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ドコモが銀座で展示会、「デザインの兆しのはなし展」

 NTTドコモは、東京都中央区銀座の「GINZA SIX」において展示会「デザインの兆しのはなし展」を3月27日~28日の2日間で開催した。

 同展示会は、ドコモが例年開催している同社のデザインに関するコンセプトなどを展示するもの。今回は、未来のデザインの「兆し」を建築デザイナーや企業、アーティストなど5組の展示が楽しめるもの。

 加えて、同展示に訪れた閲覧客限定で、上述の5組のデザイナーや企業らとNTTドコモ プロダクト部 デザインディレクターの宮沢哲氏との、今後のデザインにまつわる対談を収めた書籍を限定で配布した。書籍の内容は、同社のWebサイトからも閲覧できる。

 会場の展示は、いずれも書籍に収められた対談の内容に関連したもので「少し先の未来」をかたち造るヒントになるかもしれないというものだ。

全部で5つの展示

 展示会場に展示されているのは、いずれも先の未来を見据えたデザインを追求しているデザイナーや企業などのもの。今回の展示会を企画したドコモ 宮沢氏は、対談のテーマを「衣食住働遊」だと語る。たとえば、建築家・藤本壮介氏による「House NA」では「気配」のデザインを表しており、完全ではなくあいまいなつながりが表現されたひとつのかたちだ。

 書籍中には新しいワークスタイルのあり方について、コクヨの「WORKSIGHT」の紙面が展示されている。コロナ禍において、新しい働き方が定着しつつある中、「雑談」の重要性も見直すべきなのではと、同誌編集長と対談した宮沢氏は痛感したという。「オンライン化する社会の中でも雑談のしやすさが求められてくるのでは」と宮沢氏。

 展示にはGROOVE X製のLOVOTの姿も。高機能なロボットだが、便利な機能や高度な会話などではなく、ノンバーバルなコミュニケーションにフォーカスしているのが特徴だ。その結果、ICTリテラシーが高くないシニア層などにも「抱っこできて、温かい」など感覚的なわかりやすさが受け入れられた製品だ。

 このほか、アウトドア用品のスノーピークと食にまつわる作品を数多く手掛けるアーティスト・諏訪綾子氏の展示も。「焚き火」の魅力に惹かれる人は多く、原始的なコミュニケーションのひとつ、どれだけ生活が豊かになっても変わらないものもあるのではないかというひとつの可能性を示す。

コミュニケーションのかたちは変わり続ける

 「これからはもっとスマートフォン以外もの、プラスアルファの要素が入ってくるだろう」という宮沢氏。見る・聴く以外の感覚をもっと丁寧にあつかっていく必要があると説明する。

兆し=まだ見えない、先のことということでベールがかったデザインに

 「もっと丁寧に感性で受け取れる部分を考える必要がある。人と人の間にはいるテクノロジーをコントロールしながらよりよい暮らしにつなげられるようにしたい」とも。「ただ会っているかのように」するだけではなく、「気配」を感じさせる程度に情報量を抑えたり、においを伝えたり、原始的な(焚き火のような)ゆらめきを取り入れたり、アナログな受け止め方の工夫もあるのではないかという。

 進化したテクノロジーをどう伝えたいことに最適化し、ユーザーの想像力を掻き立てつつ、足りること・足りないことをよく思ったりと、レベルを設けていくことが必要なのではないかと対談を経ての感想を語る宮沢氏。

NTTドコモ 宮沢氏(2019年10月18日の弊誌記事より

 今回の対談や展示は、新たなプロダクトやサービスに必ずしも直結するのではなく、それらを探すヒントだ。「『これ』が大事というのは分かった。それをどう活かしていくのかはここから考えなくてはいけない。それは、スマートフォンもしくは周辺機器にも活かされていくのかもしれないし、ひょっとしたら家の中で使う何かに活かされていくのかも」(宮沢氏)。

 スマートフォン以前のFOMA時代から携帯電話のデザインに携わってきた宮沢氏。「いつの時代も大切なのは(通話の)音声の奥にある想像力。足りないことがあると人は『想像する』」。足りないことは本当にいけないことなのだろうかと疑問を投げかける。人の想像力を活かした伝え方があってもいいのではと見解を述べる。

 同氏は、ポットや電球の操作による見守りサービスよりももっと「気配」でゆるやかにつながるサービスがあれば、と語る。「話をするわけではなく、動いている気配を感じられれば(遠く離れて住んでいても)安心感を得られる。仕事でも他人の気配が感じられれば捗ることもある」と語り「効率化が進められていく中で雑談など『雑』が大切と気づいた」という。

 これからのモバイルサービスを取り巻くデザインはどのように変わっていくのだろうか。必ずしもスマートフォンという形だけではなく、家の中やクルマの中といったより人の生活に寄り添うようなものを開発しなくてはいけないし、理想だという。

 何か機械を操作するわけでもなく、常にゆるやかなつながりがあり、ゆるやかに情報が手に入ったりコミュニケーションができたりと、子供からシニアまで誰もが使えるストレスを感じない情報の出し方やつながり方を生み出すという目標を掲げる。

 携帯電話会社は、コミュニケーションの形をデザインするものと宮沢氏は語る。たとえばコロナ禍により、家の中の空間が重要視される昨今。家の中で使う分にはスマートフォンは少々小さく感じられることも。「家の中で使うことに真剣に向き合うと今とは違う形になっていくのでは」と語る。

 「コミュニケーションは、まだまだ完成していない。どんどんと形が変わっていくもの。スマートフォンはいまの時代のひとつのかたちだが、これからも変わり続けていくだろう」と今後の兆しを示した。