12月初旬に各州の選挙結果が承認された段階で、YouTubeは選挙関連の不正疑惑を報じる動画の削除に着手した。

 それ以来、選挙関連ポリシーへの違反によって削除された動画の数は数千本にのぼる。そのうち77%は、視聴回数が100回に達する前に削除された。

YouTubeが質の高いオープンプラットフォームであり続けるために

 YouTubeは、「過度な削除へのアプローチは、言論の自由を萎縮させる」との見解を明らかにしている。「言論の自由」と「意見が届く範囲を指定できる自由」のバランスを考慮しながら、質の高い情報をユーザーへ届けるオープンプラットフォームとして、投資などを続けていくという。

 ときに「YouTubeは経済的な利益のために際どいコンテンツを残している」と批判されることもあるが、YouTubeはその意見に異を唱える。実際、そういったコンテンツの視聴回数はそれほど多くなく、音楽やコメディをはじめとした人気コンテンツの視聴回数には遠く及ばないとのことだ。

 YouTubeの担当チームは常にシステム改善に取り組んでおり、こうした取り組みに関しては今後さらに詳しく紹介するとして、ブログの記事が締めくくられている。