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「今後もスマホ市場を牽引する」――ファーウェイの決算説明会

 ファーウェイは3月31日、中国、深センにおいて決算説明会を開催した。イベントの中で、ファーウェイ輪番会長のKen・Hu氏が報道陣からの質疑に応じた。本稿ではその一部を抜粋する。

 Hu氏は、米国による、安全保障政策はスマートフォン事業に重大な影響をもたらしたとしつつ、コンシューマー事業全体では「8+N」事業で悪影響を相殺し、65%以上の成長を達成したという。携帯電話の販売台数は世界的には減少したが、中国市場では上昇したとも語る。

質疑応答

――2020年の後半は、中国市場でもファーウェイのスマートフォン出荷台数は急激に減少しています。チップの供給が絞られる中、特にスマートフォン事業において、コンシューマー事業の先行きをどう見ていますか? 部品供給およびファーウェイのスマートフォン事業を取り巻くグローバルな要因に対応する事ができるのでしょうか?

Hu氏
 ファーウェイのコンシューマー事業は、特にスマートフォン事業において常に注目されてきました。過去数年に渡り、ファーウェイは世界でトップクラスのスマートフォンブランドとなり、今日では何億人にも上る人々が弊社の携帯電話を使用しています。供給制限により、弊社のスマートフォン事業は確かにこの一年で大きな影響を受けました。

 今後については、供給制限の成り行き見通しが立たないため、スマートフォン事業の成績について確かなことは言えません。ただし、弊社は例年の新製品発売を続け、新たなフラッグシップ製品を予定通り導入します。つい最近になって、2世代目となるフォルダブル・スマートフォン、Mate X2を発表しました。発売以来、最も引く手あまたとなった製品の一つとなっています。これはつまり、弊社のスマートフォンが市場を牽引していることを意味し、今後もこの立場を維持できることを確信しています。

 ファーウェイのコンシューマー事業にとって、スマートフォンはその一部に過ぎません。ご質問にもう少し詳しく答えるのに、ファーウェイのコンシューマー事業計画についてお話します。簡単に言うと、ファーウェイは5つの主要かつ汎用的なアプリケーションシナリオにおいて消費者にシームレスなAIライフの実体験を届けるという、ユーザーセントリックな戦略を採用しています。

 この戦略を実現するため、HarmonyOS、HMS、AIなどのいくつかの主要なテクノロジーでの深きに渡るイノベーションに取り組まなければなりません。これこそ弊社が過去数年で取り組んできていることであり、また今後も取り組み続けることになります。これらこそが、弊社のコア・コンピテンシーとなります。

 これに加え、サービス・エコシステムをハードウェア・エコシステムに積極的に統合していきます。消費者にとって実現される実体験としては、ユニークなユーザーIDでさまざまな端末へのアクセスが可能になります。さまざまな端末間での幅広いサービスを、シームレスかつインテリジェントに体験できるようになります。

 コンシューマー事業は、消費者とその実体験に基づくものとなるべきであり、ハードウェアは単にこれを実現するための手段でしかありません。スマートフォンも例外ではなく、この戦略を既に何年も採用してきています。昨年、スマートフォンの販売台数に減少が見られると同時に、その他のハードウェアとサービスに急成長が見られています。これこそ、弊社の戦略に対する自信を深める理由であり、またそれは未来のコンシューマー市場の在り方に沿ったものなのです。

 まとめると、スマートフォンは弊社にとって未来志向のコンシューマー戦略の一部ではあるものの、その戦略にとっての全てではないということです。今現在、チャネル・パートナー、サービス・パートナー、その他エコシステム・パートナーなどの弊社パートナーより、この戦略について既に多大な支持を得ています。このコンシューマー戦略をさらに実践していくに当たり、ファーウェイが提供するコンシューマー・セントリックなハードウェア、ソフトウェア、サービスが増えていくものと確信しています。

――ハイシリコンにより、ファーウェイはチップ設計では歴史的に非常に優位にあります。ハイシリコンを通して、今でもテクノロジー開発に取り組んでいるのかどうか、またチップ製造参入もしくはチップ製造研究の意思はあるのか、お聞かせください。

Hu氏
 ハイシリコン部門は非常に安定しており、弊社はイノベーションにおける多くの目標があることから、チームが仕事に専念しています。

 チップに関しては、ファーウェイの位置づけはICTシステムおよび設備プロバイダーである、という点を再強調したいと思います。弊社は今でも、グローバルなチップのサプライチェーンに強く依存しています。ハイシリコンはこれまで、強力なチップ設計能力を身につけてきており、また世界の半導体産業とも提携しています。弊社としては、半導体産業がさらに発展するには、今後もグローバルでの提携がメインストリームとなり、またそうであるべきだと確信しています。

 このことから、オープンであり、かつ協力的なイノベーションへのアプローチを取り続けていきます。各国政府、とくに世界の政治的指導者が半導体サプライチェーンを元通りにし、世界規模での協力体制を更に強化していくことを支援することを期待しています。

――去年、ファーウェイは米国の制裁になんとか対応できましたが、この制裁はすぐには止まず、政権交代後のワシントンの政策は米国と中国の断絶をより深めるものになりそうである点について伺います。長期的に、どのような影響がありますか? そして特に、ファーウェイではチップの在庫を確保していると報道されていますが、中国国内で5Gとスマートフォンの高性能チップを製造できるようになるまでどれくらいかかると思われますか?

Hu氏
 ファーウェイの過去2年に渡る経験を見れば、こうした摩擦は弊社のような多国籍企業にとってグローバルサプライチェーンへの深刻な損害をもたらすのが分かります。

 この混乱から利益を得るのは誰なのか、想像もつきません。産業の観点から言えるのは、サプライチェーンの上流、下流にいるすべての関係者が損害を被っています。このグローバルサプライチェーンの断絶の直接的な結果として、昨年ファーウェイの事業収益の一部に減少が見られました。

 弊社の上流に位置するサプライヤーが、この摩擦で損害を被っています。周知の通り、ファーウェイは何年にも渡り米国のサプライヤーから毎年100~200億米ドル分の購入を行ってきています。この断絶は、こうした米国のサプライヤーにとって大きな損害となっています。

 ファーウェイによる調達が禁止された際、これらの企業は代わりとなる顧客をすぐに見つけられませんでした。もちろん、損失の一部をカバーできる購入者を見つけることはできてはいます。しかし、ファーウェイの事業は消滅してはいません。その調達の大部分は、米国以外の地域のサプライヤーに向けられました。

 加えて、米国の制裁の多くは影響力の大きい国家的戦略であり、サプライヤーは米国製の部品の影響を今後の供給能力に対し極小化する必要があります。このように、業界全体に良くない影響があります。

 明らかに、ファーウェイは影響をまともに受けた企業の一社であり、一連の成り行きをとても不公平なものであると見ています。しかし、実際は主に米国のサプライヤーである弊社の上流にいるサプライヤーも痛みを感じています。さらに、供給網の最後にいる消費者にも、痛みを伴っています。政治的決断により産業のサプライチェーンにおける非常に多くの関係者に損害をもたらしているのなら、なぜ状況を改善しようとしないのでしょうか?

 チップ供給での不当な制裁に対し、過去2年間弊社は部品在庫確保に多額の投資をしました。特に法人に関し、お客様の需要に長期間応えるのに十分な在庫量となっています。チップ供給自体が改善するかどうかについては、グローバルな半導体サプライチェーンでのコラボレーションがどのように復元されるかに依ると思います。

 デジタル化は進展を続け、世界はよりチップに依存していくことになるでしょう。多くの分野でこのことが言えます。例えば、自動車向けのチップ供給はここ数カ月で品薄になりました。自動車業界全体に膨大な影響を及ぼしています。グローバル化された半導体サプライチェーンは、ある程度世界全体の社会の進展の礎となっているということを言いたいのです。この根本的な問題に対応するため、世界規模でのコラボレーションを検討し直す必要があります。